2007年 11月 27日

マクロライド系抗生物質

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
マクロライド系抗生物質(マクロライドけい こうせいぶっしつ、以下マクロライド)は、主に抗生物質として用いられる一群の薬物の総称。

比較的副作用が少なく、抗菌スペクトルも広い、大変使いやすい抗生物質である。ことにリケッチア、クラミジアなどの細胞内寄生菌や、マイコプラズマに対しては第一選択薬となる。小児から老人まで良く処方される頻用薬の一つであるが、一方ではその使いやすさが一因となってマクロライド耐性を示す微生物が増加しており、医療上の問題になっている。 また、他の薬物との薬物相互作用が問題となる場合もある。

マクロライドの活性は化学構造上のマクロライド環に由来する。これは大分子量のラクトン環で、1つまたはそれ以上のデオキシ糖(通常はクラジノースかデソサミン)が結合されている。このラクトン環は、14員環、15員環、ないし16員環でありうる。

最初に実用化されたマクロライドはエリスロマイシンである。イーライリリー社のマクガイア (J. M. McGuire) らによって、フィリピンの土壌中から分離された放線菌の一種、Saccharopolyspora erythraea(旧名Streptomyces erythraeus)から分離された。1952年にはアメリカ合衆国で、Ilosoneという商品名で発売された。

マクロライドの作用機序は、真正細菌のリボゾームの50Sサブユニットという部分に結合することによって、細菌のタンパク合成を阻害することによる。この時、ペプチジルtRNA(アミノ酸のキャリアーになっている、アミノ酸の貼り付けられたtRNAのこと)の転位が阻害される。

人間が含まれる真核生物ドメインのリボゾームは、真正細菌ドメインのリボゾームとは構造が異なっているので、人間のタンパク合成は阻害されない(なお、古細菌ドメインのリボソームも阻害されない)。同様の、リボゾームの構造の違いを利用した選択毒性を用いている抗生物質にはクロラムフェニコール、テトラサイクリン系、アミノグリコシド系がある。ただし細かな結合部位と作用機序は異なる。

微生物学的には、この作用機序は主に静菌的、つまり、あくまでも増殖の抑制作用であり、菌の殺滅は宿主の免疫に依存しているが、高濃度では殺菌的にも働きうる。少なくとも古典的には、マクロライドのような静菌的な抗生物質を、心内膜炎や化膿性髄膜炎のような重症感染症に用いるのは慎重であるべきである。もっとも、この区別は基礎医学で強調されているほど重要ではない、とする識者の意見も存在する[要出典]。

つまり、静菌的・殺菌的という区別が、臨床的ないわゆる「切れ味(効き)」と必ずしも相関しないことには注意する必要がある。「切れ味」というあいまい、かつ直感的な語の示す内容については、耐性菌の頻度や病変部への移行性、抗菌スペクトラム、最小発育阻止濃度 (MIC) などのさまざまな要素が複雑に関わってくるが、概してマクロライドは、臨床的な切れ味も、あまり良い薬ではない。

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登録日:2007年 11月 27日 12:10:39

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