純正パトリオティズムの悲劇 第8回 武士道でない武士道
リトビネンコ氏毒殺事件、英捜査官がロシアで捜査開始 - 英国
【モスクワ/ロシア 8日 AFP】ロシア連邦保安局(FSB)のアレクサンドル・リトビネンコ(Alexander Litvinenko)元情報局員の毒殺事件の捜査のため、4日にモスクワ入りした英ロンドン警視庁の捜査官らは、ロシア人ビジネスマン、ドミトリー・コフツン(Dmitry Kovtun)氏を証人として聴取した。
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(c)AFP/ODD ANDERSEN
前述したように、チェチェン人が“チェチェンスキー・ブシドー”と呼ぶ民族哲学のウェズデンゲルと日本の武士道は、似ているが違うのだ。また、日本では武士が7世紀近くも支配者であったために、時代によって武士道の中味はかなり違う。
■百種類の武士道
キリスト教のバイブルやイスラム教のクゥルアーンのように、武士道には明確な聖典がない。だから人によっていかようにも解釈できる。
西洋の騎士道の背後にはキリスト教があっただろうし、チェチェンのウェゥデンゲルにはイスラムスーフィズム(イスラム神秘主義)がある。
それに対して日本の武士道のバックには、神道・仏教・儒教がある。ひとつではないのだ。これだけでも人によってさまざまな解釈が成り立ちそうだ。百種類の武士道が出てきそうである。
最近日本で言われているものは、徳川以降のものを指す傾向が強く、主君に絶対的忠誠を誓う道徳であり行動規範である。
つまり、戦闘者であった武士が戦闘者でなくなってから観念的に伝えられたものだ。明治になって日本軍がつくられてからは、天皇のため、という文言が入ってくる。
■新渡戸稲造という存在
武士道といえば、新渡戸稲造が著した『武士道』を思い浮かべる人も多いだろう。この本は、世界中で読まれている。1899年、彼が37歳の時に書き、1900年にアメリカの出版社から出されたものである。
西洋とはちがう古い日本を否定し、脱亜入欧と富国強兵で近代国家を目指す明治国家。そして近代化の基礎がほぼできあがった時期にこの本が書かれていることに意義があるのではないか。
この本は、武士道という封建時代の古い道徳哲学を、西洋文明の文学・哲学・倫理などと重ね合わせ、エピソードをふんだんに導入して欧米人向けに紹介したものだ。
しかし、武士道と名をつけてはいるが、内容は、実は武士道とはいえないのではないか。戦わない人に通じる倫理や道徳律を説いているし、著者はキリスト者であったので、キリスト教的倫理観も色濃くでているからだ。
もっといえば、武士道というものを基礎にして、新しい時代(明治末期以降)に即した行動規範や道徳律を生み出したい新渡戸稲造の姿勢(気概といったほうがいいか)が強く感じられる。武士道と名はついているが武士道とは違う。
その「違い」にこそ、私が同書に惹かれる理由がある。それだけでなく、21世紀を迎えた日本やチェチェンのこと(とりわけウェズデンゲル)を考えるうえでも重要な示唆を与えてくれるし、チェチェンや日本におけるナショナリズムとパトリオティズムについて考える参考書にもなると私は考えている。
そう考えるいたった過程を整理しておきたい。そのためにはまず、武士道の変遷を簡単にまとめよう。その次にチェチェンの精神哲学ウェズデンゲルとのかかわりに触れてみたい。 (つづく)
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登録日:2006年 12月 30日 11:07:01
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