2009年 11月 29日

「戦場でワルツを」。 「母なる証明」よりも伝わるシリアスさと現場の不条理


戦場でワルツを / Vals Im Bashir / Waltz with Bashir

理解しにくい西アジア~中東を題材にしたアニメーションというとイランを描いた「ペルセポリス」というのがあった。あちらはコミカルな部分が多かったのに対してこちらはかなりシリアスなドキュメンタリーだ。「ペルセポリス」がイラン革命からイラン・イラク戦争の中でふつう(じつはそうでもないのだが)に生きる人々の姿や戦争を推し進める政府からの影響を描いた映画とすると、こちらははあくまでもひとつの事件(とそれを引き起こした時代)に関することを深く掘り下げた映画になっている。ただこの事件や戦争がイスラエル人にとってどこに位置されるかまでは日本人には分かりにくい(レバノン人にとっての意味のほうが大きいのかもしれない)。

重い題材を無理やり大げさにすることはなく、アニメという手法を使っているのでその重さは減るものの、ある部分は濃縮されていて思ったより効果的だ。ただ証言する人たちの細かい表情が分からないというのはやはり残念。印象に残った場面は原題にもなった乱射しながらバシールとワルツを踊る場面と泳いで逃げる場面。重い映画ではあるが音楽の一部は英米の曲がうまく使われていて、そこで緊張を緩めることができて映画の中でいいアクセントになっている。

映画としては監督の飛んでいた記憶が次第に核心にたどり着く。彼が直接係わったことではないとしても、彼が目にしたものの衝撃は伝わってきた。20歳そこそこでこんな体験をしたらそりゃ心が壊れるのは当たり前、しかも徴兵制の国だ。あくまでも監督個人の視点から描かれているために、事件の問題点(イスラエルが抱える様々なこと)に踏み込みはしない。そこは批判するより割り切って見るほうがいいだろう。ただ"ドキュメンタリー映画としてはずるい、これはアニメ映画としては反則技だ"と言いたくなる気持ちはわかる気がする。

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登録日:2009年 11月 29日 00:08:30

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