邪魔者は消せ(この半年のロシア)①

大規模な反体制デモ、活動家ら拘束されるが同日釈放に - ロシア

【モスクワ/ロシア 14日 AFP】モスクワ中心部でデモ行進を開催し警察に拘束されていたガリー・カスパロフ(Gary Kasparov)氏は14日、拘束から数時間後に釈放された。
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(c)AFP/ALEXANDER NEMENOV

AFPBB News


 二〇〇二年秋、モスクワのホテルのロビーでのことだった。
あるロシア人が、モスクワ出張中の日本人にこう言ったのである。
「私が日本で働いていたとき、林さんが出る集会や講演会に行って、どんな話をするか聞いて報告しろ。そう命じられていたんです」
 私の動向調査を命じていたのは、FSB(ロシア連邦保安局=旧KGB)だ。もちろん、私の話だけでなく、私が発表したチェチェン紛争関連の記事や写真も収集されていた。

◇人間が消えていく

 それから四年が過ぎた。
邪魔者は消せ――。ロシアは、この一言に表せるような暗殺大国になってしまった。政府・軍・警察・官僚の不正をあばこうとする人物が、つぎつぎに消えていく。スターリン時代ならともかく、いまのロシアはそこまでひどくないだろう。大方の人がそう思っていたようだ。

 しかし、二〇〇六年秋に起きた象徴的な二つの暗殺事件で、その考えが間違えであると全世界に知れわたってしまったのである。

 一〇月七日、チェチェン紛争報道でプーチン政権を強烈に批判してきたアンナ・ポリトコフスカヤ記者(「ノーヴァヤ・ガゼータ」紙評論員)が、自宅アパートのエレベーター内で射殺死体となって発見された。

 ついで十一月一日、ロンドンに亡命していた元FSB中佐のアレクサンドル・リトビネンコ氏が放射性物質ポロニウム210を盛られ、同月二三日に死亡した。
二人の生前の言動を探ることで、殺された理由とロシアの現状が浮かび上がってくる。


◇誰が彼女を殺したのか

 アンナ・ポリトコフスカヤ記者の遺体発見直後、ラジオの取材に答えた彼女の夫は、こう語った。

「彼女は信念を曲げない誠実なジャーナリストだった。今のロシアでは生きていけないほど・・」

 この一言は、現在のロシアの言論状況と故人を語るにふさわしい。彼女が信念を曲げずに取材し続けたのはチェチェン戦争である。
この戦争は、帝政ロシアに武力併合されたチェチェン民族の独立闘争に端を発している。

 チェチェンがロシア連邦から独立すると宣言してから紛争が起きた。
ポリトコフスカヤ記者は、九九年に第二次チェチェン戦争が始まってから毎月のように現地に通い、数々の事実を報告してきた。 
 八六歳の老人をロシア兵が惨殺したこと、ロシア軍に逮捕されて拷問を受けた老女、戦乱の中で生きる障害者夫妻・・。

 具体的な人びとの姿を通して戦争の実態を伝えてきたのだ。このようなジャーナリストの活動にいら立ったプーチン大統領は「われわれの敵はテロリストではない。ジャーナリストこそ敵だ」とまで言い切った。

 彼女は、取材中にロシア軍に逮捕されたこともある。「尋問の最も汚らわしい部分はお話することはできません。でも、それまで私が住民から聞き取りした拷問や虐待の話が事実だったことは判明しました」と自身の逮捕経験を振り返っている。(つづく)

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登録日:2007年 04月 17日 11:33:53

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プロフィール
林 克明
(男)
チェチェン総合情報
平成暗黒日記
■ジャーナリスト
■16回チェチェン入り。露店のおばちゃんから指名手配のゲリラ司令官、大統領まで知人 多数。チェチェンを入り口に、ロシア・世界・日本・政治・文化から人間の未来まで縦横無 尽に語る。
■著書「チェチェンで何が起こっているのか」(大富亮氏と共著)など
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