酒と女と写真機と「Love is Blue 2 」

軽いハミングが聞こえてくる。掠れたハミング。
「恋は水色・・・」
女がつぶやく。
「沖縄の恋は水色?」 とボク。
「あら、そんなんじゃないわよ」
「じゃ、何色」
「そうね、真っ赤な恋」
「ハイビスカスみたいな?」
「そう。ハイビスカスのような真っ赤な恋」

たわいない酒の上の話だ。女が「ハイビスカスのような真っ赤な恋」というとき、暗いバーの光の中でもきらりと光る眼を僕に向けた・・ような気がした。

黒人の米兵が女を二人連れて入ってきた。日本人の女。
ジュークボックスの前にいる男が振り向く。
一人の女がジュークボックスの男の腰に腕を回す。
4人の客はボクの横に立ち、ビールを頼んだ。
「4ドルね」
くしゃくしゃの1ドル紙幣を広げ、ひとりの女が払う。
「もうすぐ日本のお金で払うのね」
「そうね。この人、ドルで払うのかって聞くのよ」
「あら、まだ日本じゃないわよ」
二人の米兵と二人の女がジュークボックスに向かう。

「そうね。黄色かもしれない・・・」
カウンターの向こうで女が言う。
「恋は黄色・・」

「何しに来たの?観光には見えないけど」
「あなたのような人に話を聞きに」
「何の話?」
「沖縄返還」
「・・・」
「あなたの生活にはどんな変化があるかな?」
「・・・」
沈黙。
「ねえ、お客さん。返還って言ったよね。冗談じゃないよ。沖縄はモノじゃないんだから。琉球って国があったんだ。それを琉球処分だなんて勝手に日本に組み入れて、勝手に戦争始めて、挙句に沖縄が唯一の地上戦、何万人もの人が殺された。米軍にじゃないよ。日本兵に殺されたようなものよ。それを何よ。返還?!勝手なこと言わないでよ。返すなら琉球王国に帰してよ」
一気にここまで話して女は突然沈黙した。

「馬鹿なことを言ったわよね。忘れて。・・・。私も飲むわ」
カウンターの向こうから女がグラス片手にこちら側に来た。

ビールを飲んでいた米兵たちの笑い声が聞こえてくる。

「よし、飲もう」
アーリータイムズのボトルをつかんでグラスに注ぐ。
「やはり黄色い色。私の恋は」
「ジェラシー?」
「・・・」
「振られたのか」
「ハワイへ行ったのよ」
「仕事?」
「ええ。沖縄が日本になるのが耐えられないって」
「・・・」
「勝手な男・・・」

その夜、ボクは明け方近くまで女のバーで飲んだくれた。
身を焦がす黄色い恋。
その夜、女は黄色い恋に身を焦がした。

女の名前?
聞くのを忘れた。(この稿・完)

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登録日:2007年 09月 26日 15:12:45

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