「ルノー失速の原因はマスダンパーにあり?」で一句
<F1・第12戦 ドイツGP>ライコネン 今季初のポールポジションを獲得 - ドイツ
【ホッケンハイム/ドイツ 29日 AFP】F1第12戦・ドイツGP(German Grand Prix)、公式予選。マクラーレン・メルセデス(McLaren Mercedes)のキミ・ライコネン(Kimi Raikkonen)は、1分14秒070のタイムで今季初のポールポジションに輝いた。(c)AFP/DAMIEN MEYER
出るルノー 打たれてチャンプ 価値高し
[解説]
シーズン前半無敵を誇ったルノーが意外にも失速状態。逆に3連勝と絶好調ウハウハ状態のフェラーリ。それもこれもブリヂストンのおかげ?と思っていたら「マスダンパー」なんて聞き慣れないモノが取りざたされる始末。無敵ルノーが密かに使ってきた空力補助デバイスらしいのですが、一体誰がかぎつけたのやら?すごい解析力!それともスパイ合戦?でも、基本的には新しく採用される電子部品やソフトウェアなどはFIAで厳しく事前審査され認可を受けているはず…なのに???やはり「出る杭は打たれる」運命なのでしょうか。しかしアロンソは、この苦境を乗り越え、ミハエルを退け獲得してこそ2連覇にも価値が生まれます。ミカ・ハッネンが猛追するフェラーリを振り切って初栄冠に輝いた、あの1998年のような接戦が再現される予感します。
[雑感]
「マスダンパー」…なんだろう?とネットで調べると、高層ビルなどの最上階に設置される「振り子状のオモリ」の事らしいです。このオモリが地震など不測の激しい振動が起きた際にいち早く相殺する揺れを起こし、建物に負担をかける異常振動をすみやかに抑えるモノだそうです。これに似た装置をルノーはフロントノーズ内部に仕込み、コーナーリングや路面の凹凸によって発生する過剰な振動を素早く吸収させ、空力的に理想姿勢になるよう車体の挙動を安定させる…そうなのですが、具体的にどんな構造になっているのかはハッキリ分かりません。とにかくF1の最先端エンジニアたちの発想は凄いんだなあと思うばかりです。
◆バーニーさんからお手紙着いた。モズレーさんたら…
ひとつのチームが連勝し続け、一人のドライバーだけがポイント争いでも突出してしまう。すでにシーズン中盤でチャンピオン決定しちゃうんかも?なんて噂が立ち始める。こういう事態を一番嫌うのは、バーニーさんです。視聴率が落ちる。サーキット観客動員数が落ちる。これだけは絶対、何がナンデモ避けなければならない事態です。今回のルノーに対するマスダンパー禁止令も表向きは「空力に関する補助うんぬん」などと言ってますが、だったら「フレキシブル・ウィング」なんて一体どーなのよ?です。本当の理由は簡単。「ストップ・ザ・ルノー」コレです。バーニーさんからのお手紙を読んだ、モズレーさんが速やかに「神の手」を発動したに違いありません。
◆この道はいつか来た道…
今シーズンの流れを見ていて「あれ?前もこんな事なかったっけ?」と妙なデジャブ感に囚われた方はいないでしょうか?そんな人は、たぶん8年前に見たグランプリの記憶が無意識に訴えかけているのでしょう。
1998年、ウィリアムズからマクラーレンへ移籍した名匠エイドリアン・ニューウィーが開発したMP4/13を実践投入。ロン・デニスの期待に200%応える仕上がりで開幕から破竹の勢いを見せ快走。“静かなる男”ミカ・ハッキネンが内秘めた実力を爆発させ連勝を重ねます。ところが中盤に差し掛かる頃からフェラーリが復調を見せミハエル・シューマッハが3連勝。好調マクラーレンにストップをかけます。おかげでポイント争いは終盤までもつれ、最終戦・鈴鹿までチャンピオン決定がずれ込みました。ロン・デニスはヒヤヒヤでしたが、バーニーさんはニコニコだった事でしょう。
◆ブレーキバランスシステム
1998年のマクラーレンが快進撃を続けた理由のひとつに「ブレーキバランスシステム」がありました。通常ブレーキとは別にクラッチペダルの位置に「フォースブレーキペダル」が設置され、これをコーナーリング中に踏むとコーナー内側のリアブレーキだけが作動して、素早いコーナーリングが可能になるシステムでした。この事実を掴んだフェラーリは「禁止された4WS(四輪操舵)システム」と主張して、マクラーレンの秘密兵器を使用禁止へと追い込みます。ところが、このシステムのもともとのアイデアを描いたのはミハエル・シューマッハとフェラーリだったのです。両足のアクセル&ブレーキ操作を駆使して素早いコーナリングを得意としたミハエルのゴーカートでの経験から生まれたものでした。自分たちがモノにできなかったアイデアを他人が先に実用化してしまった。だったら全部ご破算に…そんな報復行動と言えなくもありません。世の中によくある事です。
◆タイヤ戦争に幕
この年、長年グランプリを支えてきた老舗グッドイヤーと新興勢力ブリヂストンによるタイヤ戦争が佳境を迎えていました。グルーブドタイヤ(溝付きタイヤ)導入1年目にキッチリ対応してきたブリヂストンがマクラーレンを足元から援護射撃。逆にグッドイヤーとの長年の信頼関係を優先したフェラーリはレースパフォーマンスで遅れを取る事になります。実は、グッドイヤーはこの年を限りにグランプリ撤退を決め、翌年からブリヂストンがワンメイクサプライヤーとなってしまいます。開発競争による品質向上と広告効果を目指すブリヂストンにとって、偉大なライバルの退場は残念な誤算でした。
◆チャンピオンの行方
1998年のチャンピオン対決は、ミカ・ハッキネンが最終戦・鈴鹿を制し見事チャンピオンの座を獲得します。前年最終戦で初優勝したとは思えない、ポールトゥーウィン5回を含む年間8勝の堂々たる成績。そんなミカの戦績に華を添えたのは、ポールトゥーウィン1回ながら年間6勝、ついにイタリアGPで同ポイントに並ぶまで追い上げてきたミハエルに対し、ポイントリーダーの座を一歩も譲らなかったここ一番でのミカの踏ん張りでした。翌1999年はミハエルの不運な怪我による戦線離脱も手伝い、ミカが(モンツァの森で泣いちゃった事もあったけど…)連覇を実現させます。さて、今年のアロンソは自力で踏ん張りを見せ、みごと連覇を成し遂げる事ができるのでしょうか?
◆1998年のミカと2006年のアロンソの違い
1998年のハッキネンには、たとえ「ブレーキバランスシステム」を奪われても向上心の高いブリヂストンと信頼度の高いメルセデスエンジン、頼りになる空力の神様ニューウィーがいました。
ところが「マスダンパー」を失った2006年のアロンソの手元にあるのは、撤退を決めて意気の上がらないミシュラン。もう今年で辞めちゃうかもしれないルノーエンジン。代表のフラビオ・ブリアトーレもチーム運営に飽きて、そろそろ政治の世界の方に色気を感じている様子。
憧れの人とタッグを組めてウキウキのフェリペ・マッサを従えたミハエル・シューマッハの方に「分がある」ように思えて仕方ありません。
このマイナス要素山積み状態をはねのけチャンピオンを勝ち取ったならば、万人が認める真の王「エル・レイ」として、アロンソはグランプリに永く君臨してゆく事ができるでしょう。
◆おまけ情報
次のハンガリーGPでは、禁止された「マスダンパー」が手続き上の行き違いで1戦のみ使える模様です。果たしてルノーが使うかどうかは不確定ですが、もし使ってアロンソが優勝しようものなら自ずと前半好調の種明かしとなってしまい、終盤へ向けた展望が暗いものとなってしまいそうです。できれば「マスダンパー」封印状態でもキレのあるアロンソの走りが戻ってくることを期待します。
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登録日:2006年 08月 03日 04:07:45
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- プロフィール
- 斎藤モ吉
- (男)
- 福岡の片田舎でデザイナー兼ライター営業中。F1にハマったきっかけは、仕事関係で見始めた1987年のドイツGP。プロストとピケの麗しい姿に感動。
好きなレーサーは、ジル・ヴィルヌーブとアイルトン・セナ。好きなF1マシンはフェラーリ312T4。好きなF1マンガは『赤いペガサス』。好きなF1映画は『グランプリ』。好きな言葉はジル・ヴィルヌーブの『来年がやってくるってどうして言えるんだい? 』
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