「アロンソ、ピット独占?で5番手降格」で一句

アロンソとハミルトン ピットストップを巡って調査へ

【8月5日 AFP】F1第11戦・ハンガリーGP(Hungarian Grand Prix 2007)。
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(c)AFP

AFPBB News


ハンガロゲート? いくらナンデモ なかロンソ

[解説]
さあ〜〜〜。いよいよ本格的にキナ臭くなってまいりました!
マクラーレンお得意「お姉様イビリ」状態。
セナプロ泥沼時代の再来かぁあああ〜。
などと昔懐かし「古館節」の煽り声が聞こえてきそうな雰囲気ですが、
はたして、両者にかつての「セナ・プロ」のような意図が
本当にあったのでしょうか?
もし、アロンソが「ワザと」ハミルトンの邪魔をやったとすれば
去年「ラスカスゲート」のミハエルと同様ですが…さて。

[雑感]
「ええ〜〜!?そこまでやるう?…うわ〜ハミルトン可哀相ぉ〜」
ハンガリーGP予選3回目。
予選終了直前、マクラーレンのピット上で発生した珍事。
詳しくは、アチコチで紹介されているはずなので繰り返しませんが
カンタンに言えば、

「アロンソがピットアウトを遅らせたため、
ハミルトンが最後のタイムアタックに間に合わなかった」

「ワザと」とか「潰された」と書くと《ハミルトン側》表現になり、
「ピットアウトできなかった」と書くと《アロンソ側》表現になってしまいます。

ただ見ていた多くの人は「アロンソがワザとハミルトンの邪魔をした」と感じ、
ハンガリーGPのレーススチュワードも少なからず
そう判断したために「5番手降格」という裁定が下されたのでしょう。
でも、あの事件の『実情』はどうなのでしょう?
その「藪の中」をちょっと覗いてみたいと思います。
(例によって今回も「ほぼ妄想」ですので真に受けないように…)

◆F1の予選方法
今回の件でフツーの人にはちょっと「?」な部分があるかと思います。
そこでまず、現在F1の予選がどうなっているかの説明から始めましょう。

F1の予選は去年から「ノックダウン方式」という方法が取られています。
予選をQ1-Q2-Q3の3セッション(各15分)に分け、
参加ドライバー22人をQ1&Q2で下位から各6名ずつ振るい落とし、
残った10名によってQ3で上位グリッドの順位を決めます。

◆予選に必要な周回数
タイムトライアルに必要な周回数は最低3周。
《サーキットに出る周》+《タイムアタックする周》+《ピットに戻る周》
1周が1分20秒前後とすると1ターンに必要な時間は4分〜5分。
15分以内で計算すれば、タイヤ交換の時間を含めて1セッション9周が基本です。
ただし、チェッカー直前にスタートラインを越えていれば
その周回のタイムアタックまでは認められます。

F1雑誌の予選結果などを見ればよく分かります。
Q1-Q2で下位チームは、みっちり3ターン(9周)走りますが、
上位は大体1ターン(3周)で終了。
ワンメイクタイヤの選定に悩んでいるチームがたまに2ターン走ったり、
タイヤの皮むき目的に多めに走ったりもします。

ところがQ3になると様相が一変します。
Q1-Q2では余裕ぶっこいていた上位チームもピット出口に殺到。
予選開始と同時にコースイン。規定時間15分間をフルに走り続けます。
総周回数にして10〜11周、コースによっては12周まで走れます。
ナゼ、そんなシャカリキになって走るのでしょう?
そこで重要となるのが「フュエル・バーンオフ」と呼ばれる周回です。

◆走るは《タイムのみ》のためならず
Q3を走った人には、ひとつ特典があります。
Q3中に走った周回数分だけ「燃料給油」してもらえるのです。
この制度が導入されたキッカケは、
あまりにも上位チームが予選で走らないためでした。
2005年の予選セッションの結果を見ると予選セッション1時間中、
みんな3周しか走らないという有様です。(燃料制限アリだから当然)
そこで導入されたのが「ノックダウン方式」と「燃料給油サービス」でした。

「予選中もサーキットを思う存分走ってもらう」
    ↓
「特にお目当ての上位のレーサーたちの走りが多く見られる」
    ↓
「土曜日予選にもたくさんお客さんが見に来てくれる」
    ↓
「入場料収入が増える」
    ↓
「(゜Д゜)ウマ〜〜〜〜! 」

そんな純粋(?)なF1運営者たちの思惑さえも
上手に戦略として利用してしまうのが「ナンデモあり」なF1の世界。
(FIA設定燃費X周回数)という給油量の算定方法を逆手に取って、
Q3の周回中に低燃費走行を絡める事で
規定量より1リットルでも多く燃料をせしめ、
決勝レース(特に第1スティント)のレース戦略に幅を持たせる事。
それがQ3でドライバーたちに課せられた「もうひとつの仕事」。
それが「フュエル・バーンオフ」です。
規定にがんじがらめな現代F1では必要不可欠な常套手段なのです。
「バーンオフ」は最終アタック後のクールダウンラップまで含まれます。
チームラジオで「ゆっくり走ってね」と《念押し》されるのはそのためです。

◆ハミルトンの命令違反行為?
今回の事件に関してマクラーレンが「アロンソの異常な行為」を
釈明(?)するために提出した「ハミルトンの命令違反」に
この「フュエル・バーンオフ」が関係してきます。

Q3開始前。ピットレーン出口のトップにいたのはハミルトン。
その後ろがアロンソ。
そもそもこの順番が「間違い」だったとマクラーレンは主張します。

序盤6周の「フュエル・バーンオフ」を含む総周回12周を当初予定していた
とするマクラーレン陣営は「アロンソ先行」を念頭に置いていたそうです。
しかし、ハミルトンはその「約束事項」を破り、
しかも「アロンソ先行」を指示しますがこれを無視。
そのため総周回数を「11周へ変更」を余儀なくされ、
それが予定外の「アロンソ20秒ストップ」という事態を招き、
それが巡り巡って不可抗力的に
「ハミルトンの予選妨害」へと繋がったという主張です。

しかし、そう言われてもな〜…というのが正直な感想です。
なぜならQ3中のマクラーレン陣営の様子が何度も映されていましたが、
序盤のピットには彼らが主張するような
「緊張状態」はまるで感じられなかったからです。

◆Q3での「20秒」ストップ?
レーススチュワードから公式発表されたコメントにある「20秒ストップ」。
これがQ3での1回目と2回目どちらを差しているのか
判然としない部分があります。
そこで実際のアロンソの2回のピットストップを振り返ってみます。

《アロンソ1回目のストップ》
[ 残り 7:42 ]
予定より1周少ない5周のバーンオフを終え、アロンソがピットイン。
ロリポップマンの指示による長い制止、そして指でカウントダウン。
[ 残り 6:53 ]
ロリポップが上がる。チームがアロンソに課した制止時間は51秒。
スタートしかけるアロンソ。
しかし、右フロントのアップライト部に
タイヤウォーマーのヒモがひっかかり、さらにタイムロス。
[ 残り 6:43 ]
やっとスタート。余分にかかった時間は「10秒」。

《アロンソ2回目のストップ》
[ 残り 2:14 ]
こちらが問題となったピットストップ。タイヤ交換は7秒で終了。
ここでまた長い制止を指示されるアロンソ。
[ 残り 1:51 ]
ロリポップが裏返る。
[ 残り 1:48 ]
ロリポップが上がる。チームが制止させた時間は34秒。
それでもスタートしようとしないアロンソ。
ハミルトン担当のタイヤクルーにせかされても無視。
アロンソは「このタイヤで本当にいいのか?」とクルーに再確認。
[ 残り 1:36 ]
ここでアロンソがゆっくりとピットをスタート。
余分にかけた時間は「12秒」。
アロンソの主張する「間に合わない」発言は明らかに間違っています。

さて?ここで問題です。
アロンソが「カウントダウンされた」と主張する「20秒」
マクラーレンチームがアロンソに待つように指示した「20秒」
とは、それぞれどれを指すのでしょうか?
どうもマクラーレンとアロンソが言う「20秒」は
ビミョーに違う気がするのです。

◆アロンソの立場を客観的に見る
テレビやサーキットで見ている人々には残り時間がリアルタイムで見えています。
ただし、F1のコクピットにはそんな《ストップウォッチ》はついていません。
ドライバーが“頼り”とするのはピットからの無線連絡だけです。

だから、アロンソが2回目の長いピットインからゆっくりスタートした時点で、
タイムリミットギリギリだったと言う事実を
アロンソ本人は把握していなかった…可能性はあります。

言い換えるなら「“ワザと”ハミルトンのアタックラップを潰す」ためには
「ピットの“協力”」でもない限りは不可能だとも言えます。

チームの『罪』を認めたスチュワードの判断はその点にあるのでしょう。

◆マクラーレンの不可解な主張
明らかにQ3終了後、不機嫌ありありだったロン・デニス。
アロンソ担当のフィジカルトレーナーをとっつかまえ、
ポール獲得で喜ぶアロンソにも歩み寄って何事か言いたげでした。
一方で2位に終わったハミルトンへ慰めの言葉をかける担当スタッフ。
誰がどう見ても「ナニがあったか」はミエミエの状態と言えます。

それでも「アロンソよりハミルトンが悪かった」と主張するマクラーレン。
何故か?仮定として考えられるのは…

アロンソの子供じみた行為の是非を問うより、
彼の『スポーツマンらしからぬ行為』に対するペナルティーのダメージを
これから熾烈化するフェラーリとのポイント争いに備えて
少しでも緩和するためにあえて「お話をデッチ上げた」…でしょうか?

過ぎた事をアレコレと追求する事で事態を悪化させるよりも
つねにチームへの不信感を漏らし、「現状への不満」をアピールし続ける
アロンソとの関係修復へ向けた協力関係を新たに築く突破口として
この災いを「福」となすための「建設的な妥協案」…でしょうか?

そのために子飼いのハミルトンを利用したのでしょうか?

◆やぶ蛇
結局、マクラーレン&アロンソの目論みはどれも空振りに終わり、
「妨害行為」へのアロンソ自身に対する嫌疑は晴れることなく
ペナルティーとしてポール記録は抹消《5番手降格》を言い渡され、
本当の理由はどうあれ、マクラーレンチームもアロンソと共謀したとして
ハンガリーGPの《チームポイント剥奪》が決定されます。

まさに「やぶ蛇」。
アロンソだけが罪をかぶった方がキズが浅かったのではないでしょうか?

あるいはロン・デニスには、目先のポイントよりも
アロンソと「共倒れ」になる事で彼に「負い目」という貸しを作り
来期へ向けた契約を有利に進めるというメリットの方を優先した…のかも?

◆アロンソが止まった理由
スタッフの凡ミスによる1回目のピットストップ「10秒」のタイムロス。
これをアロンソはどう受け取ったのでしょうか?

ずっとチームへの不信感を募らせ続けているアロンソ。
ハミルトンのためにチームが「ワザと」やったのでは…
一瞬、そんな疑心暗鬼に囚われた可能性はないでしょうか?

だから、今度はアロンソが「ワザと」同じように「12秒」止まってみせた。
たまたま運悪くハミルトンが…後ろで待っているとは知りつつ…。

ニュルブルクリンクの表彰台前についマッサへ暴言を吐いたように
大した根拠もなく感情的に、つい反射的に…
本人にさしたる「悪意」もないままに。

◆見損ねた《伝説》
しかし、今回といい去年の「ラスカスゲート」といい
たしかに「不届きな行為」があったもののどちらも
“お膳立て”とすれば、間違いなくレースが面白くなりそうな展開でした。
それを「なかった事」にしてしまったのは「正義」の名の下に下された裁定です。

ただ心の片隅でこうも思うのです。
今回、もしもアロンソがポールのままであったなら…
抜けないハンガロリンクでアロンソの鉄壁な防御と
ハミルトンの『神業オーバーテイク』がガチンコ激突。
しかも序盤のツバぜり合いでお互いに消耗しきったマクラーレンに
終盤襲いかかるフェラーリ・ライコネン…
想像するだにスリリングな展開ではないでしょうか?
ペナルティーを下すのはそれからでも遅くなかった…のでは?と。

1988年のブラジルGP。
フォーメーションラップ後のマシントラブルで
Tカーに乗り換えたアイルトン・セナ。
最後尾からスタート。
黒旗が出される直前まで見られたセナの鬼神のような走り。
もしもアレが乗り換える直前に
競技委員会から「ストップ」がかかっていたなら…。
私たちは貴重なセナの《伝説》をひとつ見損ねた事でしょう。

そう考えると先週末の私たちは、
《伝説》と成り得たレースを見損ねた不幸な観客…だったのかもしれません。

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登録日:2007年 08月 12日 15:31:38

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プロフィール
斎藤モ吉
(男)
福岡の片田舎でデザイナー兼ライター営業中。F1にハマったきっかけは、仕事関係で見始めた1987年のドイツGP。プロストとピケの麗しい姿に感動。
好きなレーサーは、ジル・ヴィルヌーブとアイルトン・セナ。好きなF1マシンはフェラーリ312T4。好きなF1マンガは『赤いペガサス』。好きなF1映画は『グランプリ』。好きな言葉はジル・ヴィルヌーブの『来年がやってくるってどうして言えるんだい? 』
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