2010年 05月
「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」。 「ローラーガールズ・ダイアリー」とは違い物語に芯がない
プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂 / Prince of Persia: The Sands of Time
~のスタッフによる新作というのはよくある宣伝文句だが、これに「パイレーツ・オブ・カリビアン」の名前を出すのはプロデューサーがジェリー・ブラッカイマーだからかまわない。主演は「デイ・アフター・トゥモロー」のジェイク・ギレンホー、監督は姉マギー・ギレンホールも出演していた「モナリザ・スマイル」を手掛けていたマイク・ニューウェル。
ということで観光旅行気分のエキゾチックな作風は「パイレーツ~」と同じだが、話がつまらない。「パイレーツ~」の脚本も褒められたものではなかったが、次々にアイディアを投入して(ときにはややこしくなりながらも)飽きさせなかった。それに対してこちらは罠にはめられたダスタン王子(ジェイク・ギレンホール)がそれを跳ね返し、途中で手にした時間の砂に振り回されるというものだが、ほぼワン・アイディアなので間延びしている。黒幕はすぐに分かるし、黒幕がある都が武器を密輸していることを口実にして戦争を仕掛ける。密輸ではなく武器があったはずだと言って戦争を仕掛けたというのはどこかで聞いたような話だ。
また「パイレーツ~」はウィル・ターナーを主人公としたときにジャック・スパロウはトリック・スターとして機能したがこちらはそれに当たる人物がいない。アルフレッド・モリーナはそうなるかなと思ったら彼はほとんどジョン・リス=デイヴィス のような役割となっていた(これでいいのか?)。本来なら二人の兄王子がもっと存在感があるべきなのだがそれはなし。二人が正統な王子で、ダスタンが養子という設定もあまり生きていない。
ジェイク・ギレンホールは悪くない。予想外にマッチョになったが顔つきはぼーっとしたままで巻き込まれ型のヒーローに合っているし、王子といっても街出身の雰囲気も出ている。アクションはパルクールを取り入れている。最近では「007/カジノ・ロワイヤル」や「ボーン・アルティメイタム」でも使われていたが、そうしたシリアス・アクションよりこうした非現実的な物語のほうが合っていると思う。でも一番いいのは少年時代のアクションだったかもしれない。一方タミーナ王女を演じたジェマ・アータートンはたしかにきれいだが、モデル女優顔というか薄味で砂漠のお姫様というにはエキゾチックさが足りないように思う。この点は残念だがそうした偽者っぽさもこの映画の雰囲気と合っているようだ。それはハリー・グレッグソン=ウィリアムズが手掛けた音楽にもいえるかもしれない。特殊効果はまあまあだが何箇所かでバックの画像にしょぼさを感じてしまった。
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登録日:2010年 05月 30日 23:27:04
「ローラーガールズ・ダイアリー」。 「タイタンの戦い」よりは話の中心になるものが分かっている
ローラーガールズ・ダイアリー / Whip It
ドリュー・バリモアといえば「E.T.」などの子役時代、荒れた10代を経て見事に復活した逞しい人だ。ここ最近は自身のプロダクション、フラワー・フィルムズを設立しプロデューサーとしても大成功している。それゆえに彼女の出演作はほとんど自分の会社で製作して、成功作が何本もある。しかしそれには欠点もある。彼女が演じる役はほとんど自分探しをしている女性なのだ。私生活では結婚したと思ったらすぐに離婚したり、別れたと思ったらすぐによりを戻したりと、彼女の恋愛事情を知ると自分探しをしたくなる気持ちも分かる。しかしそれが続くと飽きるし、なによりもそろそろそれを演じるのがつらくなる年齢になってきたのだプロデュースした「そんな彼なら捨てちゃえば?」でも自分探し女はジニファー・グッドウィンに譲っている。そして初監督作品のテーマはもちろん自分探し、主役は本人でなくエレン・ペイジ。これはなかなかの配役、ペイジもバリモアほど有名でなかったといえ子役出身なのでバリモアも共感しただろうし、あの困ったような顔は自分探しに合っている。
そしてなりより素晴らしいのが配役だ。SNL組もいるが、中心となるのは(監督と主演も含めた)正統派美人とはいい難いがとてもチャーミングな女優たち。母親のマーシャ・ゲイ・ハーデンから、スタント界からゾーイ・ベル(「デス・プルーフ」でおなじみのはず)、音楽界からイヴ。そしてここしばらくはロック・シンガーとしての活動がメーンだったジュリエット・ルイスが敵役として素晴らしい表情を見せる。考えてみればルイスも子役出身でバリモア、ペイジに通じるところがある。後半でルイスがペイジに言う台詞はつい笑ってしまいそうになった。監督がペイジの次に自分の思いを託したのは彼女だろう。
予告は見たときにはローラーゲームをやっているので70年代か80年代の映画かと思ったが(そのほうがドリュー・バリモアらしい)なんと時代は現代。舞台はテキサスの地方都市、主人公ブリスは母親に言われるままにミス・コンテストに参加する。"エレン・ペイジがミスコン?その設定はどうなのよ"と思ってしまうが、かわいい妹も美少女コンテストに出るという設定で見事に回避している。まさに「リトル・ミス・サンシャイン」が描いていようなアメリカ地方都市の歪んだ世界観!
ブリスは当然のようにローラーゲームと出会い、バーガー・ショップのバイトを減らしてそちらに夢中になる。ブリスの武器はスピードということだが、スポーツ映画としてはやや見せ方がうまくない。マイナー・スポーツであるローラーゲームの説明もイマイチなのだが、得点の説明の箇所は良かった。原題であるホイップの画もいい。
ドリュー・バリモアの映画なので平均点はクリアしている。成功→挫折→復活というお約束の流れは悪くない。全体としてはテンポが悪いのか映画の山場作りがうまくいっていないように思う。ラスト近くに母親との邂逅があるわけだが、ここがうまくいっていればそれまでが良くなくても気にならないはずなので、それができなかったのは残念だ。次は脚本、撮影、編集のどれかで超一流スタッフと組んでほしい。細かい話だが親友が大学一発合格するのは違和感がある。パロディになっている各選手のステージ・ネーム、ダニエル・ジョンストンの絵(もしかしてプールのシーンは「Nevermind」?)といった小ネタを楽しむのもドリュー映画の楽しみだと思う。
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登録日:2010年 05月 19日 22:45:05
「タイタンの戦い」。 「グリーン・ゾーン」よりも芯になるものが感じられない
タイタンの戦い / Clash of the Titans
オリジナルに対してレイ・ハリーハウゼンの名前がよくあがるから、60年代の映画だと思っていたら80年代の映画だった。どうやらハリーハウゼンの引退作らしい。同時期のリーアム・ニーソンが出ている「エクスカリバー」(モーガナはヘレン・ミレン)ならテレビで見たことがある。
監督はフランス人のルイ・レテリエ、「インクレディブル・ハルク」は悪くないと思っている。バトル・シーンをだらだらとせずに数を絞ってかっちりと見せ、その間を人間ドラマで埋めるという方法論が(ハルクの造形はともかくとして)成功していた。それに対してこちらはドラマが盛り上がることもなくダラダラと旅をするRPGのようでメリハリもない。「インクレディブル・ハルク」のドラマ・パートは主役のエドワード・ノートンが実質的に担当していたらしいから、それもしかたないのかもしれない。バトルへの過程も描き方が浅いので盛り上がらない。一番面白いのはメデューサ退治か。
主人公のペルセウス(サム・ワーシントン)は神と人間の間に生まれた男だが、その設定も活かされていない。自分の運命を受け入れるまでの過程もあっさり。育ての親は神によって殺された葛藤についても同様。物語の根幹がこれなのだから、全体が良くなるわけがない。何よりも実力俳優を起用しながらゼウス(リーアム・ニーソン)とハデス(レイフ・ファインズ)の軽さはどうだ。ゼウスは人間を孕ませるようなやつだからこれもありなのかもしれないが、ハデスは単なるバカだ。これから「パーシー・ジャクソン」のロックなハデスのほうがまだ良かった。
各国から集められたキャストも物足りない。主役のサム・ワーシントンは可も不可もなしでもいいとしても、アンドロメダがかわいくないのが致命的。たとえば「トロイ」のダイアン・クルーガーは、それまでの彼女を知らなくても、あの映画では絶世の美女として機能していた。ついでに言えば母親のカシオペアは劣化版キャサリン・ゼタ=ジョーンズにしか見えない。ペルセウスの相手役となるイオ(ジェマ・アータートン)とマッツ・ミケルセンはまあまあ。ほかで脇役ながらニコラス・ホルトが印象に残った。
クリーチャーでは肝心のクラーケンは迫力不足。一番良かったのはスコーピオン、メデューサはあれもありだと思うが、ペガサスはもっと工夫をしてほしかった。これを見て思い出したのは「ロード・オブ・ザ・リング」、もちろんこれが「LOTR」から影響を受けているのだろうが、逆にオリジナル「タイタンの戦い」からの「LOTR」への影響もありそうだ。ここは「マクベス」からの引用と思う場面もあり、こうしたキャッチボールは楽しい。
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登録日:2010年 05月 13日 00:54:10
「グリーン・ゾーン」。 「オーケストラ!」と同じく題材と演出の喰い合わせが悪いが、それは狙いか?
グリーン・ゾーン / Green Zone
今さらの話だが、「ハート・ロッカー」は反ブッシュ、愛国的と正反対に取る人に分かれたのは面白かった(個人的には反ブッシュと解釈)。映画としてはイラク戦争の意義など監督の主張を表に出さずに爆弾処理に命を懸ける職人(日本には軍人を肯定的に描くこと自体が嫌いな人がいるようだ)に重点が置いて、どちらの方面からも攻められないようにしてあった。それがずるいという人もいるだろう。その一方でアメリカ兵がイラクで置かれている宙ぶらりんの状態こそが、イラク戦争におけるアメリカの立場そのものだという主張だと取れる。そしてこの「グリーン・ゾーン」が扱っているイラク戦争の大義である大量破壊兵器(WMD)の存在という今や誰でも知っていることを題材にしているのだからイラク戦争に批判的な立場であることは明白だ。それだけに攻撃もされやすい、しかもそれをやるのは外国人監督ポール・グリーングラス(イギリス人)だ。
マット・デイモンは「ボーン・シリーズ」ポール・グリーングラスの再タッグだが今回演じるのは陸軍のロイ・ミラー 。WMDの捜索をしながらその場に行くとないという事態が続き、ミッションに疑問を感じるようになる。そこにCIAのマーティン・ブラウン(ブレンダン・グリーソン)、ウォール・ストーリト・ジャーナル記者 ローリー・デイン(エイミー・ライアン)が絡み、国防総省情報局 クラーク・パウンドストーン(グレッグ・キニア)を追い詰めようとする。ミラーは事件に深入りして軍人のわりには好き勝手に行動し、ときには危ない目にあう。これが「ボーン・シリーズ」なら元スパイなので何をやってもある程度は許されるのだがここではしっくりこない(どうせならミラーが他の組織の人間にでもすればよかった)。組織間の争いや駆け引きもあまり盛り上がらずご都合主義だ。
監督はこれをポリティカル・アクションにもシニカル・コメディ(ふつうならそうしそうだ)にもする気はないようだ。演出はいつものシリアス調で、臨場感は満点。「ボーン・アルティメイタム」のカメラ・ワークはやりすぎだと感じていたが、ここではそれより節度があって好ましい。それでもラスト近く暗い上に敵味方が分かりづらい、手持ちカメラの映像はここ以外酔うこともなかった。この映画で感じた居心地の悪さがアメリカ人にとってのイラク戦争を表すとしたら、先にあげたような欠点の見方は変わる。
"何でアメリカ兵がイラクにいるのか、それは誰のためなのか"というような疑問。「ハート・ロッカー」では治安のためにいるはずのアメリカ兵が(一枚岩ではない)イラク人に狙われるという不条理を裏テーマとして爆弾処理という職人を描いていた。一方「グリーン・ゾーン」は脚本家にオスカー(「L.A.コンフィデンシャル」)とラジー(「ポストマン」)を持つ男ブライアン・ヘルゲランドを起用し、戦争の大義が嘘だったという笑うしかない状態をゆるゆるな設定や脚本で表す(最後のイラク人の行動などは他の映画なら許せないレベルだ)。それをシリアス・アクション演出で見せ、ジョン・パウエルの音楽がまた盛り上げる。食い合わせは悪いかもしれないが、アメリカ人にとってのイラク戦争とはそういう宙ぶらりんの存在なのだと言っているかのようだ。
マット・デイモンは「ボーン・シリーズ」の後なので軍人も余裕でこなすが新しいものを見せるまでは行っていない。エイミー・ライアンは「ゴーン・ベイビー・ゴーン」「チェンジリング」とヨゴレの役が多かったが、ここでは美人記者役、さすが役者だ。それよりグレッグ・キニアがまじめに国防総省の人をやっているのがおかしかった。ブレンダン・グリーソンは余裕。フレディ役のハリド・アブダラは「君のためなら千回でも」の人かどこかで見たことがあるはずだ。「ユナイテッド93」にも出ていたらしい。
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登録日:2010年 05月 10日 21:52:43
「オーケストラ!」。 「やさしい嘘と贈り物」と比べるとバランスが悪い
オーケストラ! / Le concert
映画はボリショイ・オーケストラのリハーサル風景から始まる。が、実はそれはエア・ギターならぬエア・コンタクトだった。この男アンドレイ(アレクセイ・グシュコフ)こそは昔は指揮者だったが、ブレジネフ政権下のユダヤ人排斥に抵抗してオーケストラを解雇された過去を持つ。清掃に戻った彼はフランスからの公演依頼のFAX(FAXで届くものなのかどうかは知らないがよしとしよう)を発見し、それに便乗して昔のメンバーでパリ公演をしてしまおうことを決めた、という映画だ。ということでありえない話が展開するという意味ではコメディである。しかしここにアンドレイがソリストに指名したヴァイオリニスト、アンヌ=マリー・ジャケ(メラニー・ロラン)の話が係わることによってシリアスな面も出てくる。映画としてはその二つがうまく絡み合わないといけないのだが、そこがいまひとつでのめりこめない。
話の流れとしてはモスクワでのメンバー集め、スポンサー探し、旅券問題とドタバタが続く。旧メンバーの描き方はかなり酷い。これがパリに行くとさらに酷くなる。この旅券偽装をするロマのフィドラーはほかでもないタラフ・ドゥ・ハイドゥークスのカリウ、妙に不自然なダミ声なので、ここは吹替えだと思う。カリウの出番は思ったより多いのだが、オーケストラには加わらないでほしかった。
で、問題のパリである。ここでメンバーたちはリハーサルも行わず金稼ぎをしているのである。とくにユダヤ人父子の描き方がステレオタイプで困る。半分くらいがリハーサルに来させせるべきだった。遅刻のシーンもやりすぎとしか思えない。これに加えてマネージャー(30年前アンドレイたちを追い出した張本人)の共産党ノスタルジーや、現在ボリショイ支配人がパリで公演情報を知ってしまうことまで、文字通り単なるドタバタ止まりだ。マネージャーの言った料理店店長がアラブ系なのには笑った。
そしてもう一つの柱であるアンヌ=マリーとボリショイとの関係は、彼女が誰の子供かという謎で最後までうまく観客の気を引くことに成功している(よく使われているおでこを触れ合っている宣伝写真はよく出来ていると思う)。彼女の演奏場面はクールすぎる表情から徐々に血の通った人間の顔になったような感じがうまく出ていた。それが「イングロリアス・バスターズ」との大きな違い。まああちらは監督の興味がショーシャナからランダ大佐に移っていて、それはそれで監督の正直さは出ていた。
などと文句をつけたとしてもこの映画はラストのコンサート・シーンが決まれば多少の欠点はカバーされる映画である。その意味では成功していると思う。ちなみにのだめと比べるとちょうど真ん中あたり、おんぼろオケが良くなる様子はあちらのほうがよかった。
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登録日:2010年 05月 03日 00:38:03
「やさしい嘘と贈り物」。 「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶオラの花嫁」と同じくベタを避けようと健闘
やさしい嘘と贈り物 / Lovely, Still
オープニング、通りに雪を被った家々が見える。この場面はどことなく連続ドラマ用のセットにも見える。そこに漂う箱庭感はこの映画がある種のおとぎ話であることを示している。出来事は狭い空間で起こり、はじめのうちはマーティン・ランドー(「エド・ウッド」)演じる主人公の老人ロバートが勤めるスーパーや彼と親しくなるメアリーと行くレストランなどが出てくるが話は次第に部屋の中に収束され、最後は個室となる。メアリーを演じるのはエレン・バースティン(「アリスの恋」「エクソシスト」) 。
予告を見れば分かるがこれは認知症に関する映画である。最近の映画だと「きみに読む物語」や「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」を思い出すが、それらの中間という感じだ。「きみに読む物語」ほど過剰なお涙頂戴ではないのは過去(燃え上がるような若い恋)を描いていないから。それでいて「アウェイ・フロム・ハー」ほどドライな描写でもない。監督のニコラス・ファクラーが24歳ということを考えればバランスとしては悪くない。基本的には泣かせようとしているのだろうが、さほどベタつかないのだ。
舞台がクリスマス前後ということもからも分かるようにこれは奇蹟が起こる映画である。ヒロインの名前がメアリーであることがその証拠だ。最後に起こることが奇蹟に思えない人もいるかもしれないが、この映画の前の状態を連想してみれば関係者には奇蹟となるのだろう。また各種のクリスマス・ソングがうるさくない程度に効果的に使われていて好感が持てる(これを暖かくなった時期に見るのはなんだけど)。身内が認知症になったらこうきれいにはいかないだろうなと思うがここはベテラン俳優二人の演技に酔っておこう。
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登録日:2010年 05月 01日 20:48:06
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