2007年 05月

天才の行動が凡人に読みきれるか?!

モネの作風変化、原因は「白内障」 - 米国

【ワシントンD.C/米国 18日 AFP】印象派を代表する画家クロード・モネ(Claude Money)の作風は、晩年になるにつれより抽象的に変化していった。
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(c)AFP PHOTO/Wildenstein

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モネが晩年白内障を患っていたかもしれないと・・・
こういう、アートな世界を、医学という別の分野の人が別の視点で捉える研究って面
白いですよね。

■目で見た世界を絵に描くって?

きっとほとんどの人が、絵を描くときって、見たままを描けないからフラストレー
ションが溜まってるんじゃないですか?「絵がうまい人」って、どうして「見たまま
を描ける」んだろう・・・って。

でも、見たママ、って一体、どういうことなんでしょう?
考えてもみてください、網膜に入ってきた数々の情報が、頭の中でどう処理されて、
手の筋肉にどんな指示を出して、絵になるんでしょう?

■「見た世界」はバラバラになる

網膜で処理されるのは、光の強弱とか、三原色とか、その程度です。それが後ろ頭の
ほうの第一視覚野にいって、バラッツバラになるんですね。細切れの情報に。

そう、頭の中では、実は「見た」世界はいったんバラバラになって、自分の頭の中で
再構成されてるんです。だから、なかなか見た世界って、実は適当になりがち。ほ
ら、事件の目撃証言なんかでも、白い車を見た!って誰かがいったら、みんな影響さ
れちゃったりするでしょう?心理的な効果でいくらでも、見たはずがないものや、見
たはずのもの、曖昧になってしまってるのに確信をもてたり。わりといい加減な記憶
なんです。

■「見た世界」は頭の中でもう一度組み立て直される

そして、バラバラになった情報を頭が分析します。

色。

形。

空間(奥行きとか、じゃないと世の中が立体的に見えない)
動き。

この4つです。

そして、モネという画家は、そういう情報の中でも「色」だけを取り出して描いてい
る画家なんですね。形なんて、輪郭線も曖昧でしょう?ある程度は残っているけど。
動きも分からない。奥行きは感じられない。

「見た世界」を頭の中で組み立てなおすとき、「色」に関する情報に重点を充てたの
が「モネの絵」なんですね。

■では、白内障だったのか、どうなのか・・・

実際に、眼科のお医者様がおっしゃるんですから、きっと白内障の症状の方のビジョ
ンというのは、モネが作り出した晩年の作品の見せる絵の雰囲気と似ているのだと思
います。

そこで二つの可能性。

1. モネは実際に晩年白内障を患っていた
2. モネは色に重点を置いた画風をとことんつきつめて、形を表す要素を排除する
ために、結果白内障的なビジョンの作風を作り出した

ピカソだって、少しおかしくなった人みたいな絵ですが、あれだって奥行きとか空間
認識の要素を排除して、あんなおかしな絵を作り出したわけですから・・・

天才的な芸術家のことです。
凡人には計り知れないほど、頭の構造とか認知を飛び越えた創作をしている可能性は
大!
だから、面白いし、引きつけられるんでしょうね。

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登録日:2007年 05月 31日 17:47:52

ロスコの絵を解読

マーク・ロスコの抽象画、史上最高額の7280万ドルで落札 - 米国

【ニューヨーク 16日 AFP】競売大手サザビーズ(Sotheby’s)で行われたオークションで15日、米抽象画家マーク・ロスコ(Mark Rothko)による作品が現代アートにおけるオークションとしては史上最高額の7280万ドル(約87億円)の値をつけて落札した。
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(c)AFP/TIMOTHY A

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あーもー、こんな、絵の具で色塗っただけのキャンバスが何十億かよ???
チョットマッテネ、今説明シヨウ!

■裸の王様?

そういう発想、大事だと思うんですね。
『ほほぉ、うつくしい』とかってウカツに口にしちゃうと、裸の王様じゃないのか?って疑われそう。
私も、ちょっぴりそういう気分があります。

何の前置きもなく・・・21世紀の私たちが『スゴイ!』と思えたら、それはちょっと不思議。
でもね、同時代の人でセンスのいい人なら『あ!!』って思うかもしれない。

何が違うかというと、やっぱりアートも、媒体(メディア)であって
その時代のアーティストのメッセージを載せた乗り物でもあるから。
同時代の人なら、同じ空気、時代の文脈の中で、この絵を見ることができるでしょう。

でも、この時代について、この頃のアメリカについて、何も知らないでは
スゴイんだかなんだか・・・コレが?っていうのが自然なリアクションだと思います。

だからアートなんて、面倒なんだ!って思う人いても、仕方ないかも。

■高い技術=偉大な芸術という図式は普遍的ではない

たとえば、ミケランジェロやダ・ヴィンチのような画家なら
人間離れした高い技術で、時代を超えて『スゴイじゃん!』といえる部分が多い。

でも、20世紀の美術の中には・・・そうじゃなくて
『新しさ』を背負って出てきたことで『スゴイ!』
まさに、コロンブスの卵的なその発想を、アートという表現で見せたことが
評価される、そういう芸術の形が生まれたんです。

だからね、文脈というか、作られた背景を知らないと、なかなか評価も理解もできないものも
沢山あるんです。

読み解く面白さ?みたいな感じ。

■50年代という時代の空気

アメリカの50年代アーティストとしては、絵の具を垂らしたり、ぶちまけているジャクソン・ポロックと並んで、有名な画家なんです。

どんな時代かというと・・・
51年にはサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』が発表され、カラーTVがアメリカには登場しました。
54年には、あの『指輪物語』が発表され、59年にハワイが50番目の州に。
黒人の民権運動が盛んだったのもこの時代。
そんな時代。

アンディ・ウォーホルとかロイ・リキテンスタインなどのポップ・アートは60年代なので、その一時代前ですね。

そういう時代の、こういう画風は『Abstract Expressionist』っていわれてました。
いわゆる、派手な抽象画。

■所詮、絵画は"布と絵の具の作ったイリュージョン"

絵がちょっと上手い人なら、透視法とか、ちょっとしたコツとか技術を駆使したら
結構かなり、写実的な絵を描くことができる。特に、先達が技術を磨きあげて
しかも理論化してくれてるから。

相当に絵画の技法も発達した。
写真のような絵も描ける。

だけど、実際のところ、布と絵の具なんだよね?

ホンモノのように見える絵も、何もかも、全部、布や絵の具なんだ!
というフィジカルな物理的な現実に、引き戻した、これがポロックとか、ロスコとか、フランシスだったりしたの。

あぁ、そういえば、キャンバスって布よね。
考えたら、絵の具よねぇ。


■西洋人の価値感と日本人の価値感

みたいな、そういう発想の逆戻しみたいな。

その良い例として、彼のキャンバスの使い方。
キャンバスって、ジェッソとか下地を塗るんですね、そうじゃないと絵の具がにじむから。
だけど、ポロックとかロスコは、布に直に絵の具を乗せちゃうトライをやってたみたいです。
今までの油絵とか、アクリル画とかと、全然違うテクスチャーになるでしょう?

そういう実験的な面白さ、というのを『西洋人』は大変評価するんです、技術と同じくらいに。
日本人にとっては、技術が高くないんなら、やったモン勝ち、というのに評価をしたがらない傾向があるかもしれないですけどね。



ロスコの場合は、それだけじゃなくて、デザイン的に
色のバランスとか構図とかに面白さがある、っていう見方もできますね。

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登録日:2007年 05月 26日 01:24:45

王妃の運命

「3000歳の王妃」めぐり、ドイツとエジプトが対立 - エジプト

【カイロ/エジプト 15日 AFP】エジプト政府は15日、ベルリン国立博物館が所有する古代エジプト王妃ネフェルティティ(Nefertiti)の胸像について、展覧会のための一時貸し出しが認められなかった場合、エジプトは今後ドイツで開催される展覧会への出品協力を行わないと警告した。
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(c)AFP/DDP/OLIVER LANG

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ネフェルティティのこの胸像は、エジプトの彫刻の中では比較的珍しいタイプの表現です。というのも、これが作られた時代というのは、一時的ではありますが急激な宗教改革や首都移転などがあったため、美術の表現も独特の個性が生まれたからなんですね。

世界史を取っていた人なら、アマルナ様式、というのを聞いたことがあるかもしれません。エジプト美術の中では、ちょっと女性的でエレガントで丸みを帯びた浮き彫り彫刻なんかが知られています。

時代で言うと、ちょうど有名なツタンカーメン王の直前の代。

■ドイツのものか?

王妃について詳しく話す前に・・・
皆さん「ドイツってひどい」って思うかもしれません。なんとなく、私もそんな気がします。発掘が行われた当時、今のような文化財に関する取り決めはあっても、あまり実行力がありませんでした。いわゆるモラルがない時代のこと。その後、いろんな国際ルールが決まりましたが、それ以前の話です。

一体、どれくらいネフェルティティの像が、長旅に耐えられないほど、ヤバイ状態なのか。
それは、私にはわかりません。

もし、本当に脆い状態であれば、保存を優先するべきかもしれません。

ただし、エジプトがさまざまな返還要求運動を始めているということを考えて、何かの駆け引きがあるやもしれません。

ちなみに、アメリカなどは1974年(72年だったかも)以前に取得した外国の文化財に関しては、一切返還しないという態度です。キリがないから、というのも主な理由かもしれません。

■美術品・考古学遺品というのは「観光資源」

単純に、これを文化の高尚な問題で片付けたら大きな間違い。
大英博物館が一大観光スポットであること、これを考えると、何か遺物がある、ということは、それだけ観光客を惹きつける材料があるということです。民族の誇りや文化のアイデンティティだけでなく、純粋に商業価値の意味だって、ちゃんとあるんです。


■そしてネフェルティティ

ネフェルティティはアケナテン王の王妃で、長らく一夫一婦制。浮き彫りなどでも、ラブラブっぷりが描かれています。娘を何人かもうけましたが、ナゼだか晩年のアケナテン王は、嫁ネフェルティティを退けて、実の娘アンケセパーテンと結婚します。

実の娘!

古代エジプトでは、ない、という話ではないですが、それにしても、ちょっとヘンはヘン。

娘に奪われちゃった美人の王妃。どんな気持ちでスゴしたのやら・・・
彼女はアケナテン死後、ツタンカーメン王の時代まで生きています。そして、このツタンカーメンの嫁が、さっきの父親と結婚させられちゃったアンケセパーテン(アンケセナーメン)なんです。

きっと、こんな複雑な時代を生きた王妃だから、3000年後のこんな争いだって「それくらい、たいしたことない」って言いそうだなぁと思いました。

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登録日:2007年 05月 18日 21:53:27

先生、ピカソはどこがスゴイんですか?

ピカソ作「アヴィニヨンの娘たち」100周年、特別展示会が開催 - 米国

ピカソ作「アヴィニョンの娘たち」、100周年を記念して特別展示会を開催 - 米国

【ニューヨーク 10日 AFP】現代美術の代表的絵画とされるパブロ・ピカソ(Pablo Picasso)作『アヴィニョンの娘たち(Demoiselles d’Avignon)』の誕生100周年を記念して、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で特別展示会「Picasso’s Demoiselle d’Avignon at 100」が開かれている。
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(c)AFP PHOTO/Stan HONDA

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ピカソの超有名な作品。


美術史にはぜったい出てくるけど・・・
これが「大事な作品なんです!」っていう説明だけで
一体どれだけの人が納得するんでしょう?

アァソウナンデスカ・・・

としか思えないのが、本音じゃないのかと。
「そうか」と思いつつも、でも、ちょっぴり分からないかも・・・
そういう世界ナノカナみたいな。

ワタシが美術史の勉強を、”ちゃんと”し始めた頃
ピカソがスゴそうなのは、雰囲気で分かるけど
一体、どこがどう、すごいのか、知りたかった。

■「先生、ピカソはどうスゴイんですか?」

単刀直入かつ、謙虚な質問だったと自分でも思います。

先生は彫刻家で、そこそこは知られたような人で
かつ、子供っぽい感じのお茶目な人。
副学部長、という立場の責任感が出てない感じの人でした。

しいて言えば・・・
高田純次的?

「それはイイ質問だ!」

■美しいとか、そういう次元の話ではない

実は、そのとき先生を何を話したか、あまり覚えていません(笑)

でも、その後、いろいろ勉強したり見ていくうちで「あぁ、こんな感じだったかも」と思うことが
沢山あります。

キレイとか、キレイじゃないとか、アートというのは、そういう次元だけで論じるものじゃないんです。時代の空気、社会との関係・・・つまり

「メディア」

なんですね、そういう点で捉えながら続きを読んでください。

1.そもそも上手い絵とかの需要はもうない時代

タシカニ、ピカソは絵が上手です。いわゆる写真的な絵が本当に子供の頃から上手です。でも、そういう絵の需要はその当時、もうほとんどないんですね。今の時代もないでしょう?絵がうまい人は、大抵、画家じゃなくて、グラフィック・デザイナーになりますもの。

だから、ピカソは上手に描けるからといって、そんな絵を描いたって、別にどうということもなく、他にもそれなりに出来る人だってイッパイいるわけです。事実、ほとんどの人にとって、すごく絵が上手いのと、ものすごくものすごく絵が上手いのとの「差」は、あまり感じられないんじゃないでしょうか?

2.写真みたいな絵なんてもういらない・・・なら何?

いってみたら、グラフィック・・・平面的な、よりデザイン的な表現、への需要が高まっている時代なわけ。そして今の時代もそう。そういう時代の先駆けの1人がピカソ。カフェの壁に、写真みたいな油絵を飾るよりも、もっとデザイン的なアートを飾ったほうがオシャレでしょ?そういう時代なんです、そういう感覚を早い時代から持っていた人。

3.デザインが本当に必要な時代

考えてみれば、一点ものの時代じゃなくて、大量生産の時代。あんなキュビズムみたいな、幾何学的なデザインの可能性を広げていたら、単なる工業製品だって、オシャレになる可能性があるわけ。より、美味しい製品になる可能性があるわけです。

キュビズムはいろんな人に影響を及ぼして、今人気の椅子のデザインをした人だとか、シンプルだけどスタイリッシュなデザインを考案していった人や、建築なんかにも、どんどんインスパイアしていく、ドミノ倒しの最初の一突きみたいなものです。

だから、ちっとも写真みたいにキレイな絵じゃなくても、そういう重要性、という意味で「アヴィニョンの娘たち」みたいな絵は、シンボリックなレベルで大事な作品なんですね。

4.ピカソがしたこと全部がスゴイかどうかまで分からない

キュビズムのような概念を持ち込んだことは、本当にスゴイ。でもいろんな実験的なこともやったピカソ。その全部が、誰よりも他のどのアーティストよりもものすごく上、ということとは限らないかもしれません。でも、1人の人が、あんなに沢山のアートの表現方法を試し続けたという事実そのものが、むしろスゴイんじゃないかと思います。

人間って、成功したら、それにしがみついたりするでしょう?でも、ピカソってこだわらないで、どんどん新しいものを作ろうと突っ走り続けたわけで、そういう生き方のスタンスそのものも、面白い人だな!って思います。



モダン・アートというのは、ある種、絵画技法の技術、よりも「概念」とか「イメージ」とか「アイディア」を視覚化する、というプロセスに「腕」と「センス」を発揮する、そういうものじゃないかと感じるんですね。

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登録日:2007年 05月 13日 22:27:35

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プロフィール
秋田麻早子
秋田麻早子
■プロフィール:
Art Historian たぶん美術史学者、ときどき考古学。
アメリカの僻地の大学・大学院では西洋美術史を専攻。
でも論文を書いたのはアケメネス朝ペルシャ。
・・・美術史という素材の調理方法の可能性を模索しすぎで
エントロピーの法則な日々。

美術史・考古学を軸に、幅広く文化史的なモノゴトとか
特に、アートや学問の世界の面白いとこをご紹介しちゃいましょう。

MA in Art History 2002, University of Texas at Austin
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