酒と女と写真機と「カチータという娘-1-」

キューバでのこと。ハバナで半年間生活した。最近のハバナはまったく知らないがボクが住んでいた頃も、アメリカの経済封鎖(海上封鎖)で生活物資が極端に不足していた。それでもキューバ人たちは元気で陽気で歌い、踊りそして呑んでいた。

 キューバの代表的な酒はラム酒。サトウキビから作る。この酒は結構強い。ラムをコカコーラで割ると「Cuba libreクーバ・リブレ」という名前がつく。「自由キューバ」という意味。アメリカ資本の代表のようなコカコーラで割るところが面白い。

 「カタヤマ。クーバ・リブレはコカコーラで割らなくてはいけない。残念ながら我国にコカコーラはない。だから私はクーバ・リブレをお前に造ってやれない」
当時よく通ったハバナの海のそばにあるバーカウンターで黒人を父に、スペイン人の母を持つというバーテンダーのルイスが嘆いた。
「日本にはコカコーラはあるのか」
「もちろん」
「じゃ、ハバナクラブというラムを買って帰って、呑んでみることだ。自由ハバナを」

 カウンターの隅に一人の若い女がいた。
「ルイス、彼は日本人?」
バーテンに問う。
「ああ、日本人だ」とルイス。
彼女がカウンターの隅からにじり寄ってきた。
「こんばんは、日本人」
「カタヤマという名前がある」とボク。
「私はカチータ。ハバナの町で生まれたの」
大きな瞳をくるくる回してカチータは手に持ったグラスを傾ける。
「それはなに?」
「MAI-TAI」
マイタイはポリネシア語で「最高」という意味を持つとか。

「ねえ。カタヤマ。グロックって知ってる?」
突然、カチータが聞いてきた。
「グロック?酒の名前かな?」
「そう、ラムをアツーイお湯で割るの。ね!ルイス」
「ああ、18世紀に出来たようだ。英海軍の提督がビールの代わりに水兵にラムを飲ませたんだとさ。ところが酔っ払う奴が現れたんで、水で割って飲ませた。水割りが薄いので水兵たちは不満たらたら。提督が着ていたマント、グロクラムをもじってその酒をグロックと呼んだんだ。このカリブ海でね」
ルイスは目を細めて窓から見える海をみた。
つられて、カチータもボクも眺めた。
「あー。いい色。海へ行こう」
カチータが突然叫びカウンターから滑り降りボクの手を引いた。

ルイスが軽くウインクをみせる。(続く)

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登録日:2007年 09月 21日 13:09:42

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