北方ルネサンス美術専攻の彼女

オバマ次期米大統領で、ホワイトハウスのファッションにも「変革」の波?

【11月20日 AFP】「変革」というスローガンを掲げ、次期米大統領に当選したバラク・オバマ(Barack Obama)氏。
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(c)AFP/Sebastian Smith

AFPBB News


オバマ圧勝!すごい、想像してなかった。
アメリカが、黒人大統領を受け入れるって、本当に想像できなかった。

私がアメリカを離れてから、ずいぶん経ちます。
だから、あの頃から、かなり変わったのかもしれない
変わったところと、変わらないところと、きっとどちらもあると思う。
実感はないまま、私は日本からこの風景を眺めながら思い出すのが
大学院時代のクラスメイトだった黒人女性のことです。

■『9割8分が白人』という場所。

「あなたが居なかったら、どうだったろうと想像するとゾッとする」

大学院に入って一年近くが過ぎた頃のこと
同じアジア系の留学生の友達Sが言った。
その年の西洋美術史学科修士課程の新入生は、約20人。
私と彼女以外は、全員白人、ブロンド中心、しかも明らかに良家の子女。

私こそ、良かったと思う。

だって西洋美術史を専攻するって
もうすでに、相当に、西洋美術とか西洋文明にたいして
ただならぬ興味を抱いて、就職も考えずに進学できるような
そういうご身分の『アメリカ人』たちに囲まれている、ってこと。
ほかの学部では想像つかない・・・一種、特殊な空間なのだもの。
実際、特殊なグループだったらしい、と後になってほかの進歩的国際派アメリカ人の友人達から正直な意見を聞いた。

彼女と私はすぐに意気投合して
最初の学期は一緒のクラスを2つとった。
その一つ(ローマ皇帝の陵墓の象徴的意味についてというクラス)に
これから問題にする、アフリカ系アメリカ人の(ケンタッキー出身)女性がいた。
彼女は某アイヴィーリーグの名門大学で修士号を取得した博士課程の学生で
専攻は北方ルネサンス美術(!)。
私たちと同じ時期に、うちの大学に入り、最初の学期に同じクラスをとったわけ。

珍しい!
黒人の学生さん!
ほかの学部では沢山見かける。
だけど、学部生のときからこの大学に居た私、しかも美術専攻。
だけど、ダンスや音楽の学部にはいるけど、美術の学部で見かけることは・・・
まずない。アジア系だって少ない。9割以上が白人だった。

私も友人も最初の学期ということで踏ん張りを見せ
楽しく論文を書き上げ、楽しくクラスで発表!
(私のテーマは東ローマ副皇帝のガレリウス、その後紛失)。
そのアフリカ系の彼女は、とてもあの名門で修士を取ったとは思えないような
なんだかよく分からない発表だった・・・どうも腑に落ちない・・・どうしたんだろう?!何が?!

私たちは見事にAを頂き、1人だけBだった、彼女だ。
だけど、ここに差別なんか何もない。
明らかに、彼女の発表は、どうもダメだったし
そりゃあもう、何を調べたんだ?!というようなもので
Bというのは目一杯のおめこぼしの結果ともいえた・・・Fでも仕方ない。
担当の教授はまばゆいばかりの若きブロンド美女、パリ育ち、イギリス人。
だけど本当にどう考えても、クラスの中で差別的なことも何も起きなかった。
そりゃそうだ、ローマ皇帝の中にはアフリカ出身者もいた(黒人というわけではないけど)。
先生はヘレニズム時代を愛するようなコスモポリタンで、区別こそすれ
差別はしない。
事実、その後、先生の留守中の家の番をアジア人の友人が頼まれたことがあるほど。
彼女は黒人かもしれないけど、パーフェクトに英語はネイティブ。
私たちは外国人で黄色人種な上、英語だって訛りがある。
差別されるなら、私たちだってされたはずだ。
だから、確かに授業の中で人種的にアンフェアがあったわけじゃない。
彼女の成績が悪かったのは、純粋に「勉強不足」のため。
「あの大学で修士をとった人が、アレ?!変だよ、何かあったんだ」

私たちには、どうも最初の学期から彼女が落ち着きなく、苦しそうに見えてた。

冒頭の私のアジア系の友人Sが情報を仕入れてきた。
「彼女、大学を辞めたみたい・・・体調がよくなかったとか・・・だけどね
彼女、とっても孤独だったと思う。私には麻早子がいたからいいけど」

やっぱりね、テキサスだからか、なんだか、西洋美術史だからかなんだか
クラスが一緒でも、一緒に過ごすグループってあるでしょ?
そりゃ、ブロンドビューティたちは、それでつるむし、グループがあるわけ。
私にはSっていうバディがいたから、退屈もしないし、寂しくもなかった。
だけど、あの黒人の女性は・・・あの学科では唯一の黒人で
とてもじゃないけど、一緒にプライベートを過ごしたり勉強したり
っていう仲間が出来なかったと思う。しかも、最近まで北部にいたわけ。




私がアメリカを離れてから、もう7年が経った(あっと言う間!)ので
当時と今で事情がどれほど変わったのか実感がない。
しかも、私がいた「西洋美術史学科」という、いかにも西洋至上主義的
白人の巣窟のような学科では、状況も工学部だとか経営学部とは
ずいぶん違ったはずなので、当時の実感だって当時の世間の平均値とは
きっと相当にズレてたはずだ。
ちなみに、私の学生時代というのは、現大統領のブッシュがテキサス州知事だった頃の
まさにその、テキサスで、知事官舎?!なるものも、毎日眺めての登校。
まさか、あんな不人気で大統領に二選して、こんなことになるなんて・・・

ほかの学部と比べて、間違いなく華やかな化粧とファッションであるのは、私にだって分かった。
だって、もう1人のアジア人の友達だって、その国の最高学府の教授であり、
クーデターが起きたときには首相候補にもあがったような祖父に持つ学者一家の
お嬢様。

そう、西洋美術史は、どうやら・・・お嬢様が専攻するもんで
私なんぞのフツーな家庭のガラッパチな女子がやるもんじゃない。
事実苦労してる。
しかし、あの、グロリアだったかな、あの黒人女性があの学部での居場所を見つけることは
難しかっただろうなぁと思う。

そんな中、黒人大統領の誕生。
あの頃にくらべて、アメリカはそんなに変わったんだろうか。
しかもアメリカは州ごとに別の国みたいに違うことも事実だし。
グロリアはどんな思いで見ていて、今、どんなところで、何をしてるんだろう?
そう思ってしまう。

ちなみに、私の親友Sはそろそろ博士論文を書き上げて
アメリカで一級の美術史学者としての一歩を踏み出そうとしています。
最近私の実家まで遊びに来てくれて家族にも紹介したりしましたが
そんな友人と机を並べられた幸せを思い出すと・・・・ラッキーすぎて、両親に感謝!

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登録日:2008年 11月 21日 23:00:34

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プロフィール
秋田麻早子
■プロフィール:
アメリカはテキサスで西洋美術史を専攻。現在、博士課程で美術史・考古学なんかを面白がるコミュニケーションを鋭意研究中。
著書に『掘れ掘れ読本』(バジリコ 2007)。笑いのとれる考古学入門書を目指したもの。
連絡先:
mana_mana_chan@hotmail.com
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