キューピッドの矢
キューピッドは「わいせつ」? 表紙に使用した書籍が出版禁止に
【7月20日 AFP】香港の検閲当局が、ローマ神話に登場するキューピッド(Cupid)の絵柄が印刷された書籍の表紙を「わいせつ」と判断し、出版禁止を決定。だが再検討の結果、決定を取り消した。同書は国内のブックフェアに出展されていた。(c)AFP/Samantha Sin
この絵は香港の当局にとっては、ワイセツに映ったんですね。
味わい深いことです。
さて、21世紀の日本に生きる私には、これくらいだと
どうも、最近の少女マンガの方がよっぽど過激に思えるんですが。
■さてこの絵は?
この絵はですね、18世紀の終わり頃にフランソワ・ジェラールが描いたものです。
タイトルは「プシュケとアモール」。(確かルーブル美術館)
アモールというのは、キューピッドのこと。
プシュケというのは、彼の恋人の名前です。
いわゆるギリシャ・ローマ神話の登場人物。
アモールというのは、愛の神様で、ギリシャでは「エロス」という名前です。
モチロン、意味は「愛」。
プシュケというのは「魂」という意味です。
カタカナだと分かりにくいんですが、これpsycheと書いて
サイコpsychoとかサイコロジーpsychologyとか、そういう単語の語源となった単語。
二人とも愛と魂の擬人化というか、擬神化?!された存在。
アモールは普段は人々を恋に陥れるために、金の矢と鉛の矢を駆使してるんですが
ある日、自分の手を傷つけてしまって、プシュケに恋してしまう。
■二人の間には・・・
プシュケとアモールは、お母さんのヴィーナスからものスゴイ反対を受けるのですが
しかもプシュケは壮絶なイジメにも遭うのですが、恋を成就させます。
二人の間に出来た娘は、ヘドネと言い「喜び」という意味です。
愛と魂が出会って、喜びが生まれるという、なんともおおらかなテーマ。
■18世紀の終わり頃
ナポレオンの絵なんか見てても、ズイブンとムカシ風というか
古典的な雰囲気でしょう?
そういうのが流行った時代なんです。
古典的な絵柄が流行るときは、モチーフ(題材)も古臭いものが選ばれます。
この絵が描かれた頃は、このようなギリシャ・ローマ神話がよく題材に使われていたんです。
18世紀末の人にとって、これがワイセツに映ったかどうか・・・
どうも私にはわからないのですが
もっと直截な、もっとキッパリといかがわしい風俗画も多くありました。
この程度なら、当時の人も、いちいち興奮するほどでもなかったでしょう。
だからこそ、香港って、もっとスゴそうなのに?!
一体どういう意図なんだろう、と逆にそれが面白かったりします。
■愛と肉欲
エロスという単語は、中世以降、アガペという単語と対比させて
精神的な愛に対する肉体的な愛をあらわす単語のように使われてきました。
でも、本来は生を謳歌するためのあらゆる欲にまつわる喜びを表すものだったんですね。
そういう意味でも・・・
偶然とはいえ、面白いかな・・・・と思ったのでした。
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登録日:2007年 07月 27日 01:12:30
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- プロフィール
- 秋田麻早子
- ■プロフィール:
Art Historian たぶん美術史学者、ときどき考古学。
アメリカの僻地の大学・大学院では西洋美術史を専攻。
でも論文を書いたのはアケメネス朝ペルシャ。
・・・美術史という素材の調理方法の可能性を模索しすぎで
エントロピーの法則な日々。
美術史・考古学を軸に、幅広く文化史的なモノゴトとか
特に、アートや学問の世界の面白いとこをご紹介しちゃいましょう。
MA in Art History 2002, University of Texas at Austin
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