相次ぐ暗殺事件とチェチェンの今 報告(後編)
【グロズヌイ(チェチェン共和国)/ロシア 2日 AFP】インタファクス(Interfax)通信の報道によると、南部チェチェン(Chechnya)共和国議会は2日、親ロシア派のラムザン・カディロフ(Ramzan Kadyrov)大統領代行を次期大統領として承認した。
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(c)AFP/DSK
反対勢力がつぎつぎと暗殺されていくロシア。そのその背後に何があるのか。2月24日に開かれた「国際チェチェンデー 『相次ぐ暗殺事件とチェチェンの今』の報告の後編。
昨年11月に暗殺された元KGB(のちにFSB)中佐リトビネンコの生前のインタビューを受けて考えた。
■改革派・野党政治家が軒並み暗殺か?!
集会で一集会した映像は、常岡浩介氏(ジャーナリスト)によるリトビネンコ生前のインタビュー。そのなかで特徴的なものを拾ってみると・・・。
「ロシアの政府は、特務機関(情報機関)が1950年代末期からは暗殺に従事していないと言うが、これはまったくの嘘なのだ---」
「1991年から1993年までの間は暗殺に手を染めていなかった」
リトビネンコ証言では、暗殺された人はつぎのようになる。
野党下院議員のユシェンコフ、政治家・民族学者のスタロボイトーヴァ、「ノーヴァヤ・ガゼータ」の記者シチェコーチヒン。
■日本なら小沢一郎・志位和夫・福島瑞穂・亀井静香らが殺されたのと同じ
ビデオ上映に続いて、常岡浩介氏、映像作家の岡田一男氏(インタビュービデオの翻訳担当)によるパネルディスカッションとなった。当日のテープに少し手を加え、一部を紹介する。
林 今のビデオを見て、あるいは資料を見て内容がすぐにわかる人は少ないと思いま す。検証しなければならない部分も残っていますが、話半分としてもすごい内容で す。
日本で言うなら、民主党の小沢、社民党の福島、共産党の志位、国民新党の亀井と いった人々が、すべて殺されたような状況だと思います。
そして相次ぐ暗殺を整理すると、まず2006年10月に、チェチェン戦争の批判記事を書 いていた『ノーヴァヤ・ガゼータ』紙のアンナ・ポリトコフスカヤが自宅アパートのエレベ ーターで射殺されました。
そして11月、今度はロンドンでリトビネコが放射性物質で暗殺されていている。ようす るに政府と敵対する人々が殺されている状況です。
リトビネンコは、1999年からの第二次チェチェン戦争のきっかけとなった、モスクワア パート連続爆破事件が、実はFSBのでっちあげだということを本に書いてもいますし、 彼の直前に殺された女性記者アンナなど、チェチェンに関わっている人々が殺されて
います。
常岡 リトビネンコに会ってインタビューしてから1年くらいになりますが、人柄は陽気で 、話を聞いていて本気なのか冗談なのかわからないと思ったこともあります。
たとえばアルカイダのナンバー2といわれるザワヒリは、FSBがダゲスタンで養成し たテロリストなんだという話をしていたのを覚えていますが、あとあとよく彼の発言を 調べてみると、アメリカやイスラエル批判はしていても、ロシア批判はしていないこ とに気が付きました。聞いたときより、逆に帰ってきてから彼の言うことが信頼できる のかなと思いました。
岡田 私はチェチェンの自由とロシアの民主主義は一体だと思っています。(このところ の暗殺によって)、プーチン政権はそれを破壊しようとしているのだと思います。け れど、私はプーチン政権が固い基盤を持っているとは思っていません。本当に強い 政権ならば、こんな暗殺はする必要がないからです。人望や文化で、ロシアを統治 することができると思います。
■テロとFSB
ここからは、集会ではあまり触れなかったことを記す。
それは、これまでチェチェンがらみとされてきたテロ事件のほとんどにFSB(連邦保安局)が関与しているのではないか、ということだ。
リトビネンコは、モスクワ地下鉄爆破事件、アパート連続爆弾テロ事件などはロシア特務機関の仕業だと断定している。
確かに一連のテロはおかしな点がいくつもある。大きな事件では2004年9月におきた学校人質事件(死者330人)である。事件が起きた翌年には、生き残りの人質が次々に証言。
「占拠犯のリーダーはスラブ人(文脈上ロシア人)だった」
「もうひとりスラブ人の女がいてタバコをすっていた」
「犯人は訛りのないオセチア語を話していた」
・・・・・。
つまり何人もの生き残りの複数の証言をまとめれば、ロシア軍人指揮下の地元オセチア人部隊が起こしたテロだということになる。
■NGO弾圧
暗殺が続くロシアでは、昨年秋には大きな変化があった。というより、それまであった傾向に拍車がかかった。それは野党ばかりか、在野の民間団体NGOつぶしを本格派させたことだ。
NGO法をつくり、短期間のうちに無理難題を言ってNGOに登録申請を行わせ、書類がととのわないなどの理由で、つぎつぎに登録抹消にしていったのである。
人権団体などロシアで活動する国際NGOのうち、約8割が登録を更新できず、活動停止上状態に追い込まれた。
また市民団体の街頭活動では大量の逮捕者も出ている。
プーチン政権の暴走としかいいようがない。
●質疑応答
Q.チェチェンで戦う人々の組織はどんなものですか?
「イスラム急進的な人々と、西欧型の社会を望む人々と、伝統主義的な立場から問題を解決しようとする人々がいて、ばらばらな状態だと思います。私自身は伝統主義的な立場を支持しています」(岡田)
「いろいろなグループがあって、91年に独立宣言をしたドゥダーエフを支持してきた勢力が根幹にあると思います。独立派の主流派です」(林)
「独立派の大統領になっているドク・ウマーロフについて言えば、マスハードフよりは権威が低いですよね。チェチェン国内の戦闘は数が少なくなっていますが、チェチェンの周辺では散発的な戦闘が活発になっていて、その地元の人たちが戦っているわけで、前とは変質している感じがします」(常岡)
「彼らも含めて<チェチェン軍>を名乗っているんですよ。チェチェン軍の北ロシア戦線とか、沿ボルガ戦線とか。実際にどれだけのことが行なわれたかはわかりませんが、小さな集団としてこういうものが動いていると考えられます」(岡田)
Q.プーチン後のロシアについての見通しを教えてください
「今のロシアの法律では、大統領の3選は認められていません。自動的に2008年にはプーチンは退場なのですが、彼の周辺では、引退後も影響力を持つような人事が進んでいたり、『3期目もやってもらったほうがいいんじゃないか』といったことをテレビで言うような人が出ていたりします。このあたりはどうなるかわかりません」(岡田)
「ロシアの指導者が、前の指導者の路線を継承したということは一度もなかったのではないかと思います。常に極端から極端へとロシアは行ったり来たりしていたので、完全な継承があれば、歴史上初めてのことなのではないかと思います。もうひとつは、プーチンの権力の基盤は石油の値段が高いから支えられていたわけで、今は価格もさがりつつあるようです」(常岡)
Q.暗殺について。次にあぶないのは誰だと思いますか?
「ロンドンに滞在しているチェチェン独立派の副首相、アフメド・ザカーエフや、ロシア人でチェチェンを追っている記者のアンドレイ・バビーツキ、政商のベレゾフスキーが危ないと思います。去年暗殺されたポリトコフスカヤは、主にチェチェンの市井の人々の中に入っていって取材をしていたわけですが、バビーツキの場合は、チェチェンの武装勢力とも関係を築いている人なので、一番あぶないと思います」(林)
他にもさまざまな問題が語られ、質疑応答も活発な集会となった。(敬称略、文責編集部)
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登録日:2007年 03月 05日 23:23:02
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