「抱擁のかけら」 映画愛では「パラノーマル・アクティビティ」より上
抱擁のかけら / Los abrazos rotos / Broken Embraces / Broken Hugs
ペドロ・アルモドバルとペネロペ・クルス、4度目の組み合わせとして注目されるがペネロペが主人公というよりは映画監督・脚本家マテオ・ブランコ(ハリー・ケイン)のミューズとして登場し、劇中劇ではヒロインを演じる。マテオは事故で視力を失いそれ以後はハリー・ケインを名乗り脚本家に専念する。オープニングでハリー・ケインはナンパした娘をくどく。目が見えないので髪から顔、身体をさわってゆくので、実は彼女はゲイだったというオチがつくのかと思ったらふつうの女性だった。この映画は悲劇はあるが基本的にはコメディなのだ。
レナ(ペネロペ・クルス)は金持ちの愛人で女優志望、オーディションを受けてマテオの映画に出演するが二人はすぐに深い関係になる。もう一人重要な役割を果たす女性がマテオ(ハリー)のエージェントであるジュディット(ブランカ・ポルティージョ)、目が見えないハリーの手伝いもする。その複雑な感情が見もの。
ペドロ・アルモドバルといえば女優だが、今作は男優のほうも面白い。クリストファー・プラマー風ルックスの金持ちエロジジイのエルネスト(ホセ・ルイス・ゴメス)が見せる嫉妬の嵐はすごい。そしてその息子は親に束縛され、命令されてマテオとレナを監視する。その様はストーカー状態で不気味だ。このときの風貌が一時期のフィル・スペクターを思い出させるのは偶然か、この気持ち悪さが最高。じつは映画自体ももこの息子がマテオ(ハリー)のところに映画製作の話を持ってゆくところから始まる。
物語はハリーが過去を振り返り、レナの思い出を乗り越える。その間にあった謎を追求するミステリー形式なのだが、それよりは自身の過去作をパロディにした劇中劇や引用された「イタリア旅行」などに見える監督の映画愛の色が強い。レナを失うという悲劇がくることは分かっているのに湿っぽくなることなく乾いた感じで切り取られた情景の数々や相変わらず華やかな色使いが印象に残った。少々まとまりがないだけにいわゆる傑作ではないかもしれないがアルモドバルの近作では一番好きかも知れない。ラストに見えるレナの写真の数々、あのショットは二人の愛の証拠というよりはストーカーの一方的な愛も連想させるものだが、この監督はそれも好きだ。
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登録日:2010年 02月 08日 01:26:34
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