「グリーン・ゾーン」。 「オーケストラ!」と同じく題材と演出の喰い合わせが悪いが、それは狙いか?
グリーン・ゾーン / Green Zone
今さらの話だが、「ハート・ロッカー」は反ブッシュ、愛国的と正反対に取る人に分かれたのは面白かった(個人的には反ブッシュと解釈)。映画としてはイラク戦争の意義など監督の主張を表に出さずに爆弾処理に命を懸ける職人(日本には軍人を肯定的に描くこと自体が嫌いな人がいるようだ)に重点が置いて、どちらの方面からも攻められないようにしてあった。それがずるいという人もいるだろう。その一方でアメリカ兵がイラクで置かれている宙ぶらりんの状態こそが、イラク戦争におけるアメリカの立場そのものだという主張だと取れる。そしてこの「グリーン・ゾーン」が扱っているイラク戦争の大義である大量破壊兵器(WMD)の存在という今や誰でも知っていることを題材にしているのだからイラク戦争に批判的な立場であることは明白だ。それだけに攻撃もされやすい、しかもそれをやるのは外国人監督ポール・グリーングラス(イギリス人)だ。
マット・デイモンは「ボーン・シリーズ」ポール・グリーングラスの再タッグだが今回演じるのは陸軍のロイ・ミラー 。WMDの捜索をしながらその場に行くとないという事態が続き、ミッションに疑問を感じるようになる。そこにCIAのマーティン・ブラウン(ブレンダン・グリーソン)、ウォール・ストーリト・ジャーナル記者 ローリー・デイン(エイミー・ライアン)が絡み、国防総省情報局 クラーク・パウンドストーン(グレッグ・キニア)を追い詰めようとする。ミラーは事件に深入りして軍人のわりには好き勝手に行動し、ときには危ない目にあう。これが「ボーン・シリーズ」なら元スパイなので何をやってもある程度は許されるのだがここではしっくりこない(どうせならミラーが他の組織の人間にでもすればよかった)。組織間の争いや駆け引きもあまり盛り上がらずご都合主義だ。
監督はこれをポリティカル・アクションにもシニカル・コメディ(ふつうならそうしそうだ)にもする気はないようだ。演出はいつものシリアス調で、臨場感は満点。「ボーン・アルティメイタム」のカメラ・ワークはやりすぎだと感じていたが、ここではそれより節度があって好ましい。それでもラスト近く暗い上に敵味方が分かりづらい、手持ちカメラの映像はここ以外酔うこともなかった。この映画で感じた居心地の悪さがアメリカ人にとってのイラク戦争を表すとしたら、先にあげたような欠点の見方は変わる。
"何でアメリカ兵がイラクにいるのか、それは誰のためなのか"というような疑問。「ハート・ロッカー」では治安のためにいるはずのアメリカ兵が(一枚岩ではない)イラク人に狙われるという不条理を裏テーマとして爆弾処理という職人を描いていた。一方「グリーン・ゾーン」は脚本家にオスカー(「L.A.コンフィデンシャル」)とラジー(「ポストマン」)を持つ男ブライアン・ヘルゲランドを起用し、戦争の大義が嘘だったという笑うしかない状態をゆるゆるな設定や脚本で表す(最後のイラク人の行動などは他の映画なら許せないレベルだ)。それをシリアス・アクション演出で見せ、ジョン・パウエルの音楽がまた盛り上げる。食い合わせは悪いかもしれないが、アメリカ人にとってのイラク戦争とはそういう宙ぶらりんの存在なのだと言っているかのようだ。
マット・デイモンは「ボーン・シリーズ」の後なので軍人も余裕でこなすが新しいものを見せるまでは行っていない。エイミー・ライアンは「ゴーン・ベイビー・ゴーン」「チェンジリング」とヨゴレの役が多かったが、ここでは美人記者役、さすが役者だ。それよりグレッグ・キニアがまじめに国防総省の人をやっているのがおかしかった。ブレンダン・グリーソンは余裕。フレディ役のハリド・アブダラは「君のためなら千回でも」の人かどこかで見たことがあるはずだ。「ユナイテッド93」にも出ていたらしい。
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登録日:2010年 05月 10日 21:52:43
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