グルジア情勢(第2報)

グルジア、EU和平案をほぼ全面的に受け入れ

【8月11日 AFP】グルジアからの分離独立を求める南オセチア(South Ossetia)自治州をめぐるグルジアとロシアの軍事衝突について、調停に乗り出した欧州連合(EU)が示した和平案をグルジア側が受け入れた。
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(c)AFP

AFPBB News


 第1報を書いてから約3日。想定外の出来事はないが、情勢は動き続けている。

・グルジア軍は南オセチアの「首都」ツヒンバリから撤退(事実上の敗走)。
・グルジア側は停戦を求め、調停をフランス、EUなどに要請。
・ロシア側は当面停戦には応じず、サーカシビリ大統領の退陣要求を鮮明化。
・ロシア軍、ゴリ侵攻の情報(日本時間12日未明)

 ロシアは昔のロシアではないから、恐らく南オセチア全域を回復した時点で、いったん進撃を停止する可能性が高いとみていた。南オセチアの端からゴリ経由で首都トビリシまでは車でせいぜい3時間ほどの距離だが、平野部に下ったゴリは完全なグルジア人の都市だ。その先の進撃には「正当性」が得られないとの判断なされるのではないかという理由だ。
 欧米露主要メディアは、サーカシュビリ大統領の主張として、ゴリを経由し首都トビリシと西部を結ぶ最重要幹線道路を、ロシア軍が支配下に置いたと報道。ゴリ侵攻などの情報をロシア側は否定しており、主張の真偽は不明だが、「報道が事実ならば」、幹線国道は完全に平野部に位置しており、バクーとトルコを結ぶBTCパイプラインの破壊企図や、ロシア軍の首都侵攻が現実味を帯びてくる。ゴリからトビリシは高速道が整備されており、150キロ弱の道のり。途中に山岳などはない。

 問題はグルジア側の出方にある。サーカシビリ大統領のパーソナリティからすれば、かりに停戦が発効しても南オセチアへの進軍は「国土の一体性保持のための正当な行為」だと主張し続け、再進攻の可能性も否定できない。さらに国内的にはますます反露姿勢を鮮明にすることでナショナリズムを煽り、欧米世論の支持に訴えると想定される。
 だとすれば停戦は極めてもろいものにならざるを得ない。どうしても地図は平面で見てしまいがちだが、カフカスの山岳地帯の現況をみれば、もともと「グルジア民族によるグルジア国家」「国土の一体性」なんてものは絵物語でしかない。たとえばロシア側でも、ソチはロシア人の都市だが、車で20分ほど山側に入るとアルメニア人の村が現れ、さらに奥に入るとロシア人が作ったスキー場、脇道にそれるとアブハジア、そんな具合だ。「南オセチア」といっても、要は川沿いの谷1つ分の地域にすぎず、その山間の渓谷沿いに、「オセチア人の村」「グルジア人の集落」が散在している(おそらく他民族も住んでいるだろう)状況なのだ。

 グルジア現政権による今回の進攻が「民族浄化」にあたるとロシア側は非難している。もし2000人以上が死亡したというロシア側の主張が当たっていれば、それに類する行為が存在した可能性も否定できない。つまりグルジアによる進攻が、南オセチアへのロシア軍の駐留維持の「お墨付き」を与えてしまった形になっている。ロシアははそれを理由に撤兵を拒否するだろうから、グルジア現政権が続く限り、オセチアはグルジアの手に戻ることはなくなった。アブハジアに紛争がエスカレートする兆候もあるが、そうなればグルジアはさらに多くを失うことになる。「危険な賭け」に失敗したのだ。
 さらに言えば、米国などの援助や外資導入にもかかわらず、グルジアの経済状況はいぜん惨憺たるものだ。失業率は公称13.6%(日本外務省HPによる)とされるが、街を歩けば平日の所在なげな若者の姿を目にすることが多い。若年層の失業率は恐らく公称の2-3倍に達するとみてよいだろう。流入してきた外資の恩恵を得たものと、そうでないものの間での貧富の差も急速に拡大している。
 政権の反露政策は国内の政治、経済不安の目をそらす意図があると考えられるが、それがこのような形で国家の危機を招いたとすれば、何らかの政策転換を行うしかない。少なくともロシアは今回、隣接国でのあからさまな「反露政策」は許容できない、との意思を明確に示してもいる。バルト三国も隣接国でありながら反露政策を採っているとの指摘もありうるが、もともと独立していた近代国家を第2次大戦時にソ連が軍事占領したバルト三国と、ソ連成立の際に近代国家を初めて構成したグルジアを同一視するのは無理だろう。

 二国間関係を見る際に、どうしても「判官びいき」や、イデオロギーに基づいて「どちらが正しい」という正邪善悪の発想を持ち込みたい誘惑にかられる。しかし、隣人を選ぶことはできないし、ロシアとグルジアには切っても切り離せない経済的文化的紐帯もある。島国の日本と違い民族のるつぼになっているカフカス地域で、民族自決を掲げてすべての民族を「再配置」することも、どだい無理な相談だ。
 「民族自決」、「国家の一体性」だと、どれだけナショナリズムを煽ったところで地域を「純化」することはできない。旧ユーゴスラビアの悲劇を繰り返し、血がさらに流れるだけである。
 現実を改善するには何が可能なのか。少なくともカフカスでは「妥協」や「宥和」、「共存」に根ざした解決しかありえない。そこから方策を探っていかない限り、停戦協定の文書を何度作ったところで、それは「紙切れ」に化すだけだろう。
 ロシア軍はおそらく一度は進撃を止めると期待される。永続的な平和回復には、それが最後のチャンスになる。

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登録日:2008年 08月 12日 02:44:59

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