2010年 02月
「コララインとボタンの魔女」。 「シャネル/ストラヴィンスキー」より新世界へ踏み出す様子描写がうまい
いまや"ティム・バートンの"がつくようになった「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」だが、監督はストップ・モーション・アニメにこだわるヘンリー・セリックだ。バートンはロシア民話を基にした「コープスブライド」を作り、セリックはニール・ゲイマンの児童文学を映画化した(ゲイマンに関しては小説を何冊か読んだし、最近「サンドマン」や「デス」といったコミックも読んだのでなじみがあるが、「コラライン」が異色であるのは間違いない)。これらを比べて二人の資質を論じるほど詳しくはないが、「コラライン」では別のママが怖くなったときのカクカク感、映画オリジナル・キャラクターであるワイビーが登場するときのゴーストライダー感(つまりはガイコツ感)が印象に残る。しかしそれよりインパクトがあるのは二人の老女の舞台、最高にビザールでいい。
またストップ・モーション・アニメに関する苦労は素人が考えてもどれだけ大変かは分かる(でも後半にある世界が崩れる様子はCGを使っているのもしれない。ただし画としては悪くない)。とくにコララインの髪の毛にはどれだけ力が入っていることか!オープニングからコララインの人形を作るところからハートわしづかみ、あの人形を見ていると「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」のサリーを思い出す。またキャラクターとしてはあちらとこちらの世界を行き来する黒猫が気に入っている準主役といっていい。
別世界で色々な体験をして、元に戻るというと「アリス」や「千と千尋」を持ち出すまでもなく良くあるが、最近では「かいじゅうたちのいるところ」があった。ストーリー展開はこちらのほうがうまい。これは原作が絵本の「かいじゅう」と児童文学の「コラライン」の違いというより脚本の出来の差だ。「かいじゅう」のマックスは別世界でやるべきことが明確でないので見ていて不安を感じる。「コラライン」では別世界に一気に行くのではなく初めのうちは戻れるし、悪くない世界にも思える。次第に状況が悪くなるのは定石どおりだがそのもって行き方がうまい。"コラライン、キャロライン"、"ワイボーン、ワイビー"といった名前が持つ力の話は「千と千尋」で同じ。自分(コララインや別のママ)にとって都合の良い世界は誰かを犠牲にしてはじめて成り立つので、自分が支配者にならないと実現できないのだ。好奇心が高い少女がそれなりに責任感を持つようになるまでがうまく描かれ話に安定感がある。
声の出演はコララインにダコタ・ファニング、そろそろ大人になってきたダコタだが、ここでは自分より年下の子のわがままさを出して好演、妹エルだとこうはいかないだろう。日本語版は榮倉奈々、どちらかといえば下手ではあるが、それゆえに少女っぽさは出ているように思う(それがいいことなのか、吹替え製作者の狙いなのかは分からないが)。母親を演じるのはテリー・ハッチャー、家事もあまりしない母親というのはドラマ『テリー・ハッチャー』のイメージを引き摺っているようだ。日本語版は戸田恵子、こちらは別のママとなってからの怖い人格になってからが聞き物。劇団ひとりの黒ネコ皮肉屋っぽくて良かった。また音楽も予想以上に良い。ひまなときには立体メガネを外してみるのも面白いかも。
カテゴリー[ その他映画 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2010年 02月 28日 19:54:33
「シャネル&ストラヴィンスキー」。 ツカミは「Dr.パルナサスの鏡」と同じくらいだが次第に失速
シャネル&ストラヴィンスキー / Chanel Coco & Igor Stravinsky
2本のシャネル映画を見たからにはこれも見ないといけないと思い鑑賞。出だしはとても良い。恋人ボーイにコルセットを外させるシャネル。一方「春の祭典」の初演が非難轟々となってしまうストラヴィンスキー。これは時代の一歩先を行く芸術表現がいかに時代に受け入れられて行くか、いかに新たな時代を切り開いて行くかを扱った映画になると期待した。ところが途中からはシャネルがストラヴィンスキーを郊外の別宅で囲い、パトロンになってからは、は単にこの2人を扱っただけの物語になってしまった。
白と黒が強調された世界でシャネルを演じるのはアナ・ムグラリス、自立した女をがんばって演じていると思うが、こちらにそう感じさせるということはやや力不足なのかもしれない。香水"N°5"誕生秘話としてはタバコを吸い過ぎるのも気になった。そして香りと映像表現の相性の悪さに対する工夫が決定的に足りない。シャネルと妻の間で悩み、不機嫌そうなストラヴィンスキーを演じるのはマッツ・ミケルセン。こちらのほうがシャネルより感じを捉えていると思う。しかしこの映画で一番印象に残ったのはエレーナ・モロゾーワ演じるストラヴィンスキー夫人だ。見事な薄幸顔、赤毛に眉のない顔、不健康な白い肌で画面をさらう。
この2人の関係に関しては映画の通りではないようだが、もっといいアプローチがあったはずだけに残念。もちろん美術は凝っている。
カテゴリー[ その他映画 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2010年 02月 26日 22:24:27
「Dr.パルナサスの鏡 」。 「オーシャンズ 」よりうまい構成
Dr.パルナサスの鏡 / The Imaginarium of Doctor Parnassus
公開からしばらく経って見たのはこの映画の不幸が気になっていたから。つまりヒース・レジャーの死と彼の代役を務めた有名俳優3人が出演というのがマイナス要因に思えたのだ。1000年以上生きるパルナサス博士(クリストファー・プラマー)、彼の娘ヴァレンティナ(リリー・コール)と助手が見せる出し物が人間の欲望を具体化する"Dr.パルナサスの鏡"だ。そこに加わるのが、首を吊るされていたところを助けられた男トニー(ヒース・レジャー)、彼は加わって一座が活気付く。その一方でパルナサスには娘のことで悪魔との契約があり悩む。
ここでのヒース・レジャーの演技はテリー・ギリアムとは2作目、また「ダークナイト」のあとということもあり比較的力を抜いていると思う(もちろんその裏ではクスリで悩んでいたわけだ)。彼の映画をすべて見たわけではないが、転機になったのが「サハラに舞う羽根」ではないかと思う。卑怯者と罵られた軍人がその後に再び立ち上がるという映画だ。そろそろ生え際が後退し、アイドル路線はつらい。しかも演技でも共演者のウェス・ベントリーやジャイモン・フンスーに負けている。俳優として演技派への転身を迫られ、それが「ブロークバック・マウンテン」「ダークナイト」につながる。そのように考えると今作は特筆すべき演技ではないかもしれないが、トリックスターの役割はうまく果たしている。
ヒース・レジャーの代役の3人は思ったより好演。色男を演じるジョニー・デップはさすが、そういえばデップ自身が自分のルックスととらわれることを拒否して変な役をやろうとした俳優の先輩である(ということはレジャーが目指したところであるのだろう)。ジュード・ロウは生え際が後退したことでは先輩だが、ここではギラギラした表情がたまらない。最後のコリン・ファレルはトニーの暗黒部分を担当し、一番似合っていないと思うが、レジャーの演技が見たいと思ったのはこのパートだった。
テリー・ギリアムの映画なので映像はイマジネイテブだ。「ブラザーズ・グリム」ではさほど感心しなかったが、こちらはかなりいい。アメリカ資本が入っていないので予算はあまり高くなくチープな映像もけっこうあるのだが、カラフルというのとは違う悪夢と白日夢の中間のような世界は大いに楽しめた。
ということでボクがアメリカの映画関係者なら、"ギリアムさん、またアメリカで映画作りませんか"と言いたくなる。なにしろリリー・コールもトム・ウェイツも嫌いな人間が気に入るのだから
カテゴリー[ その他映画 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2010年 02月 24日 00:58:05
「オーシャンズ 」。 「バレンタインデー」と同じように整理が必要
オーシャンズ / Oceans
「WATARIDORI」や「ディープ・ブルー」から始まった(?)自然ドキュメンタリー・ルネッサンス。「アース」を見て思ったのは脚本の大切さだ。脚本と言ってもそれは動物を擬人化して物語を作ることではなく、構成の問題である。
この映画はこどもがじいさんに"海ってなに?"と聞くところから始まる。この段階で駄作認定していいと思う。この手の映画は膨大な素材からいい画を選びその過程で自然と物語が出来上がるようでなくてはダメだ。
ということで個人的な興味は相変わらず凶暴なシャチの素晴らしさや、シャコ対カニの真剣勝負が楽しめた。もうこうなったら3Dでドキュメンタリーはどうだ、グロすぎて劇場が阿鼻叫喚!というネタを考えていたら「オーシャンワールド 3D」とうのがあるそうだ。グロくはないだろう。
あと人間(というか、たぶん日本人)が出てくるのだが自然ドキュメンタリーでは人間の扱いに気をつけなくてはいけない。一応ここは人間の自然に対するひどさを表現しているのだが、、そのときには全人類に対する警告としなければ不公平になる(今作では日本人を想定されることはおいておこう)。最後に生物を殺してはいませんと出る。じつにばかばかしい。だったらこのパートは必要ない。だからというわけではないが、あまり残酷に感じない。「The Cove」は見ていないが(映画の主張とは関係なく)残酷に感じるのはあちらだろう。
カテゴリー[ 日本公開前の映画 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2010年 02月 17日 01:52:03
「バレンタインデー」。 未整理なのは「50歳の恋愛白書」と同じだがこちらは芯に欠ける
バレンタインデー / Valentine's Day
「プリティ」シリーズで知られる(いやオリジナルにこれが入っているのはウーマンだけだが)ゲイリー・マーシャルの新作は群像劇に挑戦。登場人物の意外な組み合わせというのは二つ程度で、その手の面白さは期待できない。ただこのタイトルだけに1日に集中した物語になっているのはいい。
出演女優の顔を見ていて気付いたことがある。女優の口と唇が大きめで場合によっては目も大きい。「プリティ」シリーズの二枚看板ジュリア・ロバーツとアン・ハサウェイがその典型だ(いや書いている本人がそれを嫌いではないことはサイト名を見ていただければ分かる)。その結果としてエクボ率も高く、ジェニファー・ガーナーは「プリティ」の二人とはタイプは違うがエクボ顔だ。この監督はクール・ビューティーを好きではないのだろう。別の言い方をすると笑顔がチャーミングな女優が好きなのだ、それは近作に起用したケイト・ハドソンとリンジー・ローハンを見ても分かる(個人的はケイトの笑顔はほんとうに好き)。結果として監督の好みからもっとも遠いところにいると思われる女優は損な役回りを演じることになる。
この映画の問題点はそんな「プリティ」なアン・ハサウェイやエマ・ロバーツが中心ではなく現在アメリカ映画界を代表するガタイのいい女優JとJを話の中心に置いたところにある。ハイライトはレストランでのやけ酒大会になっているのだ(あのバッティングフォームのたくましいこと!)。もちろんその後にはちょっといい展開もあるのだが一度絡み合わなくなってくると歯車はどんどん狂ってくる。たとえば客寄せパンダのように起用された歌手のテイラー・スウィフト(とテイラー・ロートナー)はバカな高校生をそれなりによく演じているのだが、本来なら対比されるはずのエマ・ロバーツのエピソードとうまく絡み合っていない。ジュリア・ロバーツの使い方などはミニマムな空間を利用しての大女優対策としての方法論は興味深いが、シャーリー・マクレーンのエピソードの酷さを見るとそれも単なる時間節約のためとしか思えない。
「ラブ・アクチュアリー」は良くない部分もたくさんあった映画だが、好きな場面もいくつかあった。それと比べても本作は弱い。LAを表現するのに多くの人種を出すのいかにもの政治的正しさだ(ただし花市場の場面は一見の価値あり)。かといって「正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官」のようにあざとい不法移民の描き方にも困るのだが、小学生の親にひとりくらい不法移民のエピソードがあっても良かったかもしれない。
それでもアシュトン・カッチャーは最高。本当に軽薄な男にしか見えないブラッドリー・クーパーはそれが演技ならすごい。
カテゴリー[ その他映画 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2010年 02月 14日 23:32:39
「50歳の恋愛白書」。 「抱擁のかけら」ほどには濃くならず
50歳の恋愛白書 / The Private Lives of Pippa Lee
ダニエル・デイ=ルイスにショーン・ペンとここ2年のアカデミー主演男優賞の夫人が監督と主演をつとめるこの映画、出演者にはセザール賞受賞のヴァンサン・カッセル夫人までいる(過去形の人あり)。結論からいうと主演はがんばったが監督はもう少しがんばりましょうレベル。
映画はピッパ・リーが50歳で子供も手がかからなくなり旦那が80近くなったのを期に郊外に引っ越した先でのパーティーから始まる(なぜかコーネル・ウェスト発見)。そこから夫婦間に新たな波風が立つようになる。過去のペッパーを演じるのはブレイク・ライヴリー 、過去の場面は思ったよりも多く彼女もなかなかの好演。またがクスリ漬けの飛んだ母親を演じていているのがマリア・ベロ、楽しそうな演技だ。10代のペッパーは母親からおばのところに逃げ込むのだが、そこにいたレズの作家から悪影響を受けここも飛び出す(作家を演じるのはジュリアン・ムーアだか、これはもったいない使い方)。そしてついにハーブ・リーと出会う(ここのアラン・アーキンの若作りに笑ってはいけない)。ここでトラブルを起こす前妻を演じるのはモニカ・ベルッチ、これはまさにタイプキャスト。
邦題は「50歳の恋愛白書」で50になってもまだまだ女(場合によってはジジイも捨てる)という感じだ。それに対して原題は「The Private Lives of Pippa Lee」、表向きは良き母、良き妻であるがそれは幻影、他人は自分のことを思ったより評価されていないかもしれない、今までの人生を見つめなおすといった具合に取れる。またポスターも豪華スター共演のように取れるがキアヌ・リーヴスとウィノナ・ライダー以外はペッパーの過去に絡む人たち、その意味ではオリジナルのポスターのほうがいい感じだ。
先にあげたマリア・ベロやアラン・アーキンの演技でくすりとさせられるし年下の無職男を演じるキアヌ・リーヴスとロビン・ライト・ペンが本当はキアヌのほうが年上だとか、苦笑するような場面はあるがもっとはっきりとしたブラック・コメディとして作るべき題材だった。自分が思うほどに他人は自分のことを良き妻と思っていないだとか、夢遊病を出してくるならじつは夫を殺してしまったのだが、その記憶を封印してヘンな行動ばかりをするとかいくらでも方法はあったはず。そうできなかったのは監督が原作者兼脚本家であるからだ。それでも子供のエピソードは原作からかなり削られているようで、これは正解。そういえば娘役のゾーイ・カザンは予告でやった「恋するベーカリー」にも出ていた。
というわけでロビン・ライト・ペンとブレイク・ライヴリーは悪くないし、久々にウィノナ・ライダーを長めに見られる点は評価したい。
カテゴリー[ その他映画 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2010年 02月 10日 23:25:56
「抱擁のかけら」 映画愛では「パラノーマル・アクティビティ」より上
抱擁のかけら / Los abrazos rotos / Broken Embraces / Broken Hugs
ペドロ・アルモドバルとペネロペ・クルス、4度目の組み合わせとして注目されるがペネロペが主人公というよりは映画監督・脚本家マテオ・ブランコ(ハリー・ケイン)のミューズとして登場し、劇中劇ではヒロインを演じる。マテオは事故で視力を失いそれ以後はハリー・ケインを名乗り脚本家に専念する。オープニングでハリー・ケインはナンパした娘をくどく。目が見えないので髪から顔、身体をさわってゆくので、実は彼女はゲイだったというオチがつくのかと思ったらふつうの女性だった。この映画は悲劇はあるが基本的にはコメディなのだ。
レナ(ペネロペ・クルス)は金持ちの愛人で女優志望、オーディションを受けてマテオの映画に出演するが二人はすぐに深い関係になる。もう一人重要な役割を果たす女性がマテオ(ハリー)のエージェントであるジュディット(ブランカ・ポルティージョ)、目が見えないハリーの手伝いもする。その複雑な感情が見もの。
ペドロ・アルモドバルといえば女優だが、今作は男優のほうも面白い。クリストファー・プラマー風ルックスの金持ちエロジジイのエルネスト(ホセ・ルイス・ゴメス)が見せる嫉妬の嵐はすごい。そしてその息子は親に束縛され、命令されてマテオとレナを監視する。その様はストーカー状態で不気味だ。このときの風貌が一時期のフィル・スペクターを思い出させるのは偶然か、この気持ち悪さが最高。じつは映画自体ももこの息子がマテオ(ハリー)のところに映画製作の話を持ってゆくところから始まる。
物語はハリーが過去を振り返り、レナの思い出を乗り越える。その間にあった謎を追求するミステリー形式なのだが、それよりは自身の過去作をパロディにした劇中劇や引用された「イタリア旅行」などに見える監督の映画愛の色が強い。レナを失うという悲劇がくることは分かっているのに湿っぽくなることなく乾いた感じで切り取られた情景の数々や相変わらず華やかな色使いが印象に残った。少々まとまりがないだけにいわゆる傑作ではないかもしれないがアルモドバルの近作では一番好きかも知れない。ラストに見えるレナの写真の数々、あのショットは二人の愛の証拠というよりはストーカーの一方的な愛も連想させるものだが、この監督はそれも好きだ。
カテゴリー[ その他映画 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2010年 02月 08日 01:26:34
「パラノーマル・アクティビティ」。 逃げ切れない運命という点では「フローズン・リバー」と共通
パラノーマル・アクティビティ / Paranormal Activity
噂の低予算ホラー、フェイク・ドキュメンタリー形式は珍しくないが定点カメラ映像を中心にしている。夜中の起こったことを確認するときには録画した映像そのものが流れる。この形式の利点はふつうのドラマならホームビデオに偶然怪しいものが写っていたという設定にしなければいけないが、この映画ではその必要がないこと。主人公の二人はいきなり怪しい映像を撮るために撮影器具を用意する。二人もトレーダーのミカと学生のケイティなので家にずっといても不自然ではない。
この映画はモンスターの姿を見せないという意味ではJホラー的で、ラストの展開も負の連鎖という点で「リング」と似ている。フェイクにして良かったと思うのはバカっぽい場面の処理の仕方だ。いや、この二人がバカでないとは言わない。それでもホラーにお約束の恋人たちがいちゃつくとそこに殺人鬼がやってくるというありきたりなパターンは避けられている。そのパターンにおける効果は"こいつらはバカだから死んでもいいよ"と思わせる点にある。この映画はそれは避けても結局観客に"彼らに生き残ってほしい"とは思わせない。それ自体は失敗ではなない。なぜならこの映画での二人の役割はモンスターに打ち勝つことではなく、敵の世界に巻き込まれることにあるからだ。
この映画で一番笑えるのは霊の専門家が"霊は扱うけど、悪魔は専門外だよ"というところだ。事態が次第に悪くなって再度登場すると"悪魔の専門家は現在出張中だから、戻ってくるまでがんばれ"とはなんと無責任な、プランBを考えてやらないのだ。真相に近づこうとするとより状況が悪くなるという流れは面白いが、そのためにはもっと外堀を埋めないと説得力がない。
ラストはそれなりに怖いし、予想以上に酔ってしまい、その意味ではこの映画に完全にやられたわけだが、これならふつうのフィクションとしてカット・デニングスあたりをヒロインにして作ったほうが良かった思う。それで新たなホラー・クイーンを作ったほうが一発屋の監督(まだ決まったわけではないが)を生むより映画界にとって有益だと思う。
カテゴリー[ その他映画 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2010年 02月 06日 01:24:02
NHKBSを中心に海外ドラマを少しだけ語る
『ダメージ2』
これが日米で時間差がないドラマか。放映中にグレン・クウローズが二年連続エミー賞受賞した。しかも毎週ではなく集中放送なので録画しなくても忘れない。シーズン2からの出演者としてはオスカー俳優ウィリアム・ハートとマーシャ・ゲイ・ハーデン(『イントゥ・ザ・ワイルド』では夫婦だった)と豪華なのだが、ウィリアム・ハート吹替えた大杉漣の滑舌が悪くて困った。ウィリアム・ハートの出番自体が後半減ったので実害は少ない。
物語としてはシーズン2ならではの余裕かこけおどしが減ったのは良かったが、フラッシュバックならぬフラッシュフォワードが多用されるのは少々うざかった。アーサー・フロビシャー役のテッド・ダンソンの奥さんはメアリー・スティーンバージェンなんだ、ふーん。とはいえワタシの目当てはローズ・バーンですから、美しすぎまーす
驚いたのはシーズン1が年末にTBSで集中放送されたこと、そういえば『BONES』はTBSからテレビ朝日に移籍した。『24』も集中放送ではなく土曜深夜週一になったし、海外ドラマも過渡期ということか。
『アグリー・ベティ3』
シーズン2がつまらないので心配したドラマだが、面白くなったので安心した。シーズン2がつまらなかったのはベティの恋愛話が多すぎたせい、つまりはこのドラマを支えているのは脇役、もっと端的にいえばマークとアマンダなのだ。その意味ではシーズン3は復調したといっていい。まあリンジー・ローハンは役に立ってないし、不満を言う役者の番組上での退場などはいかにもアメリカのドラマらしく唐突なものだけど、細かいことを言っても仕方ない。と思ったらシーズン4で終了ですと、まあ長く続くドラマが面白いわけでもない。
『魔術師 MERLIN(マーリン)』
これはオマケ。アーサリアン・ファンタジーの前日談というよりはジュブナイル向けにアレンジといったほうがいい。というわけでアーサー好きの大人が怒ってはいけません。これが面白いのはマーリンとアーサーが同世代なのを初めとしてキャラクター設定をいじりまくっていること。アレンジというような次元ではない。たしかに伝承によって受け継がれた物語であるからその辺の自由はあるわけだ。そういった面白さはある。
カテゴリー[ その他エンターテインメント ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2010年 02月 04日 23:21:57
「フローズン・リバー」。 「サロゲート」よりも重い選択
フローズン・リバー / Frozen River
サンダンス映画祭からアカデミー賞二部門(主演女優、脚本)ノミネートにまで上り詰めたインディーズ映画。冬に走るトラックに国境の看板が出てくるオープニングに続いて主人公のレイが出てくる。彼女は母親で身体には刺青、しみ、しわがある。それは彼女のおかれた立場を雄弁に物語る。レイ役のメリッサ・レオは「21グラム」に出演していてコートニー・ハント監督はそれを見て出演を依頼したそうだが、印象はあまり残っていない。また「21グラム」といえば最近流行の偽ライ・クーダー風のサウンドが出てきたときにはいやな予感がしたが、それはほんの一瞬だったので安心した。
この主人公はもちろん貧しいが、新しいトレイラーハウスを買う準備をしていて手付金も払っていたのだが、残りの金を夫が勝手にギャンブルにつぎ込んでしまう。そのギャンブル場はモホーク族の保留地内にある。ここはニューヨーク州でもカナダ国境近くでかなり寒そうだ。それも一面の雪景色よりは車を駐車させるときのぬかるみのほうが目立ち、彼女の運転するボロ車と良く合っている、このあたりもインディーズ映画ならではだ。
ギャンブル場駐車場から夫の車に勝手に乗っていったモホークの女性ライラ(ミスティ・アッパム)を追いかけて彼女が住む小ぶりなトレイラーハウスにたどり着き車を返すように言う。宣伝用スチールに使われているレイの発砲シーンはここである。そのくらいの覚悟を持っている人間として描かれているわけだが映画全体を象徴するような場面ではない。
ここでライラはこの車はトランクが開けやすいのでアジア系移民の密入国に使えるので組んで仕事をしようという。話を総合するとカナダとアメリカにまたがる保留地内では両国の法律は適用されず。また白人が一緒にいると信用されるから、レイをさそうということのようだ。レイは家のための金がほしいし、ライラには赤ん坊がいるが夫が死んだために義母が引き取っている我が子を取り戻したい。ここで二人の利害が一致し協力することになる。
タイトルのフローズン・リバーとは文字通りショートカットのために凍った川の上を走るのだ。しかもこれが安全だという保障はないのでスピードは上げなくてはならない。この部分はサスペンス映画風で怖いが、それが前面に押し出されたりはしない。ここでライラはお金の勘定をレイに頼むが、彼女の目は悪くて働くにもマイナスで逆に言えばコンタクトやメガネを買ってもっといい仕事をして子供を取り戻そうという気概が彼女にはない。
レイは何度か仕事をした後で州警察に別件で呼び止められたりしたのでやめていたが、危険を感じながらもお金が必要なになりクリスマス・イヴにもう一仕事すると決めた。今回運ぶのはパキスタン人夫婦で、レイは預かったバッグが爆弾ではないかと疑うなどはじめから不吉な要素が一杯だった。このバッグが切っ掛けになって起こる悲劇が起こる。そしてその後に起こる奇蹟はまさにクリスマス・イヴにふさわしいものとなっている。しかし運命は悪いほうに転がり警察に追い詰められることになる。
ここでレイとライラは互いのどちらかを差し出すかという選択に迫られる。ここで出した最終結論というのがいかにも母親らしい。この映画の監督も女性なのでこれは自然な展開だと思うのだが、これは単純に"母は強し"では語られるだけのものではないように思う。ここでは二人とも赤ん坊(幼児)がいることにも注目したい。レイの息子が15歳くらいのTJだけだったら彼女はライラの気持ちを考えることができたのか?この二人を結ぶ赤ん坊(幼児)の存在があってこそ互いの立場を考えた結論が出せたのだ。
劇場はシネマライズ。上映しているだけでなく公開にも協力したことは褒められるべきだが、雪や氷をバックにするとスクリーンの汚れやたるみに気付いてしまうのは残念。もっとも夜のシーンが多いのでそれほど気にはならなかったのは救いだった。
以下ネタバレ
... 続きを読む
カテゴリー[ その他映画 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2010年 02月 02日 00:39:52
- プロフィール
- JK
- エミー・ファン!ブログ
- 最近のエントリー
- [12/31] リンク
- [01/27] エミー・ロッサム、ターゲット×ジェイソン・ウー発売記念イベントに出席
- [01/14] Wマガジ&ドンペリのGG賞プレ・パーティにエミー・ロッサム出席
- [12/20] 「コンテイジョン」。 「ラブ&ドラッグ」よりキャストが多いがうまく操れていない気が
- [12/12] 「ラブ&ドラッグ」。 「ラブ・アゲイン」より素材と演出の相性が悪いか?
- [12/10] 「ラブ・アゲイン」。 「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」同様整理されていない部分が残念
- [12/08] 「レベッカ テイラー」新ブティック、オープニング・パーティにエミー・ロッサム出席
- [12/05] 「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」。 「50/50」より作家性はよく出ているが
- [12/03] 「50/50 フィフティ・フィフティ」。 「ラビット・ホール」より表面上は軽いが内面は十分シリアス
- [12/01] 「ラビット・ホール」。 「ウィンターズ・ボーン」より狭い世界だがそれをうまく使っている
- 最近のコメント
- [10/15] 「ダークナイト」 sue
- [04/04] 「ブルーノ」。「マイレージ、マイライフ」と比べると脚本に工夫が足りない JK
- [03/29] 「ブルーノ」。「マイレージ、マイライフ」と比べると脚本に工夫が足りない MAX
- [11/21] 「かけひきは、恋のはじまり」 UK-Japan 2008 WEBサイト運営事務局
- [08/07] イランの一面が見える「ペルセポリス」 JK
- [08/04] イランの一面が見える「ペルセポリス」 Franchesca
- [04/06] AFP BB News 検索、リンク仕様の変更 KLE4c
- [04/04] AFP BB News 検索、リンク仕様の変更 JK
- [04/04] AFP BB News 検索、リンク仕様の変更 KLE4c
- [01/30] 「マリー・アントワネット」キルスティン・ダンストはブサイクか否か JK
- 最近のトラックバック
- 月別アーカイブ
- 2013年 12月 [1]
- 2012年 01月 [2]
- 2011年 12月 [7]
- 2011年 11月 [2]
- 2011年 10月 [4]
- 2011年 09月 [6]
- 2011年 08月 [7]
- 2011年 07月 [12]
- 2011年 06月 [7]
- 2011年 05月 [7]
- 2011年 04月 [4]
- 2011年 03月 [6]
- 2011年 02月 [5]
- 2011年 01月 [6]
- 2010年 12月 [10]
- 2010年 11月 [6]
- 2010年 10月 [8]
- 2010年 09月 [7]
- 2010年 08月 [6]
- 2010年 07月 [7]
- 2010年 06月 [10]
- 2010年 05月 [6]
- 2010年 04月 [8]
- 2010年 03月 [12]
- 2010年 02月 [10]
- 2010年 01月 [5]
- 2009年 12月 [12]
- 2009年 11月 [13]
- 2009年 10月 [14]
- 2009年 09月 [12]
- 2009年 08月 [4]
- 2009年 07月 [8]
- 2009年 06月 [6]
- 2009年 05月 [10]
- 2009年 04月 [4]
- 2009年 03月 [10]
- 2009年 02月 [6]
- 2009年 01月 [8]
- 2008年 12月 [11]
- 2008年 11月 [14]
- 2008年 10月 [7]
- 2008年 09月 [7]
- 2008年 08月 [5]
- 2008年 07月 [6]
- 2008年 06月 [7]
- 2008年 05月 [16]
- 2008年 04月 [10]
- 2008年 03月 [5]
- 2008年 02月 [9]
- 2008年 01月 [5]
- 2007年 12月 [10]
- 2007年 11月 [6]
- 2007年 10月 [9]
- 2007年 09月 [3]
- 2007年 08月 [8]
- 2007年 07月 [5]
- 2007年 06月 [10]
- 2007年 05月 [4]
- 2007年 04月 [11]
- 2007年 03月 [7]
- 2007年 02月 [8]
- 2007年 01月 [9]
- 2006年 12月 [17]
- 2006年 11月 [10]
- 2006年 10月 [17]
- 2006年 09月 [8]
- 2006年 08月 [13]
- お気に入りリンク
- 検索