「ヴィクトリア女王 世紀の愛」。 「バッタ君町に行く」と違い分かりやすさが足を引っ張る
ヴィクトリア女王 世紀の愛 / The Young Victoria
年の初めは文芸調の、それでいて重くない映画をと思い選んだのは、エミリー・ブラン主演のヴィクトリア女王物語。たとえば「ブーリン家の姉妹」のように"女王だって今のギャルと気持ちは同じ"というようなスタイルの映画かと思ったが、そうした部分はあるとしても極一部のみ。少女(公女)時代は母親とその愛人(?)コンロイに仕切られた籠の鳥状態。そこで"プリンセスになりたい"ではなく"次期女王になる運命を背負ってしまった"という苦悩を少し見せてくれるが、わりとあっさりと流される。
やがてヴィクトリアが女王になると"いつか王子様が"ではなく"自分で女王の夫となるべき男性を選ばなくてはいけない"となるのが面白い。そこには政治が絡んできて首相のメルバーン子爵が登場する。首相にして女王の相談役というのは微妙な位置にある。王様は死ぬまで王様だが、政治家はいつか辞めてしまう。しかしここで注目なのはメルバーンを演じるポール・ベタニー、もちろん彼が演じているのは事前に知っていたがパッと見には彼とは分かりづらい。彼の特徴である三白眼が目元のメイクと髪型で隠されている、まあ声を聞けば分かるのだが。彼の演技が一番いいと思う(次は犬)。
原題がThe Young Victoria というところから分かるようにヴィクトリア女王の全人生を描かない。アルバートとの結婚、暗殺未遂、出産あたりで映画は終わる。夫に先立たれた姿などはない。エミリー・ブラントのヴィクトリアは、たとえばケイト・ブランシェットのエリザベスとは違い、女王として生きてゆくことを決めた凄みなどはなく役不足(誤用)なのだが、それはそれでいい。女王の心情深くまで入り込まないのはこの映画の弱点だ。
夫アルバート役のルパート・フレンドは情けない男の役だが、叔父や兄からのプレッシャーを必要以上に強調しないのはいい。しかしこの人はヘタレと違う情けない役が本当に似合うようになった。その意味では貴重な人材だ。女王の母親という地位を獲得できなかった母親を演じるのはミランダ・リチャードソン。ウィリアム国王役のジム・ブロードベンに罵倒されるところがハイライトだ。愛人と二人で裏工作をかけるところを前面に出したらもっとドロドロしただろうが、この映画はその気はない。むしろメルバーン視点で描いたほうが面白かったかもしれない。
ということで国王と政府の関係など興味深い点があまり掘り下げられない軽めの仕上がりの映画なので、これならテレビ映画のほうがいいのでは?と思ってしまうが、映画にしないと衣装などにお金をかけられないのでこれでいいのかもしれない。衣装で面白かったのはパンフレットにもあったが"王になること"="前の王が死ぬこと"だから最初の衣装は喪服であるというのはなるほどと思った。最後の曲はシニード・オコナーだったのは意外だった。
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登録日:2010年 01月 03日 23:23:51
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