「ザ・ウォーカー」。 「ブライト・スター」より娯楽作と割り切った一本
ザ・ウォーカー / The Book of Eli
終末映画が目立つようになった。以前は世紀末映画とも言っていたがさすがに21世紀に入ってそれは使いづらい。だいたい映画が栄えたのが20世紀後半なのだから、世紀末とリンクするのは自然だ。冷戦、キューバ危機、核(スリー・マイル事故を含む)、環境問題等への不安がそれらの映画の根底に流れていた。世紀末が実際に近づいたころには冷戦も終わり、争いや不安も地球規模から局地的へとなる混沌の時代へとなる。それらが21世紀になって911という形で表面化したとうのが現在までの流れと言ったところだろう。その間にバブル経済が生み出した倫理観の欠如など精神面の問題も見逃せない。あと砂漠や荒地が好きな映画関係者も一定数いると思う。
この「ザ・ウォーカー」の舞台はおそらく核戦争後のアメリカ、映画は薄暗い林から始まるが昼間の映像は灰色というよりは、黄砂後のように茶色から黄色に見えるように画像処理がされて、不毛の地と化したアメリカを表す。主人公のイーライ(デンゼル・ワシントン)はある本を持って西へ西へと30年間歩いている。その本の内容についてはすぐに見当がつくが、ラストには少しツイストがある。しかしそれを追いかけて騙された、初めから分かったというような映画ではない。だいたいその本を持っていれば最強戦士になれるような映画なのだからその辺は娯楽作と割り切って楽しむべきだ。本格的アクションは初というデンゼル・ワシントンだがうまくこなしているように見えるのは、彼がかもし出す貫禄か?そうだとしたらそれも力量のうちだ。
イーライが立ち寄る街を仕切るのは水の利権を押さえているカーネギー、演じるのはゲイリー・オールドマン。もちろん出演作すべてを見ているわけではないが、このところいい人(普通の人)が多かったので悪役は久しぶりのはず。キレまくっている演技ではないがやりすぎ手前で止めているところは好感が持てる。ミラ・クニスはヒロイン役だがあまり目立てずに、むしろ後半の老夫婦のほうがいい味を出している。
監督はヒューズ兄弟、前作「フロム・ヘル」は原作グラフィック・ノベルを読んだあとで見ると、難しい題材に挑戦して玉砕したとの印象がある。その視点を抜きにしても映画自体の雰囲気は悪くなかったと思う。本作でも色使いなどは終末映画にふさわしいものにして、結果として日本の劇画と言うか時代劇っぽくなっている(ネタバレ回避のために作品名は言えない)。
救世主はアフリカ系、敵役はイギリス人、ヒロインはエキゾチック・ビューティーと平均的アメリカ白人がいない。これをオバマ時代の映画というよりデンゼル・ワシントンありきの映画だと見るべきだろう。どうでもいいかずっとロン・パールマンだと思っていた人がトム・ウェイツだった。ウォーカーが聴く音楽はアル・グリーン、70年代のモータウン歌手のほうがふさわしいと思うが、さすがにネタバレになるか、では"ゴー・ウェスト"はどうだろう、こちらも狙いすぎになってしまう。さあ、次は実写版「子連れ狼」だ。
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登録日:2010年 06月 22日 23:51:11
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