「エリックを探して」。 「人生万歳」とは違い不得意分野に挑戦をどう見るか


エリックを探して / Looking for Eric

社会派監督ケン・ローチが挑んだコメディ、なるほど主人公エリック・ビショップはおなじみの労働者階級だが、それに対する深い追求はない。彼はバツ2(もしくはそれ以上)の独身で、最初の元妻は確実にエリックより階級が上。娘のサムは30で子供を産み、大学卒業間近。今のエリックの家には別の元妻の連れ子の少年二人と暮らしている。一人は白人で、もう一方はアフリカ系だと言うことがこの元妻がだらしない生活をしていたことを示している。

実はこれを見る前にケン・ローチとエリック・カントナと言う組み合わせだけの情報しかなく、予告編もほとんど見なかった。舞台のマンチェスターはエミー・ロッサムがリメイクする「Shameless」のオリジナルの舞台であるので、どこかで「Shameless」を見ていたり、"「Shameless」みたいだぜ"という台詞があったりするのではと期待していた。ところが実際にはそれ以上の意味を持っていた。他でもないエリックの義理の息子ライアンを演じるジェラルド・カーンズはオリジナル「Shameless」のギャラガー家の一員だ。調べてみると製作に入っているフィルム4は「Shameless」を放映しているチャンネル4の関連会社なのだから当然意識した配役なのだ。

ケン・ローチ作品の面白さといえば一般人にしか見えない配役だ(下手と言うことではない)。今回のエリックを演じるスティーヴ・エヴェッツはロック・バンドにもいたそうだがそうは思えない見事なふつうっぽさだ。それに対してライアンは「Shameless」を知っている人には既知感があるのでいつものローチ作品とは違うと感じるだろう。ジェラルド・カーンズ演じるイアン・ギャラガーはきょうだいの中で一番いりくんだキャラクターである。ここではトラブルを持ち込む少年と言うわりとふつうの役を演じている。

物語はエリックが交通事故を起こすところから始まる。パニック障害が悪い方に作用したのだ。最初の妻との離婚原因もそれだったのだが当事はそれを病気だと思わなかったのがひとつの悲劇となっている。事故後はサムの赤ん坊を預かることになったり、息子たちとの関係は悪いままだったりとエリックを悩ますことが起こり。壁に貼っているエリック・カントナのポスターに話しかけるとカントナが答えてくれる。カントナのアドバイスにより自信を回復するということにはならない。この小さなトラブルが重なってドツボにはまってゆくあたりはケン・ローチならではの見せ方だ。

やがてライアンがつるんでいるギャングが使用した銃を持っているように命じられる。作品の雰囲気からしてそんなにビターなものにはならないと分かっているのだが、それでもライアンが脅迫されるところなどはいつもの同じ。そんなわけで最後の大団円に向けてどう決着をつけてくれるのかと思いつつ見ていると、少し現実離れやり方で決着する。これに関しては賛否両論があるだろうが、個人的には仲間と一緒に解決するというのは良いとして、狭いコミュニティの利点を利用して相手の弱点を掴むといったような方法のほうが良かったと思う。それでもケン・ローチがなれないケレン味ある演出をしている姿が微笑ましく感じてしまった。「この自由な世界で」のときにも思ったが、単独の作品としてみると微妙なのだが今まで積み上げてきた社会派という看板を踏まえて見て見ると色々な見方ができて良いではないか。

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登録日:2010年 12月 26日 22:22:45

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