2006年 07月

絵の具の奥に・・・・

50ドルで至福の時をどうぞ、クリムト絵画展 - 米国

【ニューヨーク/米国 23日 AFP】19世紀末を代表するオーストリア人画家グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)。
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(c)AFP/LOS ANGELES COUNTY MUSEUM OF ART

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グスタフ・クリムトは、とても人気のある画家であり続けているようです。

金箔・エロティックな表情、日本人の好みになぜだか合致しているのかも。

■四角と丸

クリムトファンなら、おそらく、しつこく、しつこく、何度も見ることになる、この四角と丸のモチーフ。ときに、長方形であったり、コーヒー豆のような形状であったり。

残念な、お知らせですが、はっきりと、男女の生殖器のシンボルマーク的に使われています。どちらが何で、どれがどう対応するか、述べるまでもないような・・・

彼の作品で「ダナエ」というのがある。ギリシャ神話の中で、塔に閉じ込められた美女ダナエに、黄金の雨となって降り注ぐ神ゼウスの物語だ。生まれてくるのは、アンドロメダ姫を救うペルセウス。

さて、この黄金の雨、クリムトは、黒い長方形の波で表現しているわけで・・・


■クリムトとエロティックなスキャンダル

クリムトのアトリエに、泥棒が忍び込んだことがある。
描きかけの作品を見て、泥棒は衝撃を受ける。
そこには、女性の局部が微に入り、細に入り、詳しく描写されていた。

しかし、同作品のその女性は、発表された段階では着衣で描かれていた。
その絵の具の下には、泥棒の証言のように、モザイクが必要な筆致が隠されていたわけ。

さらに、クリムトに関しては、愛人譲渡というストーリーもある。
日本では、同じく人気のエゴン・シーレ、彼はクリムトの弟子。
クリムトは自分のモデルを勤めていた、ヴァリという女性をシーレに譲る。

シーレはクリムトよりさらに、激しい性描写で知られる。
春画も目をそむけるかもしれないほどに、局部の描写であったり
少女の裸体を、しかも生々しく描いた作品で知られる。
何故か、彼も日本ではタイヘンな人気だ。

悲しいが合理的な現実。シーレはヴァリを捨てて、別の女と結婚。
シーレも妻も、20代の若さで没することを考えると、全員、微妙に不幸な香りに包まれている。

■五木寛之

「哀しみの女」という五木寛之の作品は、まさに、このシーレとヴァリの関係をモチーフに
舞台を日本に移し変えた作品。

少しばかり、画家とモデル、愛人、恋人、妻、という関係にたいして
具体的なイマジネーションをかきたててくれるので、興味がある方には一読を薦める。

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登録日:2006年 07月 30日 03:24:50

モノクロームは白黒じゃない

Fundacion Pedro Barrie de la Mazaでベラルド・コレクション展開催 - スペイン

【コルーニャ/スペイン 7日 AFP】Fundacion Pedro Barrie de la Mazaで6月29日から11月26日までポルトガルのシントラ近代美術館(Sintra Museum of Modern Art)所蔵のベラルド・コレクション(Berardo Collection)の展示会が行われる。写真は6日に撮影されたマドリード出身のアーティスト、フアン・ムニョス(Juan Munoz)の彫刻「After Degas II」。(c)AFP/Miguel Riopa

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美術の勉強をしていたときには、単純な用語の勉強もします。

例えば、色調に対して、一般的にトーン(tone)という単語を使いますが、これはマチガイと注意されました。この単語は音楽用の言葉で、美術で色調の話をするときはvalueという単語を使います。

同じように、モノクローム。この単語、白黒をあらわす場合に使われますが、マチガイ。白黒は実は、色がなく、光の強弱でしかありません。モノ、は「一つ」クロームとは「色」という意味なので、単色の濃淡のことをモノクロームというのですね。

■モノクロームな作品

そこで、イブ・クライン。

どうしてだか、私は詳しく知りませんよ、だけど、何故だか彼の作品はブルー一色。
まさにブルーのモノクローム。

彼のこの青は、インターナショナル・クライン・ブルー(IKB)という、一般に顔料として売られることにもなった、独自のブルーを使っています。

■実は、私の地元にも一体あった。

この作品S41、日本にもあります。一体は岡山の大原美術館。私も小さい頃から、何度となく目撃しておりますが、このブルー、確かに、独特の色です。
青みが強いというか、蛍光感を感じる青さです。

一般に「青いヴィーナス」と呼ばれるこの作品ですが、ミロのヴィーナスと説明されていることがありますが、おそらく、クニドスのヴィーナスの方だと思います。
ミロのヴィーナスは大腿部が布で隠れていますし、肩から折れてる腕が逆です。

えぇっと・・・画像はknidos venusで、検索してください・・・

■記号から記号の要素を奪う

彼は有名な「サモトラケのニケ」もこのブルーで塗ってしまっているのですが
こうなると、もう、ヴィーナスもニケも、彼のブルーのキャンバスに過ぎません。

この青を見せるための、台としてのヴィーナス。

クニドスのヴィーナスというのは、美術界ではミロ出土のものと並んでタイヘン有名な作品。アイコン的存在。古代ヘレニズム美術の象徴としての彫刻が持つ、記号的、シンボリックな意味が、青で塗りこめることで、中和されてしまう効果があります。

いかに、どんなシンボルでもアイコンでも、ちょっとしたことで、その意味合いが違ってしまう、そういう事を言葉よりも雄弁に表現できるのが、ビジュアルアートの力かもしれませんね。

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登録日:2006年 07月 24日 21:52:58

見ている私を、見ている誰かの視線

成都美術大学主催の展示会が開催される - 中国

【成都/中国 24日 AFP】23日、成都美術大学(Chengdu Academy of Fine Arts)が学生らの日ごろの制作活動の成果を披露するため、展示会を開催した。訪れた人々は一つ一つの作品の前に立ち止まり、熱心に鑑賞していた。(c)AFP/LIU Jin

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写真奥の絵の中で、女性が自分の目を手で覆いながら、隙間からこちらを覗いている。
女というのは好奇心の生き物なので、きゃぁーって言いながら、ちゃんと見ている。

■カメラマンの視点

この写真を見たら、当然ながら、目がいくのは手前の女性の下半身。

成都とえいば、ズイブン内陸だし、四川省の方。
海岸沿いの中国の女性は、すっかり世界標準にファッションのトレンドを追う洋服に身を包んでいるけれど、この女性もしっかり「現代風」なのが分かる。

ジーンズのロールアップの部分には、今年流行のレースがあしらわれている。靴だって、黄緑は珍しい。でもデザインは今っぽい、ベーシックの次の次くらいに購入を考えるタイプの靴でしょう?

しかも、とってもスタイルがいい。そりゃ、撮リタクナリマスヨネ!

■シェークスピアに見られる、入れ子式の構図

少し話をズラして。シェークスピアの作品で「真夏の夜の夢」というのがあります。
妖精の王国と人間の二組のカップルのドタバタ劇。
この戯曲の中には、劇中劇があるのですが、この効果について、英文学の授業なんかでは、こう教えます。

「劇中の人物が、入れ子式に劇を見ている」そして、「『真夏の夜の夢』という劇を見ている自分たちがいる。」そこから、派生して「見る人は、自分達も、劇中劇の人物のように、あるいは劇の中の人物のように『見られる側』かもしれない、と思い至る」という説明。

そして、シェークスピア劇の観客である我々を見る視点とはどこにあるのか?
それが神の視点であり、劇中劇の効果は、神の視線に思いを至らせるという意図も読み取れる・・・と。

これに賛成するかどうかは別の話。

■back to この問題の写真

絵を見ている彼女、それを映すカメラマン、その写真を眺める私たち。

逆に、絵の中の女性は、それを見るジーンズの女性、カメラマン、私たちを見つめ返す。

カメラマンが意識したのかどうか、結果として、合わせ鏡のようなエフェクトが生まれているというお話でした!

では、あなたも、誰かに見つめられているのかも?

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登録日:2006年 07月 09日 12:07:40

エロかったらダメ?

アメデオ・モディリアーニの展示会がロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで開催 - 英国

【ロンドン/英国 7日 AFP】年間100万人以上が訪れるロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(Royal Academy of Arts)で7月8日から10月15日までイタリア人彫刻家で画家のアメデオ・モディリアーニ(Amedeo Modigliani、1884~1920年)の作品展示会、「Modigliani and His Models」が開催される。
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(c)AFP/SHAUN CURRY

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モディリアーニの裸婦画といえば、日本でも、どこぞの公立の美術館において、猥褻であるから教育上よくない、とか、いや、芸術であるからして猥褻ではない、というムダな議論が取り交わされる事件が、20年近く前にありました。

■猥褻か?

現代のポルノグラフィに慣れてしまった私たちの目には、ソフトな表現にしか映らないのは当然。もしかしたら、モザイクなしに慣れた目には、かえって新鮮かもしれませんね。

しかし、描かれた当時、実際、猥褻だから、と問題になったのは事実。

では、猥褻なものは、芸術ではないのでしょうか?
トンでもない!
皆が認めるところの、いわゆる古典芸術。
ミロのヴィーナスに代表される紀元前4世紀から紀元2世紀頃のヘレニズム美術。
現代の私たちが見ても、十分にエロティックで、かつモザイクなしの表現の宝庫です。
しかもリアリズムを追っているので、生々しさもあります。

■猥褻と判断するのは誰?

でも、猥褻かどうかという判断は、人それぞれ趣味嗜好があります。フェティシズムの世界では、凡人の及ばない物事に性的興奮を覚える人が多々いるのです。もしかしたら、裸婦画より額縁に興奮する人だっているかもしれません。

教育ママさんたちは
芸術=猥褻、という方程式は、成り立たないとでも思っていたのでしょうか?
そもそも、モディリアーニの裸婦画程度のエロティシズムの表現ですら彼らが猥褻だといっていたら、現実をコドモたちから隠蔽することで、かえって偏った情報で、若者を暴走させる結果につながったのでは・・・と思うのは、思う程度に留めておきましょう。

■セクシーな画家とセクシーな絵画

モディリアーニは、ピカソなども一応入っている「パリ派」という雑多な美術のムーブメントの一人とされている。特に決まった画風があるのではなく、国際的で、個性とバラエティ豊かなアーティストがそれぞれに活躍。

1920年代の自由な空気の中、パリに集まってきた、沢山の外国人アーティストの一人。日本人ならレオナール藤田、ロシアのシャガールなどもそう。絵画だけでなく、舞台芸術、ファッション、さまざまに広がった時代です。

パリが美術の中心になり始めた頃の時代の空気。

モディリアーニが死んだとき、恋人ジャンヌ19歳は彼の子供を身ごもったまま飛び降り自殺。彼女も将来が期待される画家でした。

どうしようもなくイイ男を知ってしまったら、そうそう、また会えるもんじゃない。世をはかなむのも、ムリからぬことでは?

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登録日:2006年 07月 09日 11:50:40

マーケティング上手なアメリカ人

ワシントン・モニュメントの歴史 - 米国

【ワシントンDC/米国 28日 AFP】ワシントン・モニュメント(Washington Monument)が23日、夜空に映える姿。
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(c)AFP/Karen Bleier

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これって、ローマにあるオベリスクそっくりですよね?

■オベリスク

オベリスクは、元々はエジプトにあったもの。
神殿の両脇などに、このように一本単独ではなく、左右対称に対で置かれていたものです。
紀元前32年、アクティウムの海戦で、エジプトがローマに滅ぼされたとき、戦利品として持ち帰られたものです。ローマが名実ともに、地中海の支配者、世界帝国になったシンボル的な存在。

■その向かい側にあるものは?

このオベリスク=ワシントン・モニュメントの前には人工池があり、夜にはライトアップされ水面に映し出されます。その人工池の向こうにあるのが・・・リンカーン・メモリアルという、ギリシャ神殿のような建物です。

まさか、偶然そんな風になったりするわけがありません。
意図的に決まってます!
ワシントンは、「シーザーになれたのに、ならなかった男」と言われています。
アメリカの政治関係の言葉は、ローマの言葉に沢山依拠しています。

■中興の祖、リンカーン

ローマが覇権を握る前、どんな文明が地中海世界で実験を握っていましたか?
それは、プトレマイオス朝エジプトというギリシャ人(支配層はギリシャ人です)の王国を含めて、ヘレニズム時代、つまり、ギリシャ人の時代です。

リンカーン・メモリアルの中には、まるで神の像のように巨大なリンカーンが座っているのです。

この建物が建てられた当時、美術は19世紀末古典派が中心でした。古典流行りの時代だったのです。古代ローマ人も、重要でシンボリックな建物を市内に、意図的に、効果的に並べていました。ここまで、あからさまに並べても、特に古典を知らないアメリカ人にとっては、大したことではないのかもしれません。

■第三代大統領、トマス・ジェファソン

ちなみに、アメリカで建築を学ぶ人達が「アメリカで最も美しい建物」と呼ぶ、ジェファソン・メモリアルは、ローマの万神殿と言われる、パンテオンにそっくりな建物です。

ローマにあるパンテオンは、アウグストゥス皇帝(初代ローマ皇帝、紀元前1~紀元後1世紀)の優秀な部下、アグリッパが建てた、全ての神様にささげられた建物。伝統的な神殿とドームが組み合わさった斬新なデザイン。(おそらくギリシャ人の美意識だと気絶するくらい悪趣味なんだと思いますが・・・・)。

ジェファソンという、ワシントンにとって、いなかったら何も生まれなかったかもしれないほど、大事な仲間に、この建物がささげられているのも、また巧妙なところですね。

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登録日:2006年 07月 06日 17:09:42

はかなさと、華やかさ

ヤン・ファン・ハイスムの絵画がサザビーズで競売に - 英国

【ロンドン/英国 30日 AFP】オランダ人風景画家、ヤン・ファン・ハイスム(Jan Van Huysum、1682年~1749年)による絵画「Still Life of Fruit upon a Marble Ledge」が7月5日にオークションハウス、サザビーズ(Sotheby’s)ロンドンの巨匠コレクション(Old Master Paintings)で競売にかけられる。
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(c)AFP/SHAUN CURRY

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オランダという国は、一般人レベルが絵画を楽しみはじめた、最初の国である。
なぜか?

16世紀の終わりにはスペインから独立し、共和国になっていた。
大航海時代をへて、世界中で貿易が盛んになった時代
最初に中流階級ができたからだ。
王族、貴族に代わって、有産市民がアートのパトロンになった。

たいそうな絵よりも、部屋に飾れるような絵が増えた。
静物画なども、そういう中で人気が出た。

■花の絵

このような花の絵も、17世紀、18世紀オランダ絵画の特徴。
今のわたしたちの目から見たら
「お花、まぁ、キレイねぇ」
としかウツラナイかもしれないが、ジツは、これは、はかなさがテーマ。

他にも、虫とか、骸骨などが、好んで描かれたモチーフです。
全て、生きるということの、はかなさをあらわしている

どちらかというと、それは暗い考えというよりも
生きるということのリアリティを表現している、という風に解釈されるのが通例。

らんちき騒ぎの貴族や王族に比べて、地に足が着いた市民感覚の現れなのかもしれませんね。

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登録日:2006年 07月 05日 15:44:36

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プロフィール
秋田麻早子
■プロフィール:
アメリカはテキサスで西洋美術史を専攻。現在、博士課程で美術史・考古学なんかを面白がるコミュニケーションを鋭意研究中。
著書に『掘れ掘れ読本』(バジリコ 2007)。笑いのとれる考古学入門書を目指したもの。
連絡先:
mana_mana_chan@hotmail.com
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