「完璧新人ルイス・ハミルトンの北米シリーズ連続ポールトゥーウィン」で一句
【6月18日 AFP】F1第7戦・米国GP(United States Grand Prix 2007)、決勝。マクラーレン・メルセデス(McLaren-Mercedes)のルイス・ハミルトン(Lewis Hamilton)は、1時間31分09秒965をマークして2戦連続のポール・トゥ・ウィンでキャリア2勝目を飾った。(c)AFP
捕捉不能? シューミネーター以上? ハミルトン
[解説]
ただただ呆れかえるばかり。
新人ルイス・ハミルトンによる完璧な北米制覇劇。
シーズン序盤からチーム内でのポイント調整によって
さんざんチャンスの芽を摘まれ続けても「腐る」コトなく、
ジッと新人らしく「時」を待ち続けたハミルトン。
疑惑のモナコゲートを軽やかにスルー。
そして海を渡り、迎えた新大陸での2連戦。
すべての鎖から解き放たれたように
「真の実力」を万人に見せつけたハミルトン。
ポイントリーダーのプレッシャーを微塵も感じさせない落ち着きっぷり。
ありとあらゆる波瀾にみちたモントリオールでも
あくびが出るほど単調だったインディアナポリスでも
終始ペースを乱す事なく、連続ポールトゥーウィンを達成。
完全無欠の運転能力と沈着冷静な判断能力でレースを支配し、
ライバルもチームメイトさえ完膚無きまでに粉砕してしまう姿から
かつて「シューミネーター」と畏れられたミハエル・シューマッハ。
そんなミハエルのレース運びすら「人間らしく」思えるほどの
ルイス・ハミルトンの「パーフェクト・ゲーム」。
それは「驚異の新人」という言葉の範疇を越えています。
はたして、ハミルトンにはどんなアダ名がつけられるのでしょうか?
[雑感]
ハミルトンとアロンソの関係を
過去の「師弟関係」に当てはめようとしましたが断念しました。
なぜなら過去に似た「関係」が見当たらないからです。
プロストとラウダにも
プロストとセナの関係にも似ていない。
ムリヤリ当てはめるとしたら
「もしも」セナとミハエルが同じチームになっていたら…
チョットだけ似てたかも…と想像するばかり。
生まれて初めて体験したコースも規定時間内に習得し解析し
やすやすとポールトゥーウィンしてみせるハミルトンに
果たしてアロンソから「学ぶべき点」があるでしょうか?
◆メディアとの関係
地元イギリスメディアを完全に味方につけているのは当然として、
各国のメデイアもおおむね好印象なハミルトン。
その主な要因は記者会見で見せる「歴戦の勇者」並みな対応ぶり。
はたして往年のニキ・ラウダでもここまで落ち着いていたでしょうか?
過不足のない情報提供に「爽やかオーラ」のアピール。
それでも最大の敵アロンソをちゃっかり挑発する事は忘れない。
あどけなさの残る童顔、だけど中味はかなり「老獪」です。
◆レーススタイル
GP2時代に比べるとずっと地味になったハミルトンの走り。
おそらくハイテク装備のF1マシンの性能をフルに活かして
必要最小限度のインプットで最大のレスポンスを引き出せるためでしょう。
マシンやタイヤにムリをさせない走りのスタイルは、
かつて「教授」と呼ばれた頃のアラン・プロストを彷彿とさせます。
◆マシン開発能力
今年のMP4-22を実質開発したのは
ペドロ・デ・ラ・ロサと言われます。
しかし、開幕当初のフェラーリF2007との
小さかったアドバンテージをグッと広げ、
低速・テクニカルコースなモナコでも
高速・ストップ&ゴーのジル・ヴィルヌーブでも
高速・低速ハイブリッドなインディアナポリスでも
キッチリ速いオールマイティーなマシンに熟成させたのは、
現役ドライバー(特にアロンソ)による力が大きいはず。
しかし、その一番おいしい部分を味わっているのは
新人のルイス・ハミルトンのように見えます。
かつてウィリアムズでパトレーゼとデーモン・ヒルが開発した
FW14のおいしい部分を掠ったナイジェル・マンセルのように…。
◆ポイント獲得
これに関しては言わずもがな。
デビュー戦からこれまで一度もリタイアする事なく、
それどころか表彰台に唯一立ち続けているハミルトン。
おそらく英国ブックメーカーでは、
「ハミルトンが表彰台から転げ落ちる日はいつか?」
という賭けが成立している事でしょう。
「いつポイントを取り損なうか?」や「いつリタイアするか?」
「いつペナルティをもらうか?」でも賭けが行われているかも…。
完走すら難しいF1でこういう状況は過去にも例がありません。
「しぶとさ」は、すでにラウダやネルソン・ピケ以上でしょう。
◆ポールポジション
アイルトン・セナが誰よりもこだわった記録。
しかし、今年のレギュレーションでは
ポールポジションは、あくまで最終予選(Q3)でのトップ。
(つまり決勝スタートでの燃料搭載量を見越してのタイム計測1位)
セナがこだわった純粋な速さという点では
「ポールに価値がない」と言えるかもしれません。
もしも今年の予選が「週末最速=ポール」という条件なら
フェルナンド・アロンソ(7戦中4回)が圧倒的です。
「純粋な速さへのこだわり」では、ハミルトンはプロストみたいな
「ポールは取りたいけどまあ2列目以内でも十分」タイプかも。
ただし、以前のような「週末最速=ポール」に戻るか
GP2みたいにポールにポイントが加算されたなら、
ハミルトンも「ポール取り」を真剣に目指す可能性はありえます。
◆チーム掌握術
おそらくハミルトンに足りない部分があるとすればこの点。
ただし、この部分で過去秀でていたレーサーといえば
アイルトン・セナとミハエル・シューマッハぐらい。
セナは圧倒的な走りのカリスマ性で
ミハエルは徹底したコミュニケーション能力で
チームの人心をすべて自分へと集中させる事ができました。
その点アロンソは、まだまだ未熟。
昨年も「オレの足引っ張るヤツがチーム内にいる!」
なんて逆ギレ発言を平気でしたりして、
チームのやる気を削いだりするので手本にはならないかと…。
◆表彰台での笑顔
これはもう確実にミハエル・シューマッハを見習っています。
優勝した時だけでなく、2位でも3位でも笑顔を絶やさず
表彰台に立てた事を存分に喜んでみせる。
そして、他の入賞者たちの健闘をしっかりと讃える。
今回のインディアナポリスでもアロンソとマッサの肩を
まるでチャンピオン経験者のごとく叩く姿を見て、
すでにハミルトンの「王道」が引かれ始めているのを感じました。
F1という「ショー」の締めくくりをキチンと意識した姿。
バーニーさんはそういう部分までちゃ〜んと見てますから…。
◆チャンピオンの可能性
とにかく、いままでのチャンピオンの必要条件をすべて
デビュー早々から身につけているという点で比類なき
「完成され過ぎたチャンピオン候補生・ハミルトン」
この夏のヨーロッパ連戦でどうなるか分かりませんが、
下手をすればトルコ、遅くともイタリアかベルギーあたりで
私たちは「デビュー年チャンピオン」という
「歴史的瞬間」に立ち会っちゃう可能性があります。
それじゃ〜、ちょっとツマラナイんで、
アロンソ、マッサ、あと少しだけライコネン。
ここらでガツンと先輩レーサーとしての意地と走りを
若造に見せつけてやってほしいもんです。
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登録日:2007年 06月 19日 18:17:21
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- 斎藤モ吉
- (男)
- 福岡の片田舎でデザイナー兼ライター営業中。F1にハマったきっかけは、仕事関係で見始めた1987年のドイツGP。プロストとピケの麗しい姿に感動。
好きなレーサーは、ジル・ヴィルヌーブとアイルトン・セナ。好きなF1マシンはフェラーリ312T4。好きなF1マンガは『赤いペガサス』。好きなF1映画は『グランプリ』。好きな言葉はジル・ヴィルヌーブの『来年がやってくるってどうして言えるんだい? 』
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