酒と女と写真機と 「ローライの女」:片山通夫

写真機の話少し・・・。ここに挙げた写真はローライフレックス2.8Fという写真機である。ごらんのように懐かしい二眼レフというタイプ。フィルム画面は6cm×6cmという大きなサイズだ。フィルムサイズが大きいということは、大きく引き伸ばすことが出来るというわけ。畳2枚くらいのサイズ(180cm×180cm)に伸ばしても問題ない。
この写真機を手に入れたのは10年以上前だと記憶する。どうしても大判の写真機が必要だった。あるビルのロビーに飾る写真を撮る必要があって買った。
さて、どんな機種にするか悩んだ。何しろ大判のカメラといっても相当な種類がある。値段も高い。
例によって中古の写真機屋へ。
「それだったら、お勧めはこれ」
「えー!二眼レフ!!」
「これはよく写るよ」
「そうか、写るか」
何しろ古いので光線漏れが心配だった。
「大丈夫。試し撮りして、その後で良い」
試し撮りに目的の被写体を撮って、「これあかん」といって返すか・・・。
「試し撮りは、こ・こ・で・し・て・ヤ」
バレバレ。
ピントグラスが暗いというと新しいグラスに交換するという。
この写真機、1960年生まれ・・。ボクより若い。
結局・・・・買ってしまった。
おかげで、仕事は出来た。立派に。
この写真機を買ってまもなく、ボクは行きつけのバーにいった。
「懐かしいモノ、持ってますね」
「これってカメラ?」
「なんだ。知らないのか。二眼レフって言うんだよ」
知ったかぶりが一席ぶつ。
小さなバーなので客同士の雰囲気も和気あいあい。
互いに勝手なことを言い合っている。
折から雨が降ってきた。かなりの雨。
バーのドアが開いてぬれねずみの女性が飛び込んできた。
「大変な雨。一寸雨宿りさせてくださいね」
女性は若く美人だった。
「ドーゾ。大変でしたね」バーテンが応える。
「美人だったらすぐそれだ」
客たちが笑う。
「せっかくだから一杯くださいな。スコッチをロックで」
「オールドパーでいいですか。ロックですね」
のっけからウヰスキーをロックで飲む女。
ボクはこの女性に興味を覚えた。美人だし。
「あら、このカメラ!」
「ボクの写真機」
「すごい!。私も好きなんです。レトロな写真機」
何が幸いかわからないのが人生。
ボクは「レトロなローライ」に感謝したことは言うまでもない。
でも、ボクのことを好きだ言ったわけではない。
わかってるよ!
「なつかしい写真機は珍しい事件を起こすもんだ」
バーテンが憎まれ口を叩く。
「私も持っているのですよ。ローライ」
大き目のハンドバックからローライフレックス2.8Fが出てきた。
全くボクのローライと同じタイプ。
「貴方は写真家ですか」
先客の一人が彼女に聞く。その席にいたみんなの疑問。
「イエイエ、趣味で・・・」
彼女が首を振る。
「ローライに乾杯」
女性はロックグラスを傾けた。
ただそれだけの話。(この稿了)
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登録日:2007年 10月 11日 14:59:59
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