2009年 05月 03日
「スラムドッグ$ミリオネア」
【9月14日 AFP】カナダ・トロント(Toronto)で開催中の第33回トロント国際映画祭(Toronto International Film Festival)で13日、最高賞の観客賞(People's Choice Award)に英国のダニー・ボイル(Danny Boyle)監督の『スラムドッグ・ミリオネラ(Slumdog Millionaire)』が選ばれた。
≫続きを読む…
(c)AFP
スラムドッグ$ミリオネア / Slumdog Millionaire
小説「ぼくと1ルピーの神様」を読んでから予告を見ると、かなり脚色されていることが分かる
(1)原作は「クイズ・ミリオネア」じゃない
権利関係でもめることを避けたのか「ミリオネア」ではなく、二番煎じのクイズ番組となっている。そのために運転資金が足りなくて番組開始時には最高金額の賞金を出さず、人気番組となって余裕が出来たらそれを出すことにしているために主人公が正解すると困ると言うことになっている。ちなみに映画の製作に名を連ねているCeladorはオリジナルの「ミリオネア」を作った会社なので何の問題もない。
(2)主人公の名前が違う
小説はではラム・ムハンマド・トーマスとなっており、この名前自体がヒンドゥー、イスラム、キリストと3つの宗教が混ざり合っていて、その由来に関する章もきちんとある。これからも分かるように原作にはインドにおける宗教問題が度々出てくる。
(3)捜しているのは恋人ではなく、友人
もちろん主人公が思いを寄せる人はいるが、全体の流れでは友人の方が重要。ちなみに映画とは違い、きょうだいはいない。
ダニー・ボイル監督以外は無名と言われるが、音楽のA・R・ラフマーンはインド映画に詳しくない人間でも名前くらいは知っている。アメリカでインド系の俳優と言えば先ごろホワイトハウス入りを宣言して俳優を休業すると宣言したカル・ペンが有名だろうが、この映画には彼が主演した「その名にちなんで」でペンの父親を演じたイルファーン・カーンが主人公を取り調べる警官を演じている、彼は「マイティ・ハート」や「ダージリン急行」にも出演しているので見たことがある人もいるだろう。
オープニングで主人公のジャマールが警察で尋問を受け、拷問までされる。そして少年時代のスラムの話へと流れる。ここで連想する映画はブラジルの「シティ・オブ・ゴッド」だが、あれほど殺伐とはしていない。映像は生き生きとしているがそんなには生々しくはない。そこがイギリス人スタッフによるインドを舞台にしたという外部からの視点の映画らしくて悪くない。街や列車の中を走る場面の数々は印象的で見所のひとつになっている。全体として驚きはないがテンポよく見せてしまうだけのものはある。ジャマールの便所ダイヴ、ウンコまみれの画だけで映画史に残る。
原作と違いジャマールにはサリームという兄がいて、思いを寄せるラティカに幼い頃に知り合っている。ラティカの設定はあまり成功していないように思うが、兄を持ってきたのは成功している。兄弟で善と悪を分けるという設定はよくあるが、ここで純粋にラティカを追い求める弟の姿がある種のファンタジーであることを示している(ちなみに原作を読んでの感想はインド版わらしべ長者だった)。逆に言えスラムから上り詰めても兄のようにギャングになるのが精一杯なのだろう。青年ジャマールの顔は穏やかというか修羅場を乗り越えてきた人間にしては陰がないのだが、案外そんなものかもしれないし、このファンタジーの中ではこれでもいい。この映画の成功に対して、映画の内容やスラム在住の子役に関して色々とネガティブな報道がされ、事態は単純でないと思うが、「未来を写した子どもたち」の感想にも書いたように可能性を奪い取ることだけはやめてほしい。
全体のストーリーとしては原作の荒唐無稽な部分を削っているのはいいとしても、あの人とあの人が実はつながっていたと言うような面白味はなく。流れとしては一方通行なのは少々残念。多くの人が街頭テレビで見守る最後の問題が比較簡単な問題なのには少々白けるが、電話がつながるかのスリルとラティカの答えているときの清々しい表情がとても良い。あとこの映画は英語字幕の付け方がけっこうおしゃれだ。
A・R・ラフマーンの音楽は最上のものとは思わないがいい仕事をしている。最後の"Jai Ho"も映像込みだと盛り上がる。でも歌詞を付けたほうがよかった。ラティカのテーマ?はエンヤの"May It Be"に似ている。M.I.A.の曲も後から2008年を振り返ればグラミー賞にノミネートされたどの曲よりも記憶に残ることになるだろう。それにしても自分の習慣とは言えエンドロールを見ないで席を立つ人がいるのはもったいなさ過ぎる。ただでさえ面白いのに、小さなジャマールとラティカにまた会えるのだから。
カテゴリー[ その他映画 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2009年 05月 03日 22:32:28
- プロフィール
- JK
- エミー・ファン!ブログ
- 最近のエントリー
- [12/31] リンク
- [01/27] エミー・ロッサム、ターゲット×ジェイソン・ウー発売記念イベントに出席
- [01/14] Wマガジ&ドンペリのGG賞プレ・パーティにエミー・ロッサム出席
- [12/20] 「コンテイジョン」。 「ラブ&ドラッグ」よりキャストが多いがうまく操れていない気が
- [12/12] 「ラブ&ドラッグ」。 「ラブ・アゲイン」より素材と演出の相性が悪いか?
- [12/10] 「ラブ・アゲイン」。 「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」同様整理されていない部分が残念
- [12/08] 「レベッカ テイラー」新ブティック、オープニング・パーティにエミー・ロッサム出席
- [12/05] 「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」。 「50/50」より作家性はよく出ているが
- [12/03] 「50/50 フィフティ・フィフティ」。 「ラビット・ホール」より表面上は軽いが内面は十分シリアス
- [12/01] 「ラビット・ホール」。 「ウィンターズ・ボーン」より狭い世界だがそれをうまく使っている
- 最近のコメント
- [10/15] 「ダークナイト」 sue
- [04/04] 「ブルーノ」。「マイレージ、マイライフ」と比べると脚本に工夫が足りない JK
- [03/29] 「ブルーノ」。「マイレージ、マイライフ」と比べると脚本に工夫が足りない MAX
- [11/21] 「かけひきは、恋のはじまり」 UK-Japan 2008 WEBサイト運営事務局
- [08/07] イランの一面が見える「ペルセポリス」 JK
- [08/04] イランの一面が見える「ペルセポリス」 Franchesca
- [04/06] AFP BB News 検索、リンク仕様の変更 KLE4c
- [04/04] AFP BB News 検索、リンク仕様の変更 JK
- [04/04] AFP BB News 検索、リンク仕様の変更 KLE4c
- [01/30] 「マリー・アントワネット」キルスティン・ダンストはブサイクか否か JK
- 最近のトラックバック
- 月別アーカイブ
- 2013年 12月 [1]
- 2012年 01月 [2]
- 2011年 12月 [7]
- 2011年 11月 [2]
- 2011年 10月 [4]
- 2011年 09月 [6]
- 2011年 08月 [7]
- 2011年 07月 [12]
- 2011年 06月 [7]
- 2011年 05月 [7]
- 2011年 04月 [4]
- 2011年 03月 [6]
- 2011年 02月 [5]
- 2011年 01月 [6]
- 2010年 12月 [10]
- 2010年 11月 [6]
- 2010年 10月 [8]
- 2010年 09月 [7]
- 2010年 08月 [6]
- 2010年 07月 [7]
- 2010年 06月 [10]
- 2010年 05月 [6]
- 2010年 04月 [8]
- 2010年 03月 [12]
- 2010年 02月 [10]
- 2010年 01月 [5]
- 2009年 12月 [12]
- 2009年 11月 [13]
- 2009年 10月 [14]
- 2009年 09月 [12]
- 2009年 08月 [4]
- 2009年 07月 [8]
- 2009年 06月 [6]
- 2009年 05月 [10]
- 2009年 04月 [4]
- 2009年 03月 [10]
- 2009年 02月 [6]
- 2009年 01月 [8]
- 2008年 12月 [11]
- 2008年 11月 [14]
- 2008年 10月 [7]
- 2008年 09月 [7]
- 2008年 08月 [5]
- 2008年 07月 [6]
- 2008年 06月 [7]
- 2008年 05月 [16]
- 2008年 04月 [10]
- 2008年 03月 [5]
- 2008年 02月 [9]
- 2008年 01月 [5]
- 2007年 12月 [10]
- 2007年 11月 [6]
- 2007年 10月 [9]
- 2007年 09月 [3]
- 2007年 08月 [8]
- 2007年 07月 [5]
- 2007年 06月 [10]
- 2007年 05月 [4]
- 2007年 04月 [11]
- 2007年 03月 [7]
- 2007年 02月 [8]
- 2007年 01月 [9]
- 2006年 12月 [17]
- 2006年 11月 [10]
- 2006年 10月 [17]
- 2006年 09月 [8]
- 2006年 08月 [13]
- お気に入りリンク
- 検索