2009年 08月
総選挙を読み解く3(+1)冊の本④
メディア理論では「ソーシャルラーニング(social learning)」とか「カルティべーション(cultivation)」と言われる理論、つまり、テレビ映像を普通よりよく見る人たちは、社会をテレビが映し出す世界を参照基準として理解する。或いは、メディア暴力は模倣暴力を誘発する、という考え方。このメディア理論を神経生理学的に裏付けるのがミラーニューロンの発見である。ミラーニューロンとは、他人の行動や表情を自分の脳内に「写し出し」、行動の意図まで識別する神経細胞のことである(「ミラーニューロンの発見」マルコ・イアコボーニ著、ハヤカワ新書)。
俗に「風が吹く」と言われている現象。例えば前回の郵政解散時の「小泉旋風」等。
これもミラーニューロンで説明できる。
有権者は支持する候補者を見るとミラーニューロンシステムを通じて共感と一体感を呼び起されるのだが、ネガティブキャンペーン(主として中傷広告と個人攻撃)はその候補者に対する共感、一体感を傷つけてしまう。
小泉・元総理の場合は、小泉=善玉が主たる発火源であり、郵政民営化が発火源ではない。小泉・善玉に共感と一体感をもつミラーニューロンは郵政民営化反対派に「ノー」と言ったのではない。反応を示さなかったのだ。
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登録日:2009年 08月 16日 23:59:10
総選挙を読み解く3(+1)冊の本③
昨年のような経済危機を経験すると(総需要が不足する状態を解消するため「バラマキ」と言われてもやむを得ない財政出動が緊急避難的に必要だった)、バラマキにも「やむを得ない(良いとは決して言えない)」ものと明らかに「悪い」ものがあることに注意が必要だ。
再分配政策(例えば、世代間の再分配政策が「年金制度」であり、地域間の再分配政策が「交付税制度」である)を拡充することが与野党の合意であるかのようなマニフェスツが示され、それに対しては情緒的な非難が多くなされているが、必要なのは①本当に必要な再分配政策か、②理念は何か、③マクロ的に見て実現可能か、に関する議論である。
そこで薦めたいのが「誰から取り、誰に与えるか」(井堀利宏著、東洋経済新報社)である。
年金についての「個人勘定賦課方式の導入」や年金支給開始を遅らせる等インパクトのある提案がなされているが、ここでは、地方分権に関する「個人勘定交付税」の提案を紹介する。中味は、「住民の税負担と公共サービスからの受益のリンクをより明確にするために、交付税相当額を当該地方自治体に交付するのではなく、その地域の住民に直接交付する。そして、自治体は交付税相当額を地方税の形で追加徴収する。・・・そうすれば、住民は自分たちの行財政サービスのために国からどの程度の金額が交付されているかをより実感できる。また、交付税の財源と比較して自治体が実際に提供する行政サービスがどの程度適切かどうかも、判断できる」
ここまで突っ込んだ提案はどの党のマニフェストにも書かれていない。
「国と地方の協議の場が法制化」されたら先ずこういう議論から始めるべきだろう。
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登録日:2009年 08月 14日 23:54:30
総選挙を読み解く3(+1)冊の本②
国の特別会計を政治アジェンダにまで持ち込んだのは著者らの功績である(「特別会計への道案内」(松浦武志・著、「創芸出版」))。
著者によると、平成20年度の一般会計83兆円のうち49兆円が特別会計に繰り入れられているので一般会計純支出は34兆円である。
これに対し、特別会計(交付税特別会計50.1兆円、年金特別会計19.7兆円等)は212.6兆円が純支出であり、GDP比40.3%になる。これに地方の歳出を加えると日本中の「官界」が仕切る平成20年度の予算は268.4兆円、GDP比51%になる。主要先進国の平均が40%ぐらいなので、日本が如何に突出しているかわかる。
因みに政府並びにメディアによると予算は一般会計の83兆円のみであり、GDP比にして約16%という報道がなされるので多くの有権者はこれが予算だと思いこんでしまう。
マニフェストの財源論争の背景にはこの特別会計の”怪”があるのだが、さすがの全国知事会もここまで踏み込むまでには至らなかった。
「社会主義国」日本をどのように方向変換するのかしないのか。
重要な対立軸の一つである。
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登録日:2009年 08月 12日 23:43:34
総選挙を読み解く3(+1)冊の本①
将来不安をどのように解消し安心・安全な社会をどう構築していくのかを考えるときに「安心乗数」という概念は非常に魅力的だ。
「アニマルスピリット」(ジョージ・A・アカロフ、ロバート・J・シラー著、「東洋経済新報社」)では、この安心乗数という概念を筆頭に、人間の経済的意思決定に際しての合理的でない部分(これを著者らはケインズにあやかってアニマルスピリットと呼んでいる)を、①安心、②公平さ、③腐敗と背信、④貨幣錯覚、⑤物語、に分類し、それらのアニマルスピリットが経済をどう動かすのか説明している。
各党の政策を評価する際、とりわけ重要なのは、この「安心乗数」(安心が一単位変化したときの所得への影響)と「物語」即ち「自分が何者で何をやっているのかというわれわれの現実感覚は、自分や他人の人生のストーリーと絡み合っている。そうした物語の総和が国の物語や国際的な物語となって、経済で重要な役割を果たすようになる」というところだろう。
安心乗数では自民が民主を上回るだろう。しかし、「責任力」というのは自らを語るだけであって国民一人一人は自分たちの物語として受留められない。これに対し「政権交代」というのは理念ではないのだが、国民一人一人の物語として有権者は受け取るだろう。
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登録日:2009年 08月 09日 23:58:48
総選挙の争点③
各政党のマニフェストが出揃った。自民・公明、民主のそれらを一読しての感想は以下の通りである。
先ず、いずれにも言えるのはビジョン(理念)とその背景となるマクロ理論が明確にされていないので、個別の政策の実現可能性を検証しようがない、ということだ。
民主の場合、成長戦略が描かれていないので、手当と無償化のオンパレードの財源は?と誰もが問うだろう。また、製造現場への派遣を禁止してしまえば、製造業はどうなってしまうのか、これも誰もが思うところだろう。
自民の場合も、「10年で家庭の手取りを100万円増やす」というのは論外だが、OECD諸国並みの公財政教育支出の確保というのも財源をどこに求めるのだろうか。因みに日本の公財政教育支出はOECD加盟国中最低で(GDPの約3.7%)、これをせめてアメリカ並みの5%に引き上げるだけでも6.5兆円の予算が必要になる。
分権について言えば、民主の「ひもつき補助金の廃止」、「国直轄事業負担金の廃止」は評価できるものの、地域主権の項目に「農業の個別所得補償制度を創設」とあり、この政党が都市住民を代表する政治勢力では全くないことまも明らかになった。
「新地方分権一括法」と「国と地方の協議の場の法制化」にまで踏み込んだ自民、公明のマニフェストを評価したい。
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登録日:2009年 08月 03日 01:46:51
- プロフィール
- 浅田 均
- http://www.asd2a.com
- 大阪府議会議員。
NHK(日本放送協会)、OECD(経済協力開発機構、在パリ)を通じ「放送と通信の融合」、「情報通信」等の研究に従事。99年からは一転、府議として「行財政改革」、「地方分権」等に取組む。
京大卒。スタンフォード大院修士修了。
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