美しくなくても芸術?
スペインの巨匠 フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス絵画展開催 - 米国
【ニューヨーク/米国 22日 AFP】21日、ニューヨーク(New York)のフリック・コレクション(Frick Collection)ではスペイン人の画家フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス(Francisco de Goya y Lucientas)(1746-1828)が描いた「Self-Portrait with Dr.Arrieta」が展示されている。
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(c)AFP/HO/The Minneapolis Institute of Arts
この絵を見て、きれいねぇ、ステキねぇ、と思う人はいるだろうか?
思えなければ、ムリに思う必要はない。
名画の条件は、必ずしもキレイさや美しさではなかったりするものだ。
アートだの芸術だの、と聞くと『美しい』のだろうと予測してしまう。
そういうものだろう、という思い込みにすぎない。
これは、『アリエッタ医師といる自画像』というミネアポリス美術学校所蔵の作品。
■ゴヤという画家
ゴヤの絵は、いわゆるそういう『芸術ってキレイだったり美しかったり』という
既成概念を打ち崩す例として、よく美術史の授業で用いられる。
彼は18世紀スペインを、まさに代表する画家であり、宮廷画家として活躍した。
彼の作品のうちの多くは、もちろん、我々が単純に『ああ、キレイだ』と納得がいくものが多くある。代表例は『裸のマハ』であろうし、『カルロス4世の家族』などロイヤル・ファミリーの肖像画だろう。
プラド美術館を訪れると、これらの『誰の目にも全く明らかに美しい』絵画たちがあなたを出迎える。
■美しくはないが、心を捉えるゴヤの作品たち
ゴヤの作品の中で、裸のマハに次いで有名と思われる作品が、『マドリッド、1808年5月3日』だろう。一斉に銃を構えるフランス兵の前に、白いシャツを着たスペイン人の男が両腕を上にかざし大きく広げている場面。彼の下には同胞の血まみれの死体が折り重なっている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Francisco_de_Goya_y_Lucientes_023.jpg
これは、1807年のナポレオンによるスペイン侵略以降続いた対フランス・ドイツ独立戦争をテーマに書いたものだ。ここには、決して、優雅な美しさなどない。
しかしそこには、現実をむき出しに写実的に描写する
事件を伝える『ジャーナリズム』に近い精神が、すんなりと見えてこないだろうか?
思い出して欲しい、今でこそ、我々にとってあたりまえとなった、ジャーナリズムには不可欠な『写真』という技術は当時、存在しなかったのだ。
写真が一般に利用されるまで、視覚に訴えるツールとしては主に絵画が機能していた。
もちろん、版画という、油絵よりは複製を作るのに向いた手段もあるのだが
(事実、ゴヤはたくさん版画も製作している)
油絵のカラーの魅力は強かっただろう。
■ありのままに・・・
18世紀の終わりから19世紀にかけては、美術の世界も過渡期にあった。
いい加減、豪華絢爛に為政者を美しく理想的に描くような絵にも
けばけばしい宗教画にも、疲れが見えてきた。
資本主義は広がり、絵をほしがる人という層は
何も大金持ちには限られない自体が到来しようとしていた。
画家たちも、可能性を模索する状態にあったといえる。
そんな中、ゴヤは、病床にある自分すらもむき出しで伝えようとする
リアリズムや写実的現実を伝える手段として
油絵を使う道を見出したといえるかもしれない。
どこかこの絵を見ていて、病床にあった正岡子規の文言を思い出すのは私だけだろうか。
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登録日:2006年 02月 22日 12:45:44
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- プロフィール
- 秋田麻早子
- ■プロフィール:
Art Historian たぶん美術史学者、ときどき考古学。
アメリカの僻地の大学・大学院では西洋美術史を専攻。
でも論文を書いたのはアケメネス朝ペルシャ。
・・・美術史という素材の調理方法の可能性を模索しすぎで
エントロピーの法則な日々。
美術史・考古学を軸に、幅広く文化史的なモノゴトとか
特に、アートや学問の世界の面白いとこをご紹介しちゃいましょう。
MA in Art History 2002, University of Texas at Austin
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