邪魔者は消せ⑤(この半年のロシア)

リトビネンコ殺害事件、容疑者3人の逮捕状請求へ - 英国

【ロンドン/英国 22日 AFP】ロシア連邦保安局(FSB)元幹部、アレクサンドル・リトビネンコ(Alexander Litvinenko)氏の殺害事件で、警察当局はロシア人3人に対し逮捕状を請求する方針を固めた。
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(c)AFP/ALEXEI KUDENKO

AFPBB News


 ソ連の崩壊とともに、まがりなりにもロシアは民主化と言論の自由化に向かっていた。その流れを絶った原因のひとつがチェチェン戦争なのである。言論や報道の自由は戦争遂行の妨げとなるからだ。ロシア当局は、チェチェン問題にヒステリックな反応を示しており、この一連の文章冒頭に書いたように、私のような影響力のない無名のフリー記者の動向さえ探るほどである。

◇報道の自由度、ロシアは世界147位

 〇六年に「国境なき記者団」が発表した報道の自由ランキングでは、調査対象一六八カ国中、ロシアは一四七位。ここ数年のロシア国内のジャーナリストの活動は壊滅的な状況だと指摘されている。

 ロシア・ジャーナリスト連盟によると、ソ連崩壊以降一五年間にロシアで殺されるか失踪した記者は二四六人。前述した今年3月に殺された記者を入れれば二四七人。国際ジャーナリスト同盟によれば、明らかに委嘱殺人と認められるものだけでも四二人に達する。

 弾圧されるのは記者ばかりではない。先の女性記者が殺された〇六年一〇月には、アムネスティ・インターナショナルなどを含む国際NGOの8割が活動停止処分を受け、一一月にモスクワで開かれた集会では、四九〇〇人の参加者のうち五五九人が逮捕された。

 また今年(二〇〇七年)4月には、モスクワとペテルブルグで反政府デモが企画されていたところ、治安警察や内務省軍が集会開場の広場を封鎖。大量の逮捕者を出している。

 ロシアの言論表現活動の自由は壊滅的であり、もはや危険水域に達している。

◇1万円ドロボーと10万円ドロボー

 ここまで読んだ方は、ロシアはなんてひどい国だと思うだろう。確かに007のような現実があり、プーチン大統領による独裁は進んでいる。不思議なことにロシアの独裁や将軍様の弾圧体制には関心があるのに、足元の日本が独裁化・ファシズム化の状況には無関心の人が多い。

 一万円を盗んだドロボーが百万円盗んだドロボーに対し、「あいつは百万円も盗んだとんでもない奴だ!」と叫ぶ。声を大にして叫び続けると、百万円ドロボーだけが悪くて、あたかも一万円ドロが悪くないかのように感じてしまう。日本の小泉・安倍政権は、さしずめ一万円ドロ、百万円盗んでいるロシアのプーチン政権ほど悪くはないが。 

 一〇年以上、チェチェンを通してロシアと日本を見る癖がついている私からすれば、日本はロシアの進む方向を目指しているとしか思えない。

 これといった政治家としての実績もなかったプーチン氏が人気者になったのは、第二次チェチェン戦争を開始したためである。徹底的にチェチェン=悪というイメージを政権とマスコミが流し、反チェチェン感情を利用して戦争を支持するように仕向けた。

 日本でも、実績はあまりない安倍信三氏が、マスコミの北朝鮮報道の洪水と国民の反北朝鮮感情に支えられてスターの座についた。

 戦争・紛争好きなのも似ている。プーチン大統領は、チェチェン独立派の和平交渉にこれまで一切応じずに、和平交渉を呼びかけた相手をことごとく殺してきた。安倍首相も中国・南北朝鮮に対して強硬な姿勢を示すわりには外交ができていない。

◇政権支配下に入った日露両国のマスコミ

 報道弾圧も同じ。ロシアの三大テレビネットワークは政権下にあり、主要な新聞も政府系になっている。日本でも、とくに小泉時代には、大新聞とテレビは政権べったりで、小泉劇場なるものを作り出し、やれ滑った転んだ、やれ小泉チルドレンだ、などと持ち上げて大切なことは、あまり報道していない。

 それどころか、総務大臣は放送法改悪をちらつかせて、テレビへの介入を拡大させようとしている。

 プーチン大統領は、新聞の人事にまで介入し、有力紙「イズベスチヤ」編集長を解任した。一方、総理就任前の安倍氏は、従軍慰安婦問題を扱ったNHKに圧力をかけて番組を改竄させたり、雑誌を訴えたりしている。ご両人ともメディア規制が大好きである。

◇日本でも言論表現活動の妨害が強まっている

 要するに、ロシアはロシア帝国へ、日本は日本帝国に回帰している。

 相談しただけで罪になる共謀罪の上程、自衛隊のイラク派兵反対のビラを配った人たちが逮捕・起訴・東京高裁で有罪判決。共産党のビラ配りで逮捕、公衆便所の反戦落書きで逮捕起訴有罪、密告法(いわゆるゲートキーパー法)を画策する政府・・。

 さらには明白な憲法違反の自衛隊イラク派遣が強行され、自衛隊の海外派遣が本来任務とされた。

 教育基本法改定で、表現は巧みだが、お国のためにつくすことが教育だとされしまった。もう日本は「昭和デモクラシー」時代とは違う国になってしまったのである。

 一万円盗んでも国民の非難の声が沸き起こらないのに味を占めた自民公明連立政権は、二万円、三万円と行動が大胆になり、百万ドロのロシアに少しずつ近づいている。彼らは安心してやりたい放題できる。

 だって、日本では百姓一揆も打ち壊しも起きないんだから。
                                                 (終わり)


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登録日:2007年 04月 25日 09:00:00

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プロフィール
林 克明
(男)
チェチェン総合情報
平成暗黒日記
■ジャーナリスト
■16回チェチェン入り。露店のおばちゃんから指名手配のゲリラ司令官、大統領まで知人 多数。チェチェンを入り口に、ロシア・世界・日本・政治・文化から人間の未来まで縦横無 尽に語る。
■著書「チェチェンで何が起こっているのか」(大富亮氏と共著)など
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