酒と女と写真機と「カチータという娘 ー2ー」

 カチータが走る。ボクも負けずに走る(まだ若かった)。
夕日に輝く海に向かって・・。
こう書くとまるで歌の世界。ほら、あったでしょ。何とかの若大将、そう、加山雄三。

 ハバナの海岸は長く続いている。市民の憩いの場所である。その海岸線をコンクリートのえん堤がずっと続いている。その上を歩く。カリブ海の風が頬に心地よい。
ハバナっ子は散歩が好きだ。ここへ来て思い思いにすごす。

 カチータはえん堤に腰を降ろした。褐色の肌の色が沈んでゆく太陽に反射して金色に輝く。彼女は長い足をぶらぶらさせる。(内心かっこいい!と思った)

「仕事は?」
「カメラマン」
「だからカメラ持ってるんだ。上手いの」
「上手いかなあ、よくわからない」
「フーン」
たわいのない会話が続く。日が沈んだ。
赤い空が紫色に変ってゆく。
散歩する人々も三々五々去って行くようだ。
「ねえ。今夜の予定は?」とカチータ。
「何もない」
「じゃあ、食事しようよ。ルイの店で」
こうしてボクはハバナ娘にナ・ン・パされた?!
「何時?」とボク。
「10時」
「OK」
今度はゆっくりと海岸を散歩しながら帰った。夕日は沈んだ。
10時まで時間はたっぷりある。

 シャワーを宿で浴びてからルイスの店に行った。
彼は変わらない表情でカウンターの向こうに立っている。
無言でテーブルを指差す。
 すごい美人が一人座っている。浅黒い顔に瞳だけをキラキラと輝かせて。
「誰?」
「カチータ」
「ウソ!?」

バンドが入り、食事をしながらおしゃべりをする。
マラカスとコンガの小気味いいリズム。たわいのない話。
カチータはモチロン、客たちも自然に体をリズミカルに動かす。
  速いテンポ。
 テーブルのキャンドルが揺れる。
「ねえ。踊ろう」
「とても無理」
「呑むだけ?」
カチータはボクをおいて踊りに行く。
逆光のライトにシルエットがもだえる。

一人取り残されたボクにウエイターが呼んだ。
「ルイが」
カウンターを振り向く。
ルイスが大きな眼でボクを呼ぶ。
「こっち」
ほのかなキャンドルの灯りの中でルイスはグラスを滑らせる。
「ダイキリ」
いつの間にかカチータがボクの隣りに滑り込む。
汗が額に輝いている。
 
ダイキリとカチータ。
ハバナの夜は更けて行く。(この項・完)

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登録日:2007年 09月 23日 15:40:11

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