「ホンダを恨む」のは筋違い…なのかもしれんが
【5月7日 AFP】F1に参戦しているスーパーアグリ(Super Aguri)の鈴木亜久里(Aguri Suzuki)代表は6日、長引く財政難を理由にF1世界選手権からの撤退を発表した。
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(c)AFP
「琢磨をF1で走らせ続けるために」
を第一目標として立ち上げられたスーパーアグリF1。
今思えば、その亜久里代表の「侠気」が
長期的判断を誤らせたとも言えるし、
後先考える以前にまず立ち上げてしまった「軽挙さ」が
亜久里代表らしいとも言える。
そしてまた同時に、その両方が
私ら「日本人」の気持ちを強く揺さぶったとも言える。
・・・・・・・・
チーム設立当初から「借金してまで続ける気はない」と断言していた亜久里代表。
だから、こうした結末は、予てより十分予想されるものではあった。
人によっては、そんな亜久里代表の発言に対して、
「無責任だ」「卑怯だ」と受け取る向きもあるかもしれない。
だが、レーサー時代から亜久里代表のキャラクターを知る者であれば、
「セナより早い」発言や「レーサーは通過点」発言と根っこは同じだと理解できる。
「有言実行」を公言すると同時に自分の「リミット」も明示する。
そうさせるのは恐らく、レーサー時代と同じ「自分の抱えるあらゆる責任」への自覚。
あまりに「バカ正直」過ぎるが故、逆に「ハッタリ」のように見えてしまうのだが、
そうした発言にこそ、亜久里代表独特の美学と良心が伺える。
無責任どころか責任感の塊のような亜久里代表。
だからこそ、たった128日で飛び込んだF1への「挑戦」は、
無謀な戦いなどではなく、常に「勝算」を頭に置いた上での戦いだった。
戦力的にも「レースをする」という能力に限るなら
ドライバー、チームスタッフともマンパワーには十分恵まれていた。
ただそれを支援するだけのスポンサーに恵まれなかった。
特に去年のメインスポンサー「SSユナイテッド」の
スポンサー料不払いで受けたダメージが大きかった。
そして、最も誤算だったのは
「F1レースからのカスタマーカー参戦の実質的排除決定」と
「本家・ホンダの予想以上の不振」であろう。
この二つのうちどちらかが無ければ、あと2〜3年は継続出来たかもしれない。
まず、カスタマカー問題だが、スーパーアグリが参戦準備を始めた頃、
マクラーレンやフェラーリによる「セカンドチーム設立」が現実味を帯び、
すでにバーニーやモズレーの賛同も得られ、秒読み段階とまでウワサされていた。
ならば、スーパーアグリも国内レースで繋がりの強いホンダからマシン供給を受け、
ローコストに参戦可能…となるはずだった。
ところがまず「コリン・コレス」という口やかましい分厚い壁が立ちはだかった。
さらに「ウィリアムズ」という頑固さでは誰にも負けない古株の鉄の壁が加わった。
その上「コンコルド協定」の再調印という最重要課題との時期が重なり、
それぞれのチーム同士のパワーバランスや思惑にも微妙な影響を与えた。
結果的に「2009年からすべてのチームがオリジナルマシンで参戦」する事が決定した。
スーパーアグリより予算が潤沢なトロロッソでさえ、
その決定により来季以降の計画がすべて白紙となり、チーム売却が本格化し始めている。
もし、当初の予定通り「マグマ・グループ」から資金提供されていたとして
果たして来季、スーパーアグリが戦闘力のあるオリジナルマシンを開発できたか?
いささか疑問の残る点ではある。
次にホンダの不振問題について。
去年の「オハナシにならない状態」に比べれば、随分マシではあるものの
2006年のような「第3のチーム」レベルにはほど遠いホンダ。
優勝請負人ロス・ブラウンを雇い入れたまでは良いものの
彼の緻密な戦略を即座に実行できるミハエル・シューマッハのような
「正しい資質を持ったレーサー」がいない状況では
フェラーリで起こしたような奇跡の復活劇の再現は難しいだろう。
去年1年間をムダに過ごした「ツケ」がとんでもなく高くついてしまったホンダ。
では、去年の失敗から何を学んだのか?
本当のところ、まだよく理解できていないような気がする。
その焦りが、「なりふり構っていられない」チームの雰囲気となって現れ、
5日に起きたイスタンブールでのアグリチームへのパドック門前払い…
となったのかもしれない。
そして、亜久里代表は、
ホンダのそうした「恣意行動」から
ある「メッセージ」を読み取った…のかもしれない。
亜久里代表にとって「ホンダ」は国内レースでまだまだお世話になるパートナー。
これ以上、彼らの機嫌を損ねるような言動は慎むのが当然…であろう。
記者会見の席上、淡々とした表情で受け答えを続けていた亜久里代表。
だが、
泣き言ひとつ言わず「レースをやってくれた」琢磨に対して
感謝の言葉を言おうとした瞬間、
グッとのどを詰まらせながら押し殺した言葉。
あの時、こみ上げてきた思いは「感極まる」なんて単純なものではなかったはず。
型落ちマシンであろうと「王者アロンソを食ってみせた」あの感動。
常に「挑戦」の文字に恥じない前向きな姿勢でしぶとく抗ってきた2年4ヶ月。
ホンダが今、学ぶべき事はスーパーアグリの残してきた道に転がっている気がする。
・・・・・・
スーパーアグリF1の撤退、そして解散。
泣こうが足掻こうが、留まれないチームは去らざるを得ない。
それがF1の無情な世界。 運・不運も実力。
勝ち負け以前に「まず生き残る事」がレースの大原則であるように
チームの興亡もまた純然たる生存競争の縮図でしかない。
ただ惜しむらくは「古き良きプライベートチーム」の残り香を持ったチームが
これを最期にF1サーカスの現場から(たぶん永遠に)消滅するであろう事。
そして、スーパーアグリF1が居なくなったパドックスペースには、
すぐ「オイルマネー」か「アジアンマネー」によってかき集められたチームが収まる。
ただし、そのチームが目指すのはコース上のトップチェッカーなどではなく、
「F1に群がるハゲタカ集団の懐具合を温める事」を第一目標とした
『売却益でガッポリ!チーム転がしレース』あたりが関の山であろう。…多分。
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登録日:2008年 05月 07日 19:18:12
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- (男)
- 福岡の片田舎でデザイナー兼ライター営業中。F1にハマったきっかけは、仕事関係で見始めた1987年のドイツGP。プロストとピケの麗しい姿に感動。
好きなレーサーは、ジル・ヴィルヌーブとアイルトン・セナ。好きなF1マシンはフェラーリ312T4。好きなF1マンガは『赤いペガサス』。好きなF1映画は『グランプリ』。好きな言葉はジル・ヴィルヌーブの『来年がやってくるってどうして言えるんだい? 』
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