「安住の地となるか・仁川」その2
実は、筆者がソウルに来た目的のひとつが彼らにインタビューする事だった。しかしこう手放しで再会を喜んでくれると、若干後ろめたい気持ちが筆者に出てくるのである。
「実は話を聞きに・・・」なんて切り出せないような歓待の連続。
ビデオ:チェさん夫妻の部屋に飾られた家族写真
ちょうど昼時。
「さあ、食べなさい」
団地の食卓の上には、サハリンで食べた韓国(朝鮮?)料理が並んでいる。
チェさんは「ウオッカがないのだが・・・」といいながら、韓国でもっともポピュラーな焼酎を出してくれた。
「しまった!ウオッカを買ってくるのだった」と後悔したが後の祭り。
以下は食事をしながらの話。
「どうして永住帰国する気になったのか?」
「やはり、父祖の地だから」
「もうそろそろ半年になるけど、ここの生活は?」
「物価が高い。というのは仕事がないから収入は韓国政府からの支援金だけ」
「安山へ帰国した人たちはそんなに苦しいような事は言っていなかったが」
「安山とは違うよ。例えば一番大きな違いは、ここでは家賃を払わなければならない。安山では無料だけど」
「家賃?どうしてそんなに条件が違うのだろ?」
「わからない。けど、私たちが帰国するときにはそんな条件だった」
安山市はここと同じソウル郊外の町である。日本政府が拠出した資金で、韓国政府は500世帯・1000人のアパートを建てた。ここ、仁川市では、一般の公団アパートを政府が借り上げて、サハリンからの永住帰国者に支給している。いずれも居住年限は30年。30年経つと政府に返さなければならない。生活保護のように韓国政府は帰国者一人当たり35000円程度の生活資金を支給している。これで、家賃、光熱費、生活のための費用を賄うのだ。
「仁川市は、生活のケアはしてくれている?」
安山市では、市の職員と看護師などが常駐して、帰国者の生活のケアをしている。ここは一般の韓国人と同じ棟に住むため、一寸心配になって聞いてみた。
「市の職員はいます」
話が一寸途切れると、
「さあ、飲みなさい」
「もっと、食べなさい」
こういう言葉も筆者には懐かしい。筆者が前回サハリンへ行ったのは昨年の8月。そのときもチェさんにはとても世話になった。夜、彼らの自宅に呼ばれて食事をしたときも、こんな言葉の連続だった。
サハリン残留朝鮮人たちの日本語は実に達者だ。とても60年もの前に覚えた言葉とは思えない。ただ、筆者が最初に面食らったのは、チェさんが連発するように「命令口調」なのである。ある元炭鉱夫だったという人は筆者に会うたび「オイ、タバコくれ」という。本人たちは決して「命令的」に話しているつもりはないようだ。鮭の事を北海道の言葉でアキアジという。サハリンでもアキアジと表現する。同じ調子で「食べなさい」というのだ。
(明後日・2月16日に続く)
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登録日:2008年 02月 13日 12:48:57
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