「アイルトン・セナ ~音速の彼方へ」。 「ナイト&デイ」同様にどの視点から描くのかが不明なのが残念
アイルトン・セナ ~音速の彼方へ / Senna
どうして今という感じがするが。セナの生誕50年記念らしい。セナの事故死は記憶にはあるがその以前のことはあまり知らなかったのでそこを見られたのは良かったのだが、それこそセナのことは名前しか知らないという層には説明不足だろう。カー・レースや優勝争いをメーンにした映画ではない(ブラジルGP初優勝はもっと見たかった)。
ドキュメンタリーだが全体をナレーションで進めることもなく、映像は当事のもののみ。今の発言(つまりこの映画用のコメント)は数人で映像としては出てこないのでよく分からないがセナ家の人、ブラジルのジャーナリスト、そして最後の方のキー・パーソンというべきF1ドクターだと思う。F1関係者の今の発言はなく、アラン・プロストはもちろんミハエル・シューマッハのも出てこない。シューマッハを出すとどちらが優れたドライバーかという話になるし、プロストは敵役にされるのでしかたないだろう。
気になるのは映画の主眼がどこに置かれているかで、製作はなんとワーキング・タイトルの名前がある。ブラジル人視点ならもっと社会的背景を織り込んだ作品になるだろう。日本贔屓だとは思わないが日本(フジテレビ)の映像も多く、セナが亡くなった直後の今宮純、川井一仁、三宅アナウンサーの映像もある。逆にホンダの話は出てこないというバランスなのだ。日本視点やプロストの祖国であるフランス視点で作ってみるのも面白いかもしれない。
映画はカート時代を経て、F1参戦から始まりデビュー直後モナコでの大健闘(ブラジルの実況はシンクロしていない?)から天才の閃きを感じさせる初期の姿を写す。やがて勝てるドライバーになったころに登場するのがライバルとして登場するのがアラン・プロストである。彼はこの映画の敵役で、悪役はプロスト贔屓のフランス人会長ジャン・マリー・バレストルだ。日本グランプリでの2年連続追突があり、プロストの"チャンピオンになるためには1位になれなくてもポイントを稼ぐ"という考えは"どのレースでもトップを目指すという"セナとは相容れないとしてもプロストはあくまでもドライバーだ。やはりセナに対してきつい処分を下す会長の方がセナにとって悪人に見える。そんな姿が見られるドライバー・ミーティングの映像(おそらくはあまり見られないものなのではないか)が一番興味深いものだった。また政治力といえばチーム移籍に関することももう少しあると全体的に分かりやすくなったのではないかと思う。
映画は最後の悲劇に向かう。セナが不得意な政治で勝ち取った車があまりよくないのがなんとも悲しい。そして1994年サンマリノグランプリ、金曜日にはセナの後輩ブラジル人ドライバー、ルーベンス・バリチェロがクラッシュ。土曜日にはラッツェンバーガーが事故死した。映画はセナの前に起きた二つの事故を無視しない。そして運命の日曜日、映画ではオンボードの映像が流れる。見ている方としては"ここはスピードを出さなくていいから大丈夫"とか"このコーナーはひやひやする"とか考えながらいると、最後の瞬間が訪れる。ドクターは飛び出したパーツが少しでもずれていれば助かっただろうと言う。
ブラジルの国葬の様子が流れ。セナがブラジルの希望であったことが示される。この1994年といえばワールド・カップで24年ぶりにブラジルが優勝した年である。その間に西ドイツやアルゼンチンが二度優勝したことを考えればブランクの大きさが分かる。あのチームが好きでないファンもいるだろうが(個人的には1998年の決勝敗退の方が印象深い)、その後に2002年でも優勝しているので、ブラジルのサッカーがいい選手を揃えれば勝てるようになったことは事実だろう。裕福な家庭に生まれたセナがカー・レースというヨーロッパ価値観が支配する世界で活躍していた時期に、ブラジルの得意分野であるサッカーが低迷していたのだ。
エンド・ロールで流れるのはシコ・サイエンス&ナサォン・ズンビのマラカトゥ・アトミコ、シコは期待されながらも交通事故死したシンガーである。
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登録日:2010年 10月 16日 18:15:04
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