2007年 05月 13日

先生、ピカソはどこがスゴイんですか?

ピカソ作「アヴィニヨンの娘たち」100周年、特別展示会が開催 - 米国

ピカソ作「アヴィニョンの娘たち」、100周年を記念して特別展示会を開催 - 米国

【ニューヨーク 10日 AFP】現代美術の代表的絵画とされるパブロ・ピカソ(Pablo Picasso)作『アヴィニョンの娘たち(Demoiselles d’Avignon)』の誕生100周年を記念して、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で特別展示会「Picasso’s Demoiselle d’Avignon at 100」が開かれている。
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(c)AFP PHOTO/Stan HONDA

AFPBB News


ピカソの超有名な作品。


美術史にはぜったい出てくるけど・・・
これが「大事な作品なんです!」っていう説明だけで
一体どれだけの人が納得するんでしょう?

アァソウナンデスカ・・・

としか思えないのが、本音じゃないのかと。
「そうか」と思いつつも、でも、ちょっぴり分からないかも・・・
そういう世界ナノカナみたいな。

ワタシが美術史の勉強を、”ちゃんと”し始めた頃
ピカソがスゴそうなのは、雰囲気で分かるけど
一体、どこがどう、すごいのか、知りたかった。

■「先生、ピカソはどうスゴイんですか?」

単刀直入かつ、謙虚な質問だったと自分でも思います。

先生は彫刻家で、そこそこは知られたような人で
かつ、子供っぽい感じのお茶目な人。
副学部長、という立場の責任感が出てない感じの人でした。

しいて言えば・・・
高田純次的?

「それはイイ質問だ!」

■美しいとか、そういう次元の話ではない

実は、そのとき先生を何を話したか、あまり覚えていません(笑)

でも、その後、いろいろ勉強したり見ていくうちで「あぁ、こんな感じだったかも」と思うことが
沢山あります。

キレイとか、キレイじゃないとか、アートというのは、そういう次元だけで論じるものじゃないんです。時代の空気、社会との関係・・・つまり

「メディア」

なんですね、そういう点で捉えながら続きを読んでください。

1.そもそも上手い絵とかの需要はもうない時代

タシカニ、ピカソは絵が上手です。いわゆる写真的な絵が本当に子供の頃から上手です。でも、そういう絵の需要はその当時、もうほとんどないんですね。今の時代もないでしょう?絵がうまい人は、大抵、画家じゃなくて、グラフィック・デザイナーになりますもの。

だから、ピカソは上手に描けるからといって、そんな絵を描いたって、別にどうということもなく、他にもそれなりに出来る人だってイッパイいるわけです。事実、ほとんどの人にとって、すごく絵が上手いのと、ものすごくものすごく絵が上手いのとの「差」は、あまり感じられないんじゃないでしょうか?

2.写真みたいな絵なんてもういらない・・・なら何?

いってみたら、グラフィック・・・平面的な、よりデザイン的な表現、への需要が高まっている時代なわけ。そして今の時代もそう。そういう時代の先駆けの1人がピカソ。カフェの壁に、写真みたいな油絵を飾るよりも、もっとデザイン的なアートを飾ったほうがオシャレでしょ?そういう時代なんです、そういう感覚を早い時代から持っていた人。

3.デザインが本当に必要な時代

考えてみれば、一点ものの時代じゃなくて、大量生産の時代。あんなキュビズムみたいな、幾何学的なデザインの可能性を広げていたら、単なる工業製品だって、オシャレになる可能性があるわけ。より、美味しい製品になる可能性があるわけです。

キュビズムはいろんな人に影響を及ぼして、今人気の椅子のデザインをした人だとか、シンプルだけどスタイリッシュなデザインを考案していった人や、建築なんかにも、どんどんインスパイアしていく、ドミノ倒しの最初の一突きみたいなものです。

だから、ちっとも写真みたいにキレイな絵じゃなくても、そういう重要性、という意味で「アヴィニョンの娘たち」みたいな絵は、シンボリックなレベルで大事な作品なんですね。

4.ピカソがしたこと全部がスゴイかどうかまで分からない

キュビズムのような概念を持ち込んだことは、本当にスゴイ。でもいろんな実験的なこともやったピカソ。その全部が、誰よりも他のどのアーティストよりもものすごく上、ということとは限らないかもしれません。でも、1人の人が、あんなに沢山のアートの表現方法を試し続けたという事実そのものが、むしろスゴイんじゃないかと思います。

人間って、成功したら、それにしがみついたりするでしょう?でも、ピカソってこだわらないで、どんどん新しいものを作ろうと突っ走り続けたわけで、そういう生き方のスタンスそのものも、面白い人だな!って思います。



モダン・アートというのは、ある種、絵画技法の技術、よりも「概念」とか「イメージ」とか「アイディア」を視覚化する、というプロセスに「腕」と「センス」を発揮する、そういうものじゃないかと感じるんですね。

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登録日:2007年 05月 13日 22:27:35

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プロフィール
秋田麻早子
秋田麻早子
■プロフィール:
Art Historian たぶん美術史学者、ときどき考古学。
アメリカの僻地の大学・大学院では西洋美術史を専攻。
でも論文を書いたのはアケメネス朝ペルシャ。
・・・美術史という素材の調理方法の可能性を模索しすぎで
エントロピーの法則な日々。

美術史・考古学を軸に、幅広く文化史的なモノゴトとか
特に、アートや学問の世界の面白いとこをご紹介しちゃいましょう。

MA in Art History 2002, University of Texas at Austin
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