2010年 02月 02日
「フローズン・リバー」。 「サロゲート」よりも重い選択
フローズン・リバー / Frozen River
サンダンス映画祭からアカデミー賞二部門(主演女優、脚本)ノミネートにまで上り詰めたインディーズ映画。冬に走るトラックに国境の看板が出てくるオープニングに続いて主人公のレイが出てくる。彼女は母親で身体には刺青、しみ、しわがある。それは彼女のおかれた立場を雄弁に物語る。レイ役のメリッサ・レオは「21グラム」に出演していてコートニー・ハント監督はそれを見て出演を依頼したそうだが、印象はあまり残っていない。また「21グラム」といえば最近流行の偽ライ・クーダー風のサウンドが出てきたときにはいやな予感がしたが、それはほんの一瞬だったので安心した。
この主人公はもちろん貧しいが、新しいトレイラーハウスを買う準備をしていて手付金も払っていたのだが、残りの金を夫が勝手にギャンブルにつぎ込んでしまう。そのギャンブル場はモホーク族の保留地内にある。ここはニューヨーク州でもカナダ国境近くでかなり寒そうだ。それも一面の雪景色よりは車を駐車させるときのぬかるみのほうが目立ち、彼女の運転するボロ車と良く合っている、このあたりもインディーズ映画ならではだ。
ギャンブル場駐車場から夫の車に勝手に乗っていったモホークの女性ライラ(ミスティ・アッパム)を追いかけて彼女が住む小ぶりなトレイラーハウスにたどり着き車を返すように言う。宣伝用スチールに使われているレイの発砲シーンはここである。そのくらいの覚悟を持っている人間として描かれているわけだが映画全体を象徴するような場面ではない。
ここでライラはこの車はトランクが開けやすいのでアジア系移民の密入国に使えるので組んで仕事をしようという。話を総合するとカナダとアメリカにまたがる保留地内では両国の法律は適用されず。また白人が一緒にいると信用されるから、レイをさそうということのようだ。レイは家のための金がほしいし、ライラには赤ん坊がいるが夫が死んだために義母が引き取っている我が子を取り戻したい。ここで二人の利害が一致し協力することになる。
タイトルのフローズン・リバーとは文字通りショートカットのために凍った川の上を走るのだ。しかもこれが安全だという保障はないのでスピードは上げなくてはならない。この部分はサスペンス映画風で怖いが、それが前面に押し出されたりはしない。ここでライラはお金の勘定をレイに頼むが、彼女の目は悪くて働くにもマイナスで逆に言えばコンタクトやメガネを買ってもっといい仕事をして子供を取り戻そうという気概が彼女にはない。
レイは何度か仕事をした後で州警察に別件で呼び止められたりしたのでやめていたが、危険を感じながらもお金が必要なになりクリスマス・イヴにもう一仕事すると決めた。今回運ぶのはパキスタン人夫婦で、レイは預かったバッグが爆弾ではないかと疑うなどはじめから不吉な要素が一杯だった。このバッグが切っ掛けになって起こる悲劇が起こる。そしてその後に起こる奇蹟はまさにクリスマス・イヴにふさわしいものとなっている。しかし運命は悪いほうに転がり警察に追い詰められることになる。
ここでレイとライラは互いのどちらかを差し出すかという選択に迫られる。ここで出した最終結論というのがいかにも母親らしい。この映画の監督も女性なのでこれは自然な展開だと思うのだが、これは単純に"母は強し"では語られるだけのものではないように思う。ここでは二人とも赤ん坊(幼児)がいることにも注目したい。レイの息子が15歳くらいのTJだけだったら彼女はライラの気持ちを考えることができたのか?この二人を結ぶ赤ん坊(幼児)の存在があってこそ互いの立場を考えた結論が出せたのだ。
劇場はシネマライズ。上映しているだけでなく公開にも協力したことは褒められるべきだが、雪や氷をバックにするとスクリーンの汚れやたるみに気付いてしまうのは残念。もっとも夜のシーンが多いのでそれほど気にはならなかったのは救いだった。
以下ネタバレ
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登録日:2010年 02月 02日 00:39:52
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