カテゴリー [詩]
自由律

今日も黒便とは 木枯らしのやけに寒し
子等死に 中東の神々は案山子なり
握り飯懐かしく いつまでも古さとのようだ
冬日が浅く藁照らし湯気が立つ 好き日
烏賊げそ噛み 硬く憐れに吸盤暴れる
商店街を行き交う人の 黒い帽子が深い
献体を決め 行く末の春を待つ
こけまいと転び 忘れまいと老い人居り
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登録日:2009年 01月 15日 13:18:50
さかなになったぼく
汗をかかないのは
寒いといって暖まろうと
泳ぎまくる魚だ
冬になって水温が落ち
体力を保つために
じっとそこに沈んで動かない魚
泳ぎまくって体を暖めようとしても
体温は上がらず消耗するばかり
陸に棲む人間は
オイチニオイチニと
冬の公園で体操すれば
白い息とともに
タオルを使うくらい汗をかいて
体が暖まって元気になって
「行くぞー」と駆けだしてしまう
いくら動いても
魚は暖まらない
今のぼくは魚になっている
体ではなく
気持が汗をかかなくなった
気持が大車輪しても
気持が全力で百メートル走っても
あったかくならないし
汗もかかないし
疲れてしょぼんとなって
気持だけ水の中に置いて
澱みを泳いでいる魚になった
汗腺はあっても
汗をかかない魚になった
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登録日:2007年 12月 01日 16:55:50
猫の場合
塀越しに猫が通って
カーテンがひらりと風になびいて
午後二時は退屈の時間になり
寝転がって
‘日本の放浪藝’を読んでいると
陽射しが足にあたって
足だけが暖かくなって
げっぷをしたら
コーヒーの匂いが戻ってきて
肘を突いて扉まで腹這いで行き
そっと開けて覗くと
また猫が通った
二階の物干場は古くて
高いところだけど
板が毛羽だって古いので
木の温もりがあって
好きな場所なので
屋根だらけの景色も気にならず
‘北の宿’を口ずさむと
猫が下の屋根を歩いていた
相変わらず痛い脇腹で
永いので慣れてしまって
良いわけはないが
懐かしい友と居るようで
治まると会いたくなり
そんなものが多くなり
肩胛骨の下の痛みも増えて
少し気にしていると
猫がすり寄ってきた
おまえは誰だと訊いてみたが
目を細め尻尾を立てて
やけに細い声で
‘にゃー’しか言わず
かすれて
‘にゃににゃ・・・’
そうか
おまえは猫か
三毛の衣裳を着て
本能の甘えで生きてきて
今さら名前なんて訊くな、か
おれとおんなじだと
失礼ながら思ってしまったよ
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登録日:2007年 11月 08日 17:15:54
言ひたがり

どこで吹くのか 鳥の笛
落ち葉の褥で ひとり泣き
ぼくだ あたしよ 言ひたがり
里に秋風 吹くやうに
柿の實落として 空靜か
ひとり襟立て 寂しくて
お早う こんちは 言ひたがり
人に心が あるやうに
草も野山も さらさらと
風に流れて 今こゝで
暑いね寒いね 言ひたがり
生きて息吹を生むやうに
死んで呻いて 土の中
森羅萬象 見る月は
滿ちたね缺けたね 言ひたがり
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登録日:2007年 11月 03日 17:58:32
ピーヒャラポッポ村
村の外れの
小さな駅は
秋祭りで久しぶりに
たくさんの人でにぎわった
小さな駅は
いつも寝ていて
ヒマだヒマだと
背のびをしていたとき
久しぶりに
汽車ポッポが来た
小さな駅は
あわてて「あ、ピヒャポッポだ」
と、言ってしまった
あくびしながら言ってしまった
村のお祭りは
爺様(じさま)の笛
作太のたいこに婆様(ばさま)の唄が
ピーヒャラピーヒャラ
どんどこどどん
しゃがれた声が
♪豊年万作 鎮守さん
次郎ベェ カラスを追っ払った
ピーヒャラどんどん
汽車ポッポ
小さな駅は目ン玉ひんむいて
ピヒャポッポと踊り出した
汽車も線路の上で
ポッポーポッポー
遠くで案山子が
夕焼けに突っ立って
忘れられて突っ立って
ついひとりで
‘ピーヒャラポッポ ピヒャポッポ’
と、踊り出した
一本足で
田んぼじゅう穴だらけにして
‘へのへのもへ’の顔が
バラバラになってクシャクシャになって
笑いながら泣いて
怒りながら笑って
忙しい顔になってしまった
小さな駅は
あしたもピヒャポッポが来たら
いいなあと、寝てしまった
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登録日:2007年 10月 05日 17:13:54
“十日夜 (とおかんや)"

誰かわからない「へ」の口は
これでも久延毘古(くえびこ)という
尊い神様と言った
一本足の立ちんぼうで
気休めに居ると思ったら大間違い
「への」目は遠い
大国主神の国作りを見ていた
だけど
あんまり役には立っていない
雀が寄ってたかって
稲穂をついばんで
用心棒になっていない
だからこの頃は
「へのへのもへ」字をやめて
恐いマスク男になった
こいつは
とても悲しい物語を話す
知識があっても動けないことを
とても話したがっている
稲刈りが終わって
雑草の中でまだ立って
10月10日まで立って
それから山へ帰る
昔から人の手でいいように作られて
勝手に顔を描かれて
動かない哀しいパントマイム
それも十日夜までと言う
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登録日:2007年 09月 30日 16:05:20
おとこえし

「おみなえし」という名は秋になるとよく聞くが、何故か「女郎花」と書く。
開花時期は7月下旬から10月中頃。けっこう清楚な黄色だ。
ちょっと調べたこと。
[「おみな」は「女」の意、「えし」は古語の「へし(圧)」で、 美女を圧倒する美しさから名づけられた。 また餅米で炊くご飯(おこわ)のことを「男飯」といったのに対し、「粟(あわ)ごはん」のことを「女飯」といっていたが、花が粟つぶのように黄色くつぶつぶしていることから「女飯」→「おみなめし」→「おみなえし」となった、との説もある。漢字で‘女郎花’と書くようになったのは平安時代のなかば頃から、と言われている。]
さほどきれいな花とは思わないが、楚々たる味わいは認める。
撮ってきた写真は、それに対抗するわけではないが、男郎花 (おとこえし)らしい。
違うところは色が白く、夏も終わる頃に咲く。女郎花より茎や葉は大きいみたいだ。
しかし後が悪い。別名を「敗醤(はいしょう)」と言って、 花瓶に生けておくと、醤油の腐ったような匂いがしてくると書いてある。どんな匂いか想像もつかないが、嬉しがることではない。昔の人は自然に誠実だったのか正直だったのか。小さく可憐な花でも「ハキダメ菊」と名付けられるより良いかも知れない。
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登録日:2007年 09月 16日 16:07:42
風景

錆びた漁船の喫水線ですか
それとも
落ち葉の奥に潜んで
春を待つ動物たちの吐息ですか
冷たい空気にさらされた
コークの空き瓶ですか
愛を知った錯覚に
陥りたい女の眼差しですか
それとも
千光年も遠い星の光源ですか
飢えに苦しむ子供たちの笑わない唇ですか
あなたの風景は
吹き荒れる砂漠の中にはないはず
空気中のバクテリアのざわめきではないはず
何日佇んでも飽きないのは
木の葉の揺れです
吹きわたる山の風です
凸凸凹凹がメロディをつくります
それを聴きながら母さんの
肌荒れた手を憶い出してみると
風景がどんなに味気なくても
あなたのものになります
優しいあなたの風景になります
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登録日:2007年 09月 07日 13:19:02
庭に立ち

夏
草いきれの懐かしさで
蒸れています
まるで昔の庭のように
蒸れています
夏紅葉に遮られて
影の中
糸蜻蛉や足長蜂が
水を飲みに
緩やかな流れに浮かぶ
小さな水草に止まります
夏の庭は
石灯籠の古えを教えます
照り返さず
室町の時から吸い込んできた
陽の粒子が緑陰に佇み
常夜燈と言われて路傍で
夜道を行く人の旅路を照らし
道中の安全を守っていた
頑固な暖かさは
今もって枯れた梅木を支えています
夏の庭は
時折つくられ
屡々放ったらかしの形を
ほどよく描いて
心の和みを簾に託し
住人は
団扇を小刻みに動かしながら
うとうと
小刻みな白昼夢を見ています
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登録日:2007年 08月 19日 07:51:53
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