酒と女と写真機と 「容易ならざる事態 上」

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 香港がまだイギリスの植民地だった頃の話。ボクは香港側の羅湖駅から徒歩で中国側の深圳駅へ鉄橋を徒歩で渡ったことがある。もちろん日本と中国は国交が樹立していなかった頃の話である。その中国でボクの一生を左右するといっても言い過ぎではないとんでもない経験をした。(写真:中国で使っていたNikonFと同型機)

上海に和平飯店というホテルがある。そのホテルは1930年代、国際都市として発展した上海のシンボル的ホテルだったようだ。あろうことかボクは上海でこんなホテルに泊まっていた。
そのホテルに滞在していたある朝のこと事件は起こった。
通訳の女性が朝食を採っているボクの前に表われた。そのこと自体は変わったことではない。中国へ来てから毎朝のことである。しかし、その朝の彼女の表情がいつもと違うった。

「早く来て」
挨拶もそこそこに彼女は僕の手を引っ張ってホテルの玄関に連れて行く。
「!?何が起こった?」
「あれをみて」
彼女が指差す方向に眼を移すと「和平飯店」と漢字で書かれたホテルのプレートに上に紙が貼ってあり、その紙には黒々と「革命飯店」とかかれてあった。

「何が起こった?」
「・・・私にもわからない」
ホテルのフロントで訪ねても首を振るだけ。
「様子がわかるまでホテルから出ないでください」
フロントの男性と通訳の彼女は異口同音にこういう。何か容易ならざる事態の陥ったようだ。

 通訳の女性(名前は書かない。仮にC嬢としておく)Cさんはそれだけ言うと慌ててホテルを出て行った。
「絶対ホテルにいてくださいよ。貴方は何をするかわからない人だから」
彼女はとてもチャーミングな上海娘である。日本語は父に習い、その後、大学の日本語学科で磨きをかけたという。
面白いことに、C嬢の日本語は関西なまりである。(ここでは出来るだけ関西なまりを出さないようにするつもりだ)

C嬢が急いでホテルを出て行ってからボクはレストランへ戻り、朝食の続きを採りながら考えた。
「容易ならざる事態」は大好きである。
「出ないでください」と言われて「はい」とホテルでじっとしているほど、ボクは大人しくなかった。
食後、部屋に戻った。もちろんカメラを取りに。

ボクは部屋で叫んだ。
「Oh! 容易ならざる事態!」 (続く)

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登録日:2007年 10月 06日 13:03:23

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