2007年 02月
ルノワールはお好き?
【ロンドン/英国 21日 AFP】フランス人画家、ピエール=オーギュスト・ルノワール(Pierre-Auguste Renoir、1841-1919)の1865年から1883年までの風景画を特集した展示会、「Renoir Landscapes」が2月21日から5月20日までナショナルギャラリー(National Gallery)にて開催される。
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(c)AFP/ROBERT HASHIMOTO/NATIONAL GALLERY
美術史を勉強している人に「一番好きなアーティストは誰ですか? 」と聞くのは
ナンセンスだと思う・・・・
勿論、個人として、全く個人として、「あ、この画家、好き」というのはあっても、それと
美術史について語るのは、全く別の次元の話。
という事で、話はルノワールなど、印象派について。
私個人レベルでは、好きか嫌いか、で言うなら、大して好きではありません。
でも、だからって、じゃぁ、興味がないか?というと
ノンノン!!
とても面白い美術の現象だと思うんですよ♪
物事は、好きとかキライとは、違うレベルで楽しむことが可能です。
■印象派と日本人
印象派の画家、ルノワールだとか、モネというのは大変日本人に人気がありますね。
その理由をムリに挙げるとしたら、当たり障りのない色調、数の多さが理由にあげられるかもしれないけど
一番大きいのは、日本人が最初に触れた油絵が、日本人が最初に油絵を描き始めた明治初期が
ちょうど、印象派の時代だったのもあるかもしれない。
私もぼんやり、そんなものかな?と思ったのは、貝塚茂樹という立派な金文の研究家が(湯川秀樹のお兄さん)、やはり印象派が好きで理由として、日本人が最初に触れた油絵=印象派という説を挙げていたのを知ったせいでもある。
日本の某金持ちたちが、こぞって印象派の画家の作品を買った。
でもそれだけじゃなく、オークションでの取引の絶対量が多いのも確か。
どうしてかって?
作品数が多いから!
■絵が、描き易くなった
「印象派(les Impressionnistes)」という単語は、皮肉ってつけられたのが始まり。1874年4月15日にルノワール、モネ、シスレー、ピサロなど、今ではファンなら誰でもしっているスター達が、当時としては冒険でもあり、挑戦でもあった、あの適当っぽい画風の絵を並べた展覧会を行った。これに対し、4月25日、シァリヴァリ紙で評論家ルイ・ルロワが嘲笑をこめて、雰囲気で描いてるよね、的な感じで呼び始めたわけ。
さて、この、印象派の画家たち以前の画家たちが、どんな状況で絵を描いていたか知っていますか?
1.パトロン。
昔はね、金持ちから依頼して、ハジメテ製作できるわけ。
じゃなきゃ、生活どうするよ?
しかし、1789年、フランス革命は貴族を倒したけれど、美術のパトロンも消し去ったという事・・・
以下、画家たちは、貧困にあえいででも、「誰にも頼まれていないのに」「自分が描きたい絵」を描き始めた。
2.道具
絵の具って、それまで、どうしてたと思う?
画家が、自分で顔料とメディウム(媒剤)を混ぜて、その都度用意していたの。
皮の袋に入れて一時的に保存したり・・・まぁ、結局、その都度混ぜたりで、本当に面倒。
1841年にアメリカ人、ジョン・ランドが今でも使われている錫のチューブで特許をとる。以降、イギリスの有名なウィンザー&ニュートン社やロバートソン社が量産し始めた。
1830年代には、カンヴァスも量産されて販売が開始されていたそう。カンヴァスというのは、ただ布を張っただけでは使えなくて、下地を塗らないとムラになってしまう。この処理をしたものが、今でも一般にカンヴァスとして売られている。
そう。絵の道具が安くなったから、沢山描けるようになったわけ!
それまでの画家達は、描くまでに、下絵を沢山かいた。本番でちゃんとしたのを描くため、沢山、準備した。だって、絵を描くって、安いことじゃないから。
でも、印象派の画家たちが登場する頃、もう絵画製作は、いきなり本番で描いてもOKになっていたわけ。
今の時代の作家が、ワープロやワードで書けば、いくらでも書きなおせるから、書き散らかせるのと同じ!
■印象派を見て味わい深い点は、他にもあるけどね
大体ね、ダ・ヴィンチの絵の損傷が激しいのは、主に、絵の具の顔料と溶剤の配分などで実験を沢山しているのも原因の一つなんです。
こういう、世の中の事情、っていう観点から、絵を見るのも面白いですよ。
そうしたら、絵、そのものに興味がなくても
絵を見て知る社会学、みたいになるでしょう?
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登録日:2007年 02月 28日 20:29:14
師匠と弟子・・・『哀しみの女』
【ニューヨーク/米国 23日 AFP】19世紀末を代表するオーストリア人画家グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)。
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(c)AFP/LOS ANGELES COUNTY MUSEUM OF ART
有名な画家っていっぱいいるけど
師匠も弟子もどっちも有名な場合も結構あります。
例えば、17世紀バロック時代のフランドルの巨匠ルーベンスには
師匠を越えたか?!って言われるヴァン・ダイクがいるでしょう。
それから、「サロメ」でも有名な宝石箱みたいな絵を描く
ギュスターブ・モローは生徒の個性を伸ばす人だったのか
マルケ、ルオー、マティスなどの、師匠とは全然画風が違う画家たちが育ちます。
■クリムトとシーレ
この絵を描いたグスタフ・クリムトはとにかく、日本でも人気の高い画家です。
多分、背景が金箔一色で、そこに人間がドンっと描かれてるのが
浮世絵チックで、なじむからかもしれません。
元禄美術みたいな、尾形光琳とかみたいな画風だなぁって、いつも思います。
その弟子が
エゴン・シーレ
二人の絵の雰囲気は、ルーベンスとヴァン・ダイクほどは似ていないけど
でもモローと弟子たちよりは、とても似ているんじゃないかな?
■エロティックな空気
二人とも、とにかく、妙にエロいの。
芸術的なエロさじゃなくて、もっと生々しいエロ。
覗き見をしているような、もっとドロドロした、キレイなものじゃなくて。
リアルさがあるんですね。
クリムトの絵は、下書きの段階で女性がスゴイ姿で描かれて
それを絵の具で塗りこめていた、というエピソードが。
シーレは、どうしたって、ポルノグラフィ的なポーズ、テーマのデッサンが
強迫観念か?!と思うほどに沢山あります。
こればっかりは、どっかで画集をご覧になって。
本当に、ちょっと開くのが恥ずかしいものが多いです。
■哀しみの女
師匠のクリムトのモデルであり、愛人であったヴァリーを弟子に譲ります。
男っていうのは、二種類いて
不遇時代を支えてくれた糟糠の妻を大事にする人
名声を得てランクアップのための女を手に入れようとする人
シーレは、自分を支えてくれたヴァリーを捨てて、お嬢さんと結婚します。
なんだか、やりきれないなぁ・・・という、そんなエピソードを
五木寛之さんが『哀しみの女』というタイトルで
舞台を日本にうつして描いています。
違う国の違う時代のことだと思うと、他人事みたいに思える話も
エッセンスを取り出して、こうやって小説にしてもらうと
手に触れられるような近い事柄のように感じることができると思いますよ。
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登録日:2007年 02月 21日 22:44:50
マクロの美術史、ミクロの美術史
寄贈コレクション2000点、レンブラントは贋作、ゴーギャンは真作 - ポルトガル
【リスボン/ポルトガル 1日 AFP】ポルトガルのファーロ(Faro)にある美術館が所蔵するポール・ゴーギャン(Paul Gauguin)作とされてきたチャコール画が、専門家による鑑定の結果、真作であることが明らかとなった。
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(c)AFP/VALERY HACHE
美術そのものにも、スタイルの流行があるように、美術史の研究スタイルにも、流行があります。現在、マクロ的な視点で見る研究がトレンドかもしれません。
■美術史のミクロとマクロって?
とっても、とっても、簡単に言うなら、一つの絵について、それだけを眺めてウンウン唸っているのがミクロ。「社会の中でどういう意味があるか」とか「他の作品との関係の中でどんな意味があるか」というようなところを考えるのが、マクロ。
最近のトレンドは、いろんな異分野の研究などを取り入れて、視野を広くもった・・・実際、素晴らしく思います・・・逆に言うと、広がりすぎてて、伝統的な美術史の手法は多少おろそかになってしまうことも、否めないやり方、が主流なようです。
さて!美術品の鑑定とか、そういうことになると、両方の視点が大事なんですね。
そして、おろそかにされがちな、ミクロな視点というのが、最終的に決定的な基準になります。
■メトロポリタンの館長が作ったチェックリスト
ホーヴィング館長が作った、絵(美術品全般)を鑑定する際に、必要なチェックリスト。
とっても分かりやすいし、汎用性があるので、簡単に紹介しましょう(カッコ内は私の補足説明)
1.第一印象で心に浮かんだことを、とにかく書きだす
2.精密に描写してみる
3.状態、損傷など、美術的価値とは関係なさそうに思えることも詳細に描写する
4.作品の目的、使用方法について思いをめぐらせる
5.4.の用途と作品の状態が一致するか考える
6.作品のスタイル(具象か、とか抽象、とか、ダイナッミック、とか静的とか・・・)を描写
7.スタイルと年代が一致するか?(年代によって、スタイルの流行がある)
8.文書による証拠を探せ、ただし偽造されやすいものだということを忘れない
9.文献をあたる、来歴、出所と照合
10.科学テスト(ここにきて、やっと科学分析が価値を持ちます!)
11.風評・市場での評価
この上で、作品を見ると、矛盾などがある場合・・・例えば、年代とスタイルがまったく合わないなど、そこから疑問・疑惑となり、さらに詳しく調べていく必要があるのですね。また、それを確認するために、科学テストが大きな手助けとなったりするんですね。ある程度足がかりがないと、化学だって、スタート地点もなければ、取っ掛かりようがありません。
私も、一度だけ、学芸員の先生が出してくれた推理クイズのような鑑定問題で、このようなプロセスを追ったことがあります。科学テストをしないまでも、分かることが相当にあります。
実際のところ、風評・来歴などが、ポイントだったり♪
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登録日:2007年 02月 17日 00:39:36
「まぁ、意外にお安いのね」
【マドリード/スペイン 20日 AFP】ルネサンス期のイタリア人画家、ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Tiziano Vecellio 別称、Titian )の「Portrait of a Lady」と題された未発表の絵が19日、マドリードで開かれたオークションにて36万ユーロ(約5500万円)で落札された。(c)AFP/PIERRE-PHILIPPE MARCOU
まぁ、ティツィアーノがそんな値段なの?
最近、オークションなんかでニュースになるとき、有名な画家の絵はかるく何十億円もする。だから、何千万、という一般人のマイホーム的な値段だとかえって驚いてしまう。
未発表の絵、というのが非常に、その、曖昧なワケですが・・・この特定の絵の出自について云々するのは、私にはまったくできないことです。
それよりも、一般論として、誰かの絵が「とあるお金持ちの家の倉庫に隠れていた!」というとき、どうやって審査していくのか?ということを、ちょっと書いてみます。
可能性は無限にあります。
■未発表の絵のもつ可能性
1.実際に、その絵が○○という画家の絵である
2.同時代の似たような感じの別の画家の絵
3.全然違う時代の関係ない画家の絵だけど、少なくとも贋作を意図して作ったものではない、単なる、アトリビュートのミス(結構ある話!)
4.意図的に作られた贋作、現代に作られたとも限らず、○○という画家以降のどの時代でもありうる
どういう順番で審査をしていくかというと・・・・
■美術史の人が通る、長いみちのり
「え、科学分析が最初じゃないの?」と思う人が多いでしょう。化学的な知識って、なんだか絶大な信頼を世間の人の間にえているようです。でも、考えてみたら、炭素同位体だと100年くらいは前後するので、古代の遺物か現代の贋作かを見極めるのには、非常に役立つ。でも、必ずしも偽物とは限らないけど、イタリアのものだと思われているけど、同第のギリシャのものかもしれない、などという可能性についても考えないといけない場合には、年代だけではすみません。
油絵なら、絵の具の分析をすれば?と思うかもしれません。でも、仮に本物の絵だったとしても、後の時代の人が修復をしていることが多いのです。ですから、表面の絵の具を削って、分析して「はい、違います」という結論も簡単には出せないのです。
■まずは、てはじめに
ステップ1 最初は結局、その○○、と思われている、その○○さんの絵の中でも「確実に本物」とされる作品のすべてを吟味することから始まります。それらに共通する特徴というものを、その問題の絵ももっているかどうか?それが大事です。
ステップ2 そして、その○○、と思われている画家が属した時代、地域の絵の特徴というのもリストアップする必要があります。そうしたら、その時代の空気、特徴もつかんでいるか?ということが比較できます。えてして、個人の特徴に気をとられていて、時代の空気が全然ないのに、気づかないことがあります。
ステップ 3 そして、同時に、その作品に関して、もっている情報のすべてを羅列する必要があります。見て、観察して選られる情報も、全て全て羅列していく必要があります。絵の具がこうだ、とか、筆のタッチがこうだ、とか、額縁はこれだ、とか、キャンバスの目の粗さだとか、色調だとか、全てです。
■しかし、そんなに単純でもない
これで、明らかに、そりゃ、ちがうだろう!というときは、簡単。でも、怪しい、とか、微妙、とかそういうケースが多いんですね。そういうときは、ある意味、筆跡鑑定と同じような手法になってしまうんです。そう、スタイルの分析。でも、美術史家がよく言います、結局、このスタイルが何よりも決めてになっている。
科学分析ですら欺いた贋作者が、スタイルの分析の目をくぐり抜けることが出来なかった、そういう事もあります。
また、本当に単なる手違い?!というか意図的な手違いで、全然違う画家の絵が有名作家の作品として世の中に登場することも多いんですよ。これは、ちょっと調べたら、わりとすぐにバレちゃいますけどね。
また別の機会に、具体的にどうやるか?とかどんな手間があるか?などについても説明したいと思います。
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登録日:2007年 02月 06日 15:57:39
- プロフィール
- 秋田麻早子
- ■プロフィール:
Art Historian たぶん美術史学者、ときどき考古学。
アメリカの僻地の大学・大学院では西洋美術史を専攻。
でも論文を書いたのはアケメネス朝ペルシャ。
・・・美術史という素材の調理方法の可能性を模索しすぎで
エントロピーの法則な日々。
美術史・考古学を軸に、幅広く文化史的なモノゴトとか
特に、アートや学問の世界の面白いとこをご紹介しちゃいましょう。
MA in Art History 2002, University of Texas at Austin
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