「JUNO/ジュノ」
<第32回トロント国際映画祭>『Juno』ワールドプレミア上映会にエレン・ペイジ登場
【9月10日 AFP】6日から15日までカナダで行われる、第32回トロント国際映画祭(32nd Toronto International Film Festival)が3日目を迎えた8日、映画『Juno』のワールドプレミア上映会がライアソン・シアター(Ryerson Theatre)で開催され、主演女優のエレン・ペイジ(Ellen Page)らが出席した。(c)AFP/Getty Images
JUNO/ジュノ
本年度アカデミー賞脚本賞受賞作(これについての感想は最後*に)。日本のコピーは"そのつもり。ジュノ16歳。いちばん大人。"、これはいいところをついている。これは大人のつもりの少女と大人になりきれない大人の物語だ。中でも里親に出す夫婦がその代表、「キングダム/見えざる敵」でも共演していたジェニファー・ガーナーとジェイソン・ベイトマン。「キングダム」で拉致されていたベイトマンはここでも情けない役。アクション女優のイメージからすると意外な感じのガーナーだが、実生活での母親経験が生きているようで一安心。ということでここには強い大人は登場しない。父親(「スパイダーマン」シリーズの怒りっぽいデイリー・ビューグルの彼!)は娘の妊娠を知っても素っ気ないし、義理の母親(アリソン・ジャネイ)は「ヘアスプレー」に続いて真面目な母親だがやはりジュノとは距離感を置いている。この二人はややキャラクターが似通ってしまったのが残念、継母がジュノに対して意外な愛情を見せるので、父親の方に一工夫ほしかった。
この映画は少女の妊娠に関する話だが、「ニューズウィーク 日本版」2007年12月19日号の"ハリウッドは中絶反対派"によると1982年の「初体験/リッジモント・ハイ」(ちなみに同作の脚本はキャメロン・クロウ)以来とある。非ハリウッド映画ならあるのもしれないし、記事にも脇役ならあるとなっている。表面的にはリベラルなハリウッドも商売にマイナスになるようなことは避けたいらしい(その前に戦争映画でこれまで何人殺してきたことか!)。この映画も保守派から歓迎されている。しかしジュノは初めに中絶クリニックに行くが"赤ちゃんに爪が生えている"という抗議を聞いて取りやめる(これはジュノが変わり者のようでいて人に流れやすい性格であることも示している)。ここで重要なのは選択の結果ではなく選択肢があること。ジェイソン・ライトマン監督やエレン・ペイジもキネマ旬報の記事で同様の発言をしている。まあ脚本を書いたディアブロ・コディの真意はともかく、ジュノが出産を決意しないと物語がスタートしないのでこの話題はこの辺でいいだろう。
さてこの映画の最大の魅力はエレン・ペイジとディアブロ・コディの脚本にあるわけだが、「ハードキャンディー」に関してはこのブログの最初期に取り上げた。今見ると随分あっさりした感想になっている。
http://www.actiblog.com/emfanphoto/12273
ちなみに「ジュノ」のオープニングで「ハードキャンディー」っぽい服装なのが笑える。年間トップ10では、その年の7位の映画としては"ここは若いスタッフ(デヴィッド・スレイド、モリー・ナイマン等)と若い役者(エレン・ペイジ)の今後に期待。"とコメントしている。ということでエレン・ペイジにとってこのしっかりしているようでどこかが欠けている生意気な女子高生役はお手の物、時々殴りたくなるほどだ。ジュノを取り巻く環境で気になったのは、彼女のホラー、70年代音楽好きという音楽趣味について、これを彼女に教え込む親戚や近所の人がいた方がよかったのではないか、ということで勝手にジャック・ブラックかドリュー・バリモアの存在を補完しながら見ていた。どうしてジュノとチアリーダーが親友なのか、一応体育会系のポーリーはかっこいいかそれとも違うのかは気にならないでもないが、気にしないことにした。
女子高生が主人公なのに学園生活があまり出てこないこの映画ではポーリーとリア以外はすべて脇役だが、ジュノがポーリーに付き合えばと言っていたカトリーナの微妙な存在感がまたいい。プロムに関しても必要以上に突っ込まないのが効果的だ。チアリーダーやスケート選手といった花形スポーツ選手について斜に構えた視線があるのも面白い。この映画で一番辛い立場にあるのは里親夫婦だろう。特に旦那の方は脚本家の"お前なんか、子供だ!"とういう声が聞こえてきそうだ。それを演じるジェイソン・ベイトマンも情けなくていい。一方監督のからの仕打ちを受けるのは妻の方だ。完璧を目指すあまりに、自分や周りに余計なプレッシャーをかける。彼女の登場シーンは悪意に満ちている。この映画はこの夫婦の視点で見るとまた違った面白さがあるはずだ。
「ニューズウィーク」の記事はこの映画が保守的に見えても、すでに古い形の家族は無くなっていて、血のつながらない親や養子が当たり前になっている現代を描いていると結ぶ。なるほどこの映画を見て、有名人が養子を迎える理由が少し分かった気がする。ちなみにエミー・ロッサムは母子家庭、IMDbによると彼女のいとこは有名デザイナー、ヴェラ・ウォンの養女だそうだ。
* 脚本部門と言えば脚色賞も含めてスイープした作品か、何部門かにノミネートされたけど受賞はここだけという残念賞扱いが多くて、どうも最近は話のスケールが小さいような気がする。さらにはタランティーノやスパイク・ジョーンズ/チャーリー・カウフマン一派からの悪影響もある。まあスケールが大きくてもスカスカな話というほうが困るわけだが、ポール・トーマス・アンダーソンなどは大河ドラマのはずがどこからか歯車が狂ったような脚本だったし、この問題はしばらく尾を引きそうだ。
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登録日:2008年 06月 15日 21:44:54
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