2012年 03月

シリア調停案は砂上の楼閣だ


 対立する双方がどのような理念なのか以前に、とにかく人命が大切だとの状況がシリアで続いている。アナン氏の調停への努力は認めざるを得ないが、調停を飲むアサドの条件が「テロ行為停止」では話しにならない。彼は自身には向かうものはテロリストだと本当に信じているのだろう。

 本ニュースやCNN報道では戦闘は収まらず、死者の数も増えているという。反体制派の主要拠点となっているホムスを訪ねたアサドは、以前よりももっと素晴らしい街として再生させると住民たちに語っていたが、あまりの破壊の酷さに、そうでもいわないと収まりもつかなかったに違いない。破壊しつくしたのは自国民が営々と築いてきたインフラである。それを徹底的に破壊し、また再生するという。彼にとってシリアの国土は、まるで自身の支配が隅々まで及ぶ箱庭のように思えているのだろう。

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登録日:2012年 03月 30日 22:37:59

共に80歳半ばでも枯れていない


 共産主義大嫌いの総本山の親分とほぼ唯一、南北米大陸で残った社会主義を標榜する国家のボスが何を話したのだろうか。さすがにカストロは宗教を信じていないだろうが、国民の過半がカソリックなのは知っている。中絶反対、避妊具の配布も認めないバチカンの親分のいう変革が何かは知りえないが、他のメディア報道では、彼は米国の経済封鎖は非難したそうだ。その言質でまあよしとするのか....。

 反体制派への締め付けは続いているようだ。キューバ革命の優れた側面を、そろそろ新しい世代へのバトンタッチ間近な時期に、今こそ再認識するために、もっと体制を開いたほうがよい。

 カストロが政権を奪取した後、彼はチェと連れ立って米国を訪ね、大歓迎された。かつてのキューバを食い物にしていたのは米国だが、若いラテンアメリカの指導者を認めようとの雰囲気もあった。その後の推移は歴史の教科書に書かれている。米国との厳しい対立から、カストロは旧ソ連に近づいた。そして、それもすでに昔話だ。バチカンの親分を招いたのだから、次はオバマと会ってみてはどうか。結構、気が合うとも思えるのだが....。

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登録日:2012年 03月 29日 18:47:00

もう米国にとってロシアは敵ではない


 少しばかり両者とも警戒心が足らなかった。共和党はロムニー始め、これはとばかりに噛み付いているが、ものは考えようだ。もう米国にとってロシアは敵ではないのだ。この国の首相がよく首脳会談を終えると、「個人的な信頼関係ができた」と表明するが、逆説的にいえば、この二人のレベルまで腹を割って話をしているとはとて思えない。

 選挙が終わったら=再選されたら、もっと柔軟になれるとは、それにしてもオバマは正直な人だ。以前も書いたが、オバマ再選への期待は、実はここにある。彼には二期目には思い切り、自らの理念を実現して欲しいと思っているからだ。最も保守派はそれを恐れているのかもしれないが....。

 米国には暮らしたことはないが、そんな第三者から見ても、アフリカ系アメリカンに対する差別がどれだけ苛烈だったかは理解している。それでも米国はアフリカ系アメリカンのオバマを選んだ。その意味を最もよく考えなければならないのは、米国民そのものだと思う。歴史は動いてしまったのだから。

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登録日:2012年 03月 28日 22:58:19

遅きに失したアナン調停案の受け入れ


 アナン前国連事務総長が主導した調停案にアサド政権が合意したとの報道だが、信用できないし、いかにも遅きに失した。背景にあるのは、前回、報告した議長声明採択に中露も同調したことがあるだろう。

 冷徹な国際政治の駆け引きの中で、中露も、自らの国益を最優先すれば、すでにシリアは捨石でも仕方ないと考え始めている。さすがのアサドも、それはまずいと考え、時間稼ぎと様子見も兼ねて、今回の動きに出たに違いない。

 勿論、一時でもアサド政権からの攻撃がやみ、人道的な支援が実現すれば、切望的な状況の中にある人々は歓迎するだろう。しかし、すでに余りにも多くの生命が失われ、国連など外部の目の届かないところで、より陰惨な弾圧を続けるだろう。語るべき言葉ではないが、シリア情勢は行き着くところまで行かないと、決して沈静化しないだろう。

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登録日:2012年 03月 27日 22:09:11

支持した中露も後戻りはできない


 安保理決議までは及ばないが、あいまいな文言ながら今後の外国の介入の可能性にも触れている議長声明に中露が支持した意味は大きい。アサド政権の余りにも酷い弾圧に、さすがの中露も匙を投げかけているのだろう。中国よりも歴史的に見て、シリアとの関係が深く、巨額の権益を持っているロシアも、このままシリアに寄り添っていれば、それ以外の利害、権益に悪影響が及ぶと考えたはずだ。

 こうして、また冷徹な国際政治の力学が動き始めた。自らは手を汚さず、ボンボン育ちのアサドもそろそろ気がついてもよさそうな状況だ。このままいけば、決して望まないが、シリア国内の反体制勢力への何らかの武力支援に向かうのではないか。歴史は明白に独裁者の末路を見せつけてきた。だが、もはやアサドの逃げ道はないのだろう。今更、白旗を上げても国民が許さないのだ。

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登録日:2012年 03月 23日 19:50:31

自衛のための武器はない


 フランスでの事件がまだ生々しいのに、今度は、また米国での事件だ。自警団というから何らか自衛的な必要があり、結成されたのだろう。そして米国のことだから、合法的に武器を所持していたのだろう。合法的な武器というのも、よくよく考えると、とても認められない矛盾だが....。

 事件が起こった地域では異なる人種間で緊張があったに違いない。そして、その緊張や恐怖を背景に、手にした武器は、いとも簡単に使用される。さまざまな課題を抱えながら、この国は漂流しているように感じるが、唯一、救われているのは、自衛のための武器が市中に蔓延していないことだ。

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登録日:2012年 03月 22日 18:50:10

権力者とはこのようなものだ


 確かにCNNなどを通じて、ようやく報道されているシリアの惨状を知ると、iTunesで楽曲をダウンロードかよと不快になるのもわかる。しかし、余りにも酷い弾圧の現況を報道で知ると、逆に、このアサドという人物は、弾圧は指示したが、実際に現地で何が起こっているのかは全く知らないのではないかと思えてきた。いや、きっと知りたくもないのだろうし、知れば、あそこまではできないのではとも思う。

 彼は英国への留学体験があり、兄が急逝するまでは政治に興味はなく、歯科医になるつもりだったそうだ。それが運命のいたずらで独裁国家を引き継ぐことになった。取り巻きも多いだろうし、ボンボンとして育った裕福な環境も手放したくない。特に何代目かに独裁的な政権を引き継いだ権力者というものは、このようなものなのだろう。反面、それが怖い。現地で手を汚しているのは、権力からは遠い人々だ。権力者はよく眠っているだろうし、メールで妻に愛もささやける。しかし、時間がかかろうとも、アサドに先はないのではないか。末路はチャウシェスクのようにか、カダフィのようにか。いずれにしろ血なまぐさいことになる。

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登録日:2012年 03月 21日 21:39:29

忘れられなかったこの人物の風貌


 前任の大統領が資金の個人利用という汚職疑惑で致し方なく辞任し、その後任がヨアヒム・ガウク氏だといくつかの報道で知った時、すぐにこの風貌が思い出された。東ドイツ崩壊後、悪名高き秘密警察「シュタージ」が残した文書の管理と公開という困難な仕事を担っている人物として報道され、その時に、この忘れられない風貌と出会った。

 敵に回すと怖そうで、どこまでも頑固で、決して節を曲げない。この人物は信頼できると思えるような顔立ちだ。秘密警察「シュタージ」といえば、その背景を描いた2006年公開の映画「善き人のためのソナタ(Das Leben der Anderen)」がある。家族、友人、そして恋人さえも秘密警察の協力者に仕立て上げ、独裁的な国家機構を維持していた旧東ドイツ。その呪縛から、秘密警察に務めるある一人の人物が、どのようにして再生したのかの物語である。

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登録日:2012年 03月 19日 19:28:35

権力闘争が表面化しただけなのか


 各方面で報道されているように、背景には、共産党内部の二つの代表的な勢力による権力闘争があるとのことだ。それよりも興味深かったのは、引退が決まったという温家宝首相が最後と目される記者会見で発言した内容だった。

 それは政治改革を進めないと、一連の経済改革の果実も失うことになるとのものだった。ここで彼のいう政治改革とは具体的に何なのかは示されなかった。ただ彼はあの天安門事件の際、天安門広場の学生たちにシンパシーを示して失脚した趙紫陽に同行して学生たちと対話を試みた。後に温家宝は、この行動を自己批判し、政治的に生き残ったとされる。

 中国には政治的熱狂、偏狭とはかけ離れた実務家的な政治家が現れる。毛沢東時代に本心では文革を最も嫌悪しながら、苦しみの中にいる民衆のためにあらゆる妥協も惜しまず生き残った周恩来。この温家宝の発言は、そんな周恩来的な文脈で聞くと、彼が何に危機感を感じ、これからの中国を担う若い世代に何を伝えたかったのかわかるような気がする。そして次に権力を担う習近平の耳に、彼の政治的遺言かも知れない発言が届くことを願いたい。

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登録日:2012年 03月 16日 21:29:28

国境が地続きであること


 この国は良くも悪くも海で他国と隔絶されているので、そこに住むものとして国境が地続きであるとの感覚はよくわからない。トルコとシリア。今回の事態で、この地域の安定はすでに溶解した。難民が逃れてくるルートに面するトルコ側の境界は、今後、国際社会のシリアへの何らかの対応がとられる際の最前線となるだろう。

 一方で、最近は、その動静がなかなか伝えられないが、トルコはクルド人との紛争を抱えている。文化、歴史、言語が異なる人々への非寛容は世界のどこにでもある。その非寛容もまた、国境が地続きであることの緊迫感から生まれる面もあるだろう。異なるものへの寛容さをいかに養うのかは、少子高齢化を迎え、外国からの人々をやがて受け入れざるを得ないこの国でも、大きな課題となるだろう。

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登録日:2012年 03月 15日 20:14:23

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プロフィール
Kazu
(男)
1951年04月01日
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樋口一希(Kazuki Higuchi)
建築ジャーナリスト・ライター・エディター
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