小説「アジアの隼」上、黒木亮

どこまで実話で(少なくとも時期や企業の性質、国の状況は正確だと思うんですよ、だって小説としてもそこは正しいほうが面白いし)(そして実際の政治的人物も少ないながら出てきます)、どこからが小説的部分なのか、正直調べてもわからん部分はとことんわからないと思うので、まあ話半分くらいに聞いておくのが無難かと思うんですが。
しかし雰囲気だけでも充分独特で非常に面白い(>密林Com)。
“アジア通貨危機”を扱った話というので期待して読み始めて、もう少しシステマティックな攻防戦が見られるのかと思ったらそうは問屋が下ろさない。しかしそれは、要するに発展途上の市場だということにすぎないんでしょう。アジア・ブームの時代。
イギリスのスマートな銀行屋が眉をひそめ。
アメリカ出、アジア系交じりの客だろうが仲間だろうが噛み付く「隼」(ペレグリン)が参入し、出足の遅い日本の銀行がおっとり刀で駆けつけ、すっかりとたかり体質の出来た東南アジアの国々は、商談に相応しい知識を身につけようともしてくれません。
そして銀行家たちは現地の女を鷹揚に膝に抱き、賄賂を要求されるままにばら撒きます。
ベトナム出身で己も地獄を見た青年は、ほとんど正体不明の風情で、役人へと渡される賄賂を自分の懐にもねじ込みます(正規教育受けてますが)。

なにが読んでいて楽しいのかというと、それがどこまでも「致し方ない」ということが伝ってくるからでしょうか、地に足を付けた素朴な生き方でも、洗練されたビジネスでもない、多分もっとも見苦しく泥臭い状況になっているのですが。
上巻は曲がりなりにも資本が競うように次々へと国に流れ込むところまで。
さて、下巻で何人が逃げ延び、何人が諸共に倒れるのか、楽しみです、正直。

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登録日:2007年 08月 02日 23:37:34

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