2006年 05月

「アロンソ、母国GP初優勝」で一句

<F1 第6戦・スペインGP>決勝 - スペイン

【モンメロー/スペイン 14日 AFP】F1第6戦・スペインGP(Spanish Grand Prix)・決勝。3番グリッドからスタートしたフェラーリ(Ferrari)のミハエル・シューマッハ(Michael Schumacher)は、順位を1つ上げるもタイムが伸びず2位でレースを終え3連勝を逃した。(c)AFP/DAMIEN MEYER

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アロンソも 待ちくたびれの 母国WIN

[解説]
最近のGPシーンにおける楽しみのひとつ。それがアロンソのウィニングポーズ。
「エヘン!イバリ!」とか「お耳ピロピロ〜」とか。
今時の表現で言えば「エロかっこいい」ならぬ「ヘンかわいい」。
彼の妙なお茶目さは、歴代のチャンピオンたちには絶対見られなかったもの。彼らしい若々しさと奔放さを感じさせて好きです。
しかし、前回のスペインGPでのポーズ。あれは一体何だったのでしょうか?
まるで老人のように腰を落として、腕を背中に回そうとするチンパンジーようにカラダを左右に揺する姿。私は「ひいひい。重かったよ〜母国優勝のプレッシャー」のポーズだと勝手に解釈しましたが、さて、そのココロやいかに…。

[雑感]
◆アロンソは、早いのか?遅いのか?
スピードの話ではなく、母国優勝に関しての話です。
彼のデビューイヤーは2001年ですから、今年で6年目。これは、母国優勝記録としては、あまり早いとは言えません。ワールドチャンピオン最年少記録更新という快挙もあり、とんとん拍子に成功した印象のあるアロンソですが、実は意外と苦労人なのです。弱冠19才でミナルディからデビューしたものの、翌年にはルノーへ移籍。まるまる一年間テストドライバーとして下積みを経験します。そんな回り道が母国優勝の記録にも影響しています。

◆母国優勝は難しい?
母国優勝は、ドライバーにとって難しい事なのでしょうか?テレビの解説では、よくジンクスのように語られます。でも、それはアイルトン・セナ以降という気がします。卓越した才能を持つ天才ドライバー・セナが何故か母国ブラジルでは勝てず、優勝を勝ち取るまでに8年もかかった。その印象が強すぎたせいではないでしょうか。

◆1991年 ブラジルGP
小雨降るインテルラゴス。ついに念願の母国優勝を成し遂げたセナ。チェッカーフラッグを受けた直後、嬌声とも絶叫とも言えない彼の叫びがマイクから届きました。コース上に止まったMP4/6の中で、泣きじゃくる姿が延々と画面に映し出され、全世界にその感動を伝えたのです。

◆ジンクスにしたい人々
あの時の夢よ、もう一度。そう願う人たちが、なかなか母国で勝てないドライバーを捕まえては、無理矢理ジンクスとして語ろうとする節がなきにしも…。ところが今年のアロンソは、千載一遇の感動シーンでこともあろうにエッサッサーダンスを披露。F1ロマンチストたちの期待を木っ端微塵に打ち砕いてくれました。

◆他のドライバーはどうだったのか?
セナ以前のトップドライバーたちの記録を見てみると、みんな比較的簡単にデビュー間もない時期に、母国優勝を成し遂げています。
セナの宿敵とされたアラン・プロストはデビュー2年目。しかもGP初優勝。セナの憧れでもあったジル・ヴィルヌーブもデビュー2年目、78年に母国カナダで初優勝を上げています。また、アロンソが破るまで最年少チャンピオン記録保持者だったエマーソン・フィッティパルディは、デビュー3年目に、しかも母国ブラジルでの初開催という晴れの舞台でしっかり優勝。これまたスゴイ記録です。

◆母国で強いドライバー
母国でなかなか勝てないドライバーもいれば、母国でガンガン強さを発揮するドライバーもいます。ナイジェル・マンセルは、その典型的なドライバー。
大器晩成型だったマンセルは、デビュー5年目の85年、母国ブランズハッチで記録的に遅いGP初優勝を遂げます。それ以後、めきめき頭角を現し、母国優勝も5回達成します。特に1986年から1992年の7年間、毎年、イギリスGPでファステストラップを記録し続けました。「速さでは、誰にも負けない」そんな意地とプライドをコース上で見せる姿が「大英帝国の息子」として母国ファンに愛されたのでしょう。

◆1988年 イギリスGP
この年、最強だったホンダエンジンを失ったマンセルは、非力なジャッドエンジンを駆って毎戦のようにリタイヤを繰り返していました。ノーポイントで迎えた母国イギリスGP。高速サーキットのシルバーストーンは雨。言う事を聞かないリアクティブサスペンションを捨て、マンセルは自分らしい走りを取り戻します。予選11位から水煙を蹴立てて、コース幅いっぱいを使い縦横無尽に前走車をパスして行きました。結果、優勝こそ逃したものの、セナに次ぐ2位表彰台。それは単に運の良さではない、マンセル自身が持つポテンシャルの凄さを世に知らしめたレースでした。

◆近年のドライバーたち
ミハエル・シューマッハもまた「母国で勝てない」ジンクスで語られた一人です。
難コースとして知られるスパ・フランコルシャンで鮮烈なデビューを飾り、直後にチームを電撃移籍するなど、アロンソよりもはるかに駆け足で栄光の階段を上り詰めたシューマッハ。彼もまた、母国優勝までに6年もの歳月をかけています。
ところが現代では、彼よりもっと「母国で勝てない」ドライバーたちがいます。年間18〜19戦も行われていながら、キミ・ライコネンやファン・パブロ・モントーヤたちの母国フィンランドやコロンビアではGP自体が開かれる可能性がありません。そう考えると母国優勝に特別な意味を持たせようとする事自体、無意味に思えてきます。

◆これからのアロンソ
何はともあれ、これからアロンソは、母国でも母国以外でも次々と優勝を重ねていく事でしょう。勝つ事がまるで当然のように。それは、彼の勝ち方を見れば明らかです。
スムーズでミスの少ないアラン・プロストのようなクレバーさと、アグレッシブな走りを持続させるマンセルのようなタフネスさを兼ね備えた走り。それをあのM・シューマッハ相手に見せてくれるグレートなアロンソ。

次は、彼がシューマッハの打ち立てた記録をどれだけ破っていくのか。
そして、彼がどれだけ変なポーズを見せてくれるか。
それが、これからのGPの楽しみです。

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登録日:2006年 05月 23日 01:53:42

「井出有治ライセンス剥奪」で一句

<F1 第5戦・ヨーロッパGP>鈴木亜久里 フリー走行を見守る - ドイツ

【ニュルブルク/ドイツ 5日 AFP】F1、第5戦・ヨーロッパGP(Europe Grand Prix)、1日目。スーパーアグリ(Super Aguri)の鈴木亜久里(Aguri Suzuki)代表は、ピットからこの日行われたフリー走行を見守った。(c)AFP/DAMIEN MEYER

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アルバース 転がし井出は 明日なくす

[解説]
異例とも言える厳しい処分を受けた井出選手の明日はいずこへ。
なくした明日が見つかる事を祈って…。


[雑感]
話題の井出選手。クリスチャン・アルバースとのイモラでの接触事故に端を発した批判がついにライセンス剥奪という形にまで発展してしまいました。
「ヒドイ!厳し過ぎる!日本人苛めだ!」と反感を持つ人もいれば、「琢磨より3秒以上も遅いから当然」という冷めた意見も少なくないようですが、実際のところはどうなんでしょう?その辺りをちょっと状況などを勝手にまとめてみました。

◆井出選手のレース・スキル
「井出の後ろを走りたくない」とあからさまな嫌悪感を示すライコネンから、下位を走るレーサーとして似たような境遇に同情しつつ「彼のラインは独特」と冗談まじりに語るクリエンまで、とにかくパドック内で彼のスキルに対して擁護する人物は少なく、日本人を除けばごく限られるようです。

◆井出選手の走りが嫌がられる理由
それは彼の走りが「雑で危ない」という事ではなく、「彼はミラーを見過ぎていてアブナイ」というジャック・ヴィルヌーブの言葉が示すように、他のドライバーに気を使い過ぎる「優しさ」が災いしているようです。

◆カルチャーショック
彼がF1に参戦して一番驚いた事が、ガンガン縁石にタイヤを乗せて走るドライビング・スタイルと語っているように、繊細な走りが求められるフォーミュラーニッポンでの常識とF1との違いに激しいカルチャーショックを受けた様子。

◆過剰反応
しかもそんな中で自分に与えられたのは極端に戦闘力の劣るマシン。ブルーフラッグへの過剰な反応が逆に挙動不審な走りを招いていたのかもしれません。

◆危機感
彼自身パドックでの自分の評判をどれだけ耳にしていたかは定かではありませんが、同僚の佐藤琢磨とのタイム差は明確に自覚していた事でしょう。フォーミュラーニッポンでのチャンピオン経験のある本山哲や期待の新人として注目が集まる山本左近との交代などの噂がささやかれ始めていた時期。「なんとか走りで結果を見せないと…」募る焦り。それがイモラの不運を呼び込んだのかもしれません。

◆クラッシュ
アルバース本人に怪我がなかったものの、アスファルトのコース上で横転し、縁石をかすめながら数回転、裏返った状態で止まる大事故でした。

◆既視感
あの事故を見て、おそらく多くの人が1999年のニュルブルクリンクで開かれたヨーロッパGPでザウバーに乗ったペドロ・ディニスがスタート直後の多重クラッシュに巻き込まれて横転したシーンを思い浮かべた事でしょう。
当時に比べればクラッシュテストも強化され、ロールバーの強度も向上しているでしょうが、万が一、今回の事故があの時のように、ロールバーが砕け、頭部のセーフティー空間がないまま縁石をかすめたなら…。最悪の結末を招きかねない事故だったとして、レーススチュアードやFIAが事態を深刻に受け止めたとしても仕方のない事故でした。

◆イモラという場所
イモラといえば94年のアイルトン・セナとローランド・ラッツェンバーガーの悲劇の記憶も癒えない場所。ましてや現場はラッツェンバーガーの事故死で改修を受けたヴィルヌーブ・シケイン。レース関係者のトラウマを呼び覚ますには、あまりに刺激的な場所だったかもしれません。

◆招集された面々
しかも今回の事態を重くみたバーニー・エクレストンが協議のために緊急招集をかけた面子は、フランク・ウィリアムズ、ロン・デニスとジャン・トッド。よりによって「イモラでの事故」に一番、神経質になりそうなメンバーです。

◆井出選手の一言
そんな関係者の耳へ井出選手のサンマリノGP終了後のインタビュー「レースだから仕方ない」というあまり反省の色が見られない発言が届いていたとしたら…。ライセンス剥奪の急先鋒と言われるニキ・ラウダでなくとも「ヤツのライセンスを取り上げてしまえ!」という気分が高まったかもしれません。

◆後悔先に立たず
ヨーロッパGP前には、謝罪の意志を表明した井出選手ですが、時すでに遅し。もし、レース直後にアルバース自身の元を訪れて、そうしていたなら事態はもう少し好転していたかもしれません。それ以前にすでに「剥奪」の結論が出ていなかったという仮定の上での話ですが…。

◆アルバース選手の反応
事故直後こそ井出選手に対して厳しいコメントを発していた当のアルバースも、ライセンス剥奪という予想以上の厳しい処分に対しては「彼は今回の行為について反省すべきだけど、ルーキーなのだからミスだってある。もう一度チャンスを与えられるべき」と実に大人らしい対応を見せています。

◆鈴木亜久里代表の対応の拙さ
事故以来、一貫して井出選手の擁護に終始した事が、かえって事態を悪化させたと自分でも語るように、今回の件では、鈴木代表の対応の拙さがかなり目立ちました。フォーミュラーニッポンやGT選手権での監督経験があるとはいえ、生き馬の目を抜くと言われるF1の世界では、まだまだ初心者マーク。もっとしたたかに、時には冷徹な判断を躊躇無く下す処世術を身につけないと魑魅魍魎うごめくグランプリ世界で生き残る事は難しいでしょう。

◆大きな疑問符
井出選手の起用に関して各方面から疑問符が投げかけられていたにもかかわらず、師弟愛的な美談で押し通した亜久里代表。それがかえってお互いにとって不幸な結末を招いたとも言えなくはないでしょうか。
疑問と言えば、美談とはうらはらに急遽参戦が決まったモンテニューでさえ作ってもらえた専用シートを最後まで用意してもらえなかった井出選手。ドライバー出身の亜久里代表が専用シートの重要性を軽んじるはずがありません。にもかかわらず井出選手へのこの待遇の悪さは、何故か?単なる身内意識から出た「甘え」なのでしょうか?それとも最初から井出選手は捨て駒扱いだったのでしょうか?

◆もやもや
今回の騒動で一番感じたのはやはり「F1はヨーロッパ人たちのモノ」という排他主義です。たしかに井出選手のドライビングは、お世辞にもトップレベルと言えるものではなかったかもしれません。しかし、過去にはもっとレベルの低いドライバーがいました。が、彼らにライセンス剥奪と言う強権が発動される事がなかったのはなぜでしょう?

◆彼らの本音
結局、彼らが言いたかったのは「ジャップを二人も走らせるな」という事だけだったのかもしれません。その結論を導くためのダシに使われたのが今回の接触事故だった…ただ、それだけの事に過ぎないのかもしれません。

◆井出選手の明日
とにかく今回の一件だけで井出有治というドライバーが過小評価されない事だけを切に願います。マイケル・アンドレッティやアレッサンドロ・ザナルディだってF1で夢破れてもCARTで新たに開花しました。日本のレース界にもそんな懐の深さみたいなものが生まれてきてもいい頃ではないでしょうか。

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登録日:2006年 05月 14日 01:15:47

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プロフィール
斎藤モ吉
(男)
福岡の片田舎でデザイナー兼ライター営業中。F1にハマったきっかけは、仕事関係で見始めた1987年のドイツGP。プロストとピケの麗しい姿に感動。
好きなレーサーは、ジル・ヴィルヌーブとアイルトン・セナ。好きなF1マシンはフェラーリ312T4。好きなF1マンガは『赤いペガサス』。好きなF1映画は『グランプリ』。好きな言葉はジル・ヴィルヌーブの『来年がやってくるってどうして言えるんだい? 』
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