アスタナ強し!!

ブルセギン ジロ・デ・イタリア第10ステージ個人TTを制す

【5月21日 AFP】第91回ジロ・デ・イタリア(2008 Giro d'Italia)第10ステージ・個人タイムトライアル(ペザーロからウルビーノ、39.4キロメートル)。
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AFPBB News


 ジロ・デ・イタリア(2008 Giro d'Italia)第10ステージはペザーロからウルビーノまでも39.4kmの個人タイムトライアル。

 前半は平坦、後半は登りという大変難しいコースをランプレ(Lampre)のマルツィオ・ブルセギン(Marzio Bruseghin、イタリア)が56分41秒を記録してステージ優勝を果たした。

 この日の個人TTは途中から部分的に降り出した気まぐれな雨が勝敗を分ける結果になった。

 特にラスト400mは急激な登りに加え、路面は石畳。ただでさえ厳しい路面が終盤は雨で光っていた。

 総合成績の下位の選手から順にスタートする個人TT。ブルセギンがゴールすした時はゴール前の石畳はまだ乾いていた。

 しかし、総合12位のザヴォルデッリ(LPR)がゴールする頃になると路面が徐々に光り始めるほどの雨量になっていた。

 この日最も大きなハンデを背負わせれたのはサヴォルデッリだろう。滑る路面で大きくギヤを落としたためにチェーンが外れるというアクシデントに見舞われてしまったのだ。

 さらに後にスタートしたコンタドールは第3計測でトップタイムを記録しなからも、最後の登りで思ったようにトラクションがかけられず、タイムが伸びない。

 結局、ブルセギンに8秒及ばずの2位に甘んじた。昨年のツール・ド・フランスでも山岳ステージの勝負所でパンクし、マビックカーからタイヤを受け取るというアクシデントに見舞われたコンタドールだが、最後にはマイヨジョーヌがレースを去るという最大の幸運に恵まれた。

 コンタドールは第8ステージで落車し、左腕を亀裂骨折していることが休養日に発覚。ヨハン・ブリュイネールが率いるチームでは有力選手の落車は極めて少ないことは先にも書いた。

 ところが今年のアスタナの前半戦を見る限りでは、個々の選手がバラバラに位置しているのが気にはなっていた。急遽参戦で明確なエースが決まっていないためなのと、選手の調子が分からないために自由に走らせていたのだと思うが、その結果がチームメイト一人をリタイヤさせるほどの大きな落車に繋がってしまったようだ。

 私もコンタドール骨折のニュースを目にして、正直この日のステージは諦めていた。メディアがずっとクレーデンを追いかけ、コンタドールがほとんど画面に登場しなかったことからも、メディア全体がそう考えていたことは間違いはない。

 コンタドールが最後の計測ポイントをトップで通過したという報を聞いてもメディアは何もできなかった。コンタドールにバイクカメラが付いていなかったのだ。

 ゴール前の定点カメラがコンタドールを捕らえた時にはブルセギンを上回るタイムだったが、雨に光る石畳がコンタドールから大きなタイムを奪ってしまった。ブルセギンとのタイム差はわずかに8秒。

 ゴール後コンタドールはすぐに振り返り、時計を見上げていた。その表情には悔しさはなかったように私には見えた。まあこんなものか?という表情ではなかったかと推測している。

 リスク覚悟で攻めるステージでもないのだから、ステージ優勝よりも総合争いをする選手たちとのタイム差の方が大切だと言うことを彼は良く知っているはずである。当然、ディルーカやリッコの中間タイムは無線で知らされていたはずだから、あの仕草はあくまでも自分の今の力でどのくらい走れたかの確認だったと私は推測している。

 この日のステージでディルーカとリッコが予想外に大きく遅れてしまった。こうしたことも考えて20秒のボーナスタイムを取りに云ったと話していたリッコだが、このTTでの2分近い遅れは痛かったはずだ。

 予想通りアスタナはTTで力を見せ付ける形となった。コンタドールが2位、クレーデンが3位、ライプハイマーが9位、グセフが17位に入り、チーム総合でも2位以下に6分以上の差をつけてトップの座を奪い返した。

 個人総合でもコンタドールが8位から4位へと大きく順位を上げた。クレーデンも6位へとジャンプアップした。それに対し総合優勝を狙うディルーカはコンタドールから1分30秒以上離された10位へと後退してしまった。

 前半でステージ2勝を挙げ気炎を上げていたリッコもディルーカを逆転したものの、コンタドールからは1分33秒という差を付けられてしまった。

 この日の注目選手がもうひとりいた。ジルベルト・シモーニだ。決してTTが得意とはいえないシモーニが、ディルーカやリッコに1分以上の差を付けてゴールしたのだ。

 今年からコンチネンタルプロチームに移籍したシモーニはディルーカ同様ここだけを狙って来ている。苦手なTTでディルーカやリッコを上回ったことを見ても調子が悪いはずもない。

 今年で36歳のシモーニにとってはジロ・デ・イタリアを狙えるのも今年が最後かもしれない。その位この日のTTには気迫が込められていた。年齢的に土曜から始まる山岳でどこまで走れるかがポイントになるだろうが、楽しみな選手が現われたことはファンにとってはこの上ない喜びである。

 しかし、今回総合争いをするだろう選手たちのほとんどが、ツール・ド・フランスには出場でいきないというのだから残念でならない。

 何度も書いてきたが、アスタナの参戦を拒否した段階で、私はジロ・デ・イタリアもツール・ド・フランスも見ないことに決めていた。それが主催者たちへの個人としてできる唯一の抗議だと思ったからだ。

 幸いジロ・デ・イタリアは方針転換で急遽アスタナを招聘したが、コンタドールが自ら口にしているようにツール・ド・フランスへの不参加がすでに決まっている。それも主催者が参加を拒否したという理由でである。

 今回の個人TTを見てもアスタナの強さは際立っている。しかし、顔ぶれは昨年と同じではない。コンタドール・ライプハイマー・グセフといった、旧ディスカバリー(USポスタル)から移籍した選手が活躍しているのだ。

 GMにヨハン・ブリュイネールを向かえアスタとナディスカバリーの融合を見事に成し遂げた今、ドーピング問題というよりもアスタナというチームが強くなり過ぎたために、このチームが出場すれば他のチームがかすんでしまうという考え方が主催者の中になかったのだろうか?

 ジロ・デ・イタリアの主催者にしてもこれだけハンデを与えれば地元のディルーカやリッコ・シモーニで何とか勝てるという判断があったのかもしれない。

 しかし、力のある選手がその持てる力を発揮して勝つ。それがスポーツの醍醐味ではないか?最強の選手たちが顔を揃えてこそグランツールのはずである。

 ところが近年、ランス・アームストロングがツール・ド・フランスだけを狙うようになり、ディルーカのようにジロ・デ・イタリアだけにしか興味を示さない有力選手が現われ始めたことにより、グランツールの意味合いが変り始めている。

 イタリア人がジロ・デ・イタリアを、フランス人がツール・ド・フランスを、スペイン人がヴエルタ・エスパーニャを勝ちたい気持ちは良く分かる。

 しかし、グランツールはメディアを通して世界中に配信される大イベントなのだから、地元意識が強すぎるとその魅力が半減していまう。

 現に近年ではジロ・デ・イタリアはイタリア人が、ヴエルタではスペイン人が優勝することが定番になりつつある。鶏と卵のような話しになるが、唯一自国の選手の優勝がないのはツール・ド・フランスだけになってしまった。

 その結果ますますメディアはツール・ド・フランスに注目するようになり、ジロ・デ・イタリアとヴエルタで盛り上がっているのは地元だけという結果を招き始めている。

 そうした意味ではUCIが考えたプロツアー制度には間違いがなかったはずだ。強い選手はグランツールには全て顔を揃えるべきだと私は考えている。そうでなければグランツールの意味が半減してしまう。

 理由は簡単だ、自転車ロードレースが世界中で放映されるのはグランツールだけだからだ。日本ではCATVや衛星放送の普及でそれ以外の自転車ロードレースをTV観戦できるようになったが、まだまだそうできない国の方が多いのだ。

 その3大ツールでしか選手の顔を見ることができない国の方が圧倒的に多いはずである。だからせめてグランツールだけは有力選手が全て顔を揃えるようになって欲しいと願っているのはそうした意味からである。

 そして、私が今年のジロ・デ・イタリアに注目しているのは、昨年のグランツールの覇者が全て顔を揃える唯一のレースだからである。これが本来のグランツールのあり方のはずである。

 そう考えると、ジロ・デ・イタリアの主催者が急遽アスタナの参戦を認めた理由が見えてくるような気がしている。

 ジロ・デ・イタリアに歩調を合わせる形でアスタナの参加拒否を発表したツール・ド・フランスだが、主催者は今ごろ臍をかんで悔しがっているに違いない。

 ツール・ド・フランスの主催者は何とかリッコにでも勝ってもらって、ツール・ド・フランスに花を添えたいと願っていることだろう。

 アスタナの不参加でツール・ド・フランスに勝てる見込みが出てきたと考えたプロチームはほとんどの有力選手をジロ・デ・イタリアのスタートロスとから外した。

 CSCはサストレとシュレク兄弟をロットはエヴァンスとポポヴィチをツール・ド・フランスの為に温存してきた。

 ランプレも珍しくクネゴにジロ・デ・イタリアをパスさせ、ツール・ド・フランスを狙わせる腹積もりだろう。

 ラボバンクもメンショフの姿はあるが、ラボバンクは昨年のディスカバリーのようにトーマス・デッケルとの2枚エース体制で臨むような気がしている。

 事前に参加が決まっていたプロチームの中でエースをジロ・デ・イタリアに参加させているのはラボバンクだけなのだ。

 こうした背景にはアスタナがツール・ド・フランスに出られない今年しかツール・ド・フランスで勝てないという計算があるからに違いない。

 それほど他のチームにとってヨハン・ブリュイネールが率いるディスカバリーから有力選手が移籍したアスタナに脅威を抱いているのである。

 今年のジロ・デ・イタリアが今ひとつ盛り上がらないのは、3大ツールの優勝者が顔を揃えたものの、その他の有力選手がこぞってツール・ド・フランスに回ってしまったからだろう。

 そこでジロ・デ・イタリアの主催者は大会を盛り上げるためにアスタナを急遽参戦させるという手に出たと私は考えている。

 急遽参戦にも関わらずブリュイネールはツール・ド・フランス不参加を前提に有力選手を全てジロ・デ・イタリアに振り向けて生きた。

 チーム内では有力選手のスケージュールは既に決まっていたはずである。それを完全に白紙に戻しての参戦だけに、タダでは帰らないとは思っていたが、個人TTでいきなり総合優勝争いに加わって来た。

 腕を亀裂骨折しているコンタドールにここまでの走りを見せられては他のチームがアスタナを恐れる理由は当然だと思う。

 ツール・ド・フランスに出場できない以上ブリュイネールは間違いなくここは勝ちに来る。そしてヴエルタも征してツール・ド・フランスに出場していればグランツール完全制覇もあり得た実力を示してくれるに違いない。

 ランスが7連覇を成し遂げている最中にランスが強すぎてツール・ド・フランスがつまらなくなったという声も良く耳にした。

 しかし、繰り返すが強い選手が強く勝つのがスポーツなのだから、そうした不満はお門違いもはなはだしいといわざるを得ない。そして非難されるべきは優勝する選手やチームではなく、それを許し続けている他のチームにこそ向けられるべきなのだ。

 今年のツール・ド・フランスは鬼の居ぬ間の争いで、誰が勝っても今年のマイヨジョーヌの価値は半減すると私は思っている。

 真の王者アスタナを破って手に入れなければマイヨジョーヌの本当の価値はないと私は思っている。

 アスタナが参戦しなければ私はツール・ド・フランスを見るつもりはない。

 それは主催者に対する抗議と真の王者でないものがマイヨジョーヌを着る姿を見たくないからである。

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登録日:2008年 05月 21日 14:50:39

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