「パリ20区、僕たちのクラス」。 「エルム街の悪夢」より作りこまれた世界観


パリ20区、僕たちのクラス / Entre les murs / The Class

2008年のカンヌでパルム・ドールを受賞したフランス映画、パリ市内の公立中学校のクラスを追うというドキュメンタリー・タッチの映画、パッと見ると生徒にアドリブさせているように思うが、じつは1年かけて作り上げたものだそうだ。それでも十分生々しいが、この映画に対してリアリティという言葉を使うのは危険だ。それでもドキュメンタリー風に感じるのは投げっ放しになっているエピソードが多いから、終盤のためにある生徒に関することは関しては結論を出さないといけないが、それ以外は教師のプライベートなども含めて回収されないものが多い。

邦題にあるパリ20区は旧植民地をはじめとする移民が多く、映画には仕事を求めてフランスにやってきた中国人もいる。さすがにフランスだけあって中学生も生意気であまり共感できるような人間が出てこない。特にエスメラルダとクンバの女子極悪コンビは終始教師に突っ込みを入れるなど一番酷い。そんな中で中国人の生徒だけは例外だ。それは彼がアジア人だからというのではなく、フランス語があまりよくできないので自己主張をあまりしないからだ。逆に言えば個人主義というだけでまとめるのが大変なのに、これだけアイデンティティがばらばら人間をまとめるのは至難の技に違いない。ここで思い出すのはサッカーのフランス代表だ。映画の中にはジダンの名前も出てくるし、アフリカ系の生徒の会話にはサッカーのアフリカ杯(アフリカ・ネーションズ・カップ)の話題が出てくる。地元開催で優勝したジタンをはじめとした移民の子孫が大きな戦力となった。よ続く2002年と2010年は予選リーグで敗退したが、それを責めるよりは2006年のチームをよく立て直したものだと感心する。98年のチームを見て他民族国家(チーム)万歳というのは簡単だが、彼らを常にまとめられる方法論など誰も持っていないのだ。

そしてこの教室をまとめる教師役フランソワ・ベゴドーは原案となる「教室へ」を書いた本物の元教師。生徒たちと同じ視線で語り、授業に取り組む。その一方で行き過ぎて生徒を挑発して失言したりして人間味がある。

フランスの学校制度で面白いのは教師たちの成績会議に生徒代表がオブザーバーとして参加できる点、ここに参加しているのは例のコンビ。持ち込んだ菓子を食べておしゃべりをするという予想通りの最悪の態度。でも生徒たちの評価をチェックして報告している。彼女たちもクラス全体のことを考えているようだ。いや本当はクラスを支配したいだけなのかもしれない。

ドキュメンタリー調といってもどこかで物語を締めないといけないわけで、ここではアフリカ系の少年のトラブルがそれに当たる。彼の母親が学校に呼ばれるが彼女はフランス語が喋れない。こうした移民問題を語りながらフランスの公立中学校に退学制度があることを教えてくれる。問題がある生徒はこの制度を使って転校させられる。なんともシビアだ。

最後でエスメラルダはプラトンの「国家」を読むなどいいところを見せる。その一方でこの1年で何も学べなかったという生徒もいて教育の難しさを感じさせる。ラストは中庭でのサッカー、いつも気難しい顔をしていた校長がこの中にいて意外性がある。終わり方は唐突だが、この切り上げ方はこの映画にふさわしいものだと思う。

カテゴリー[ その他映画 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2010年 07月 03日 01:05:02

コメントを追加

Trackback

この記事に対するトラックバックURL:

カレンダー
< 2010年 07月 >




1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
プロフィール
JK
エミー・ファン!ブログ
最近のトラックバック
お気に入りリンク
検索