敵国「北朝鮮」への挑戦
【ニューヨーク/米国 15日 AFP】国連安全保障理事会(UN Security Council)は14日、核実験の実施を発表した北朝鮮に対する制裁措置の決議を全会一致で採択した。写真は、北朝鮮の朴吉淵(Pak Gil-Yon)国連大使(左)。(c)AFP/Stan HONDA
北朝鮮への制裁措置決議が安保理で採択された。
同国による核実験実施の報告から決議の採択まで「異例のスピード」と言われているが、果たして「異例のスピード」は賞賛に値することなのだろうか。
これまで、国際社会で特に動向を注目していた国の1つが起こした反社会的行動について、即座に対応するのがあたりまえであって、もしそれが1週間以上かかるなら、その方が問題なのだ。
また、北朝鮮が核実験実施を発表してから最も早く「経済制裁措置をとる」としたのは日本だ。
この日本の対応を、世論はどう評価するのか。
●遅すぎた対応
餓死した身内の死体を食べるほど、そして「死体を食べてはいけない」などという常規を逸脱した法律が存在するほど、北朝鮮の内情はすさまじいものだ。
最近では壁に反政府的な落書きを書くという、国民による精一杯の「反乱」も見られるようだが、そんなことすら命の危険が伴う国だ。
19世紀の独裁者スターリン、そして20世紀の独裁者ヒトラーのようなカリスマ性のかけらもない、ただの史上最低な共産国家のならず者、金正日率いるカルト国家に、日の出ずる国、日本はさんざんとやり込められてきた。
ミサイルによる威嚇や拉致問題など、例を挙げればきりがない。
「北朝鮮問題」という言葉に日本のマスコミはムダに騒ぎ立て、政治家は票取りのためだけに利用してきた。
もっと言えば、靖国参拝問題などでもわかるように、肝心なところで伝統を重んじたような独自の感情論に走り、結果として敵国にスキを与えている。
外交音痴にもほどがある。
安保理の採択の後に、北朝鮮の外務省では「米国の圧力を回避するために、核を持って威嚇するしか手だてがなかった」と発表している。
北朝鮮は、国民が餓死しているような国だ。
金正日を除けばデブが1人もいない、そんな超貧困国だ。
食料もない、物もない、燃料もないから軍事力も小さい。
そんな国が唯一頼るものは、核しかない。
なぜなら、核は安いコストで簡単に作れ、しかも政治的な国際世論を動かすことができるからだ。
世界中を見回してほしい。
あえて「核」を外交に持ち出しているのは北朝鮮のほか、フセインが統治していた頃のイラク、インド、パキスタンなどなど、それ以外何もない弱小国ばかりだ。
北朝鮮問題に敏感な安倍氏が首相に就任した直後にたまたま問題が勃発し、日本は安保理の採択を待たず「独自に制裁措置をとる」と発表した。
なぜ、今ごろ?
●米国の賢いやり方
決議の内容は、制裁措置は船舶検査、資金取引や金融資産の凍結などの経済制裁が主で、武力行使に発展する可能性も除外視してはいないものの、今回の決議内容には含まれていない。
採択の土壇場で米国の決議案に再修正を要求したのは中国とロシア。
中国は「急激な経済成長と北京オリンピック開催を控えている」、またロシアは「北朝鮮へ武器を供給し国家経済を保っている」という、毎度ながら共産国家らしい利己主義な事情によるのが、大方の理由だろう。
両国とも船舶検査については拒否している。
しかし、金融資産凍結などの、いわゆるブロック政策的な決議については反米諸国も含め、全会一致で決議が採択された。
米国にとって、そのような中国とロシアの茶番は想定内だ。
そして、国連に加盟している多くが、金と力で操れることも、今回ばかりは米国にとって都合がいい。
経済的に四面楚歌になった北朝鮮が、半ばヤケクソで最終行為に及ぶことを待っているわけだ。
安保理の最後に、北朝鮮の国連大使がさんざん米国を罵倒した後、「宣戦布告と受け取る」といった内容の発言をした。
もともと北朝鮮など、どこの国にとってもうるさいハエをつぶすくらいのメリットにしかならない。
しかし、日本にとっては別だ。
同じアジアにいながら抑えることができなかった中国、日本のケツ持ちという形で、米国が動き出した。
「放っておいてもそのうち自滅する。関わるだけアホくさい」というのが本音だろうが、一方ではアジアの大国が解決できなかった問題に星条旗を突き刺すことは、米国にとってうるさいハエを叩きつぶす好チャンスになる。
「我々は話し合いによって平和的に解決しようとしたのに・・・・・・。拳を振り上げられたら、正義のためにシャットアウトするしかない」
米国はケンカのプロだ。
今頃、ブッシュ米大統領は鏡に向かい、このセリフを何度も練習していることだろう。
日本はまたしても米国に大きな借りをつくることになる。
日本が北朝鮮を制圧できなかったのは「軍隊を持たないから」というのは、ほんの小さな要因でしかない。
北朝鮮問題にイケイケの安倍首相に対抗し、「造反組を発足する」などと騒いでいるヒマな政治家が多すぎるからだ。
外交問題に発展しても感情論に突っ走り、公に靖国神社を参拝している鈍くさい政治家が多すぎるからだ。
「クリーン政治」をバカ正直に外交へ持ち込もうとする姿勢が偽善じみているからだ。
●日本人としての魂
しかし、「やられたらやって返す」と単純にはいかないのが外交問題だ。
今回の例でもわかるように、北朝鮮に対し制裁措置を与えることで、次のリアクションが懸念されるからだ。
金正日は100度の公開処刑にしてもまだまだ足りないくらいにあくどい生き物だが、しかし、国民は別だ。
今の北朝鮮にとって、経済制裁は武力行使にも匹敵するほどの大打撃になりうる。
すると、次の道はもう、捨て鉢になって武力行使に出るか、またはテロを起こすかしか残されていない。
そうなれば、どこがあれだけの国民を受け入れるのだろうか。
共産思想を植え付けられた国民を、誰がどうやって社会の中で適応させていくのだろうか。
脱北者も増えるだろう。
日本の自衛隊から戦後初の死者が出る可能性も否定できない。
経済制裁が決定した今、陸・海・空など、国の出入り口ではさらに厳戒態勢がしかれ、警備も命がけになる。
武力行使は盛り込まれていない第一次制裁措置決議だが、事実上、我が国の自衛官らは危険にさらされることになる。
外交上の「制裁」とはそういうことだ。
もちろん、たとえ戦争になったとしても、日本国内での本土決戦はないだろう。
しかし、我々が平穏に日常を送れるために、見えないところで同胞の命が危機さらされるという事実を直視するべきではないだろうか。
この期に及んでも、どっかのアイドルグループのだれそれが脱退するとかしないとか、くだらないことを連日放送しているっているテレビ局が幅をきかせている日本のマスコミには腹が立つ。
日本国民のどれくらいが、自国に迫る危機を正しく理解しているのだろうか。
北朝鮮国民の問題や自衛隊の問題など、チェーン・リアクションについて、真摯に受け止めている人間はどれくらいいるのだろうか。
第2次世界大戦で散った命の上に、今の平和な日本が存在する。
そして、その後の日本を復興させた「団塊の世代」と呼ばれる先輩方のおかげで、今の豊かな姿が存在する。
平和で豊か、そして自由な国、日本。
すばらしい国ではないか。
そんな我々の国を脅かす北朝鮮に対し、どう対応するべきなのか、これまでの失態を振り返り、真剣に考えなくてはいけない。
コメント[10], トラックバック[0]
登録日:2006年 10月 16日 11:49:47
コメント
ただただあの国の内部でクーデターが起きて、唯一のデブを○○してほしい、それだけを願っております。
すずか @ 2006年 10月 16日 12:30:54
>すすか様
今、起きているクーデターが「壁の落書き」で、それが精一杯の抵抗なんでしょうね。
でも、家の中で金正日の悪口を言っただけでも殺されてしまう危険があるような状況下では大きな進歩なんですよね。
だから、暗殺を試みるなど、あと100年くらい経たないとムリでしょうね。
そういう北朝鮮と比べると、”情勢が不安定”と言われ内戦が勃発している世界各地の弱小国の方が、自己の欲求のためにアクションを起こせるだけ、ほんの少しマトモなのかもしれませんね。
藤原Hikki @ 2006年 10月 16日 12:43:26
女性らしさを強いるつもりはございませんが、あまりに乱暴な言葉じりは如何なものでしょう。女性右翼のさきがけのような櫻井よしこさんでも、もうすこし丁寧に毒をお吐きになってましたよ。
通りがかり @ 2006年 10月 16日 14:28:18
今回の記事を読んで、藤原さんの「物書き」としての凄み、牙の鋭さ、知識の
奥深さを実感させられました。
ライターという世界では、こうした文章を書けないと生き残っていけないのだろ
うな、とも。
…私はまだまだ半人前、いや、四分の一人前以下です。
高瀬 @ 2006年 10月 17日 10:36:31
>通りがかり様、高瀬様
ライターには大きく分けて3種類いると思います。
1.新しいことや画期的なことをどんどん宣伝していくタイプ
2.問題を追求しするタイプ
3.宣伝的なストーリーを書くタイプ
昔、記者をしていた時、1や3系の記事ばかり書かされ、自分の中でジレンマに陥っていた時がありました。
「問題をプロボークするものを書きたい!」
でも、先輩に「波紋を呼ぶ記事を書くことだけが記者の仕事じゃないでしょ」と言われ、それもそーだなと納得したものです。
日本では、批評を展開するとジャーナリスト、そうじゃないとライターと呼ばれることが多いですが、私はそれは大間違いだと思います。
世界的な認識に仕方も、ライターとジャーナリストを区切るのは日本だけです。
普通、ライターといったら、作家のことですから。
でも、そんな小さいことはどーでもいいんです。
要は、自分がどんなタイプの記事を書きたいかですよね。
新聞では100%誤解のないよう、起こった真実を伝えるために感情論は一切省き、ニュートラルな文面に徹します。
一部のタブロイドを除き、だから、新聞の文面ってみな同じですよね。
また、多くの雑誌では、「世の中にいいこと」という前提で記事を書くことを求められます。
これも、ゴシップ雑誌を除いてですが……。
逆に、ゴシップ雑誌には、スキャンダルが針小棒大に書かれています。
ことの善し悪しは別として、たとえば「あゆと長瀬は、実は、まだラブラブだった」など、たいして中味もないネタをあんなふうにまとめ、読者の興味をそそるのですから、あれこそウデがないと書けないですよね。
一度書いてみたいですね。
まぁ、それはそれで1つのスタイルであって、要求された時にはある程度自分を枠にはめて、編集方針に合わせて書けばいいだけのハナシですよね。
需要と供給ですよ。
しかし、個人的にはどんなケースでも、誰かが反応するような文章を書くのがスキです。
無関心でいられることが、何よりも恐ろしいです。
だから、何でもいいんですよ。
内容についてでも、表現の仕方でも、とにかく反応があれば。
ただ、2の類の文章を書けば、1.2.の場合と比べ、反応も大きい変わりに、間違いなく厳しい指摘を受ける可能性も大きいです。
あるいは中傷されることもあります。
でも、しゃあーないね。
自分だって、激しく書いてるわけだから。
でも、編集方針としてワンサイドオピニオンを書くことが許されている限り、うん、とことんカゲギにいきたいですね(笑)
ふふふ。
タイトル変えようかね、「Hikkiの挑戦」と……(苦笑)。
藤原Hikki @ 2006年 10月 18日 02:01:50
さすが藤原さん。
ブログもコメントも充実度がすごいっ!
そういえばですが
私、昔とても管理された女子大に在籍中
経営者一族の強引なやり方が気に食わなくて
エントランスの掲示板に
当時の教務部長の風刺似顔絵を描いて
べた と貼ったことが。←イラスト得意
当然すごい騒ぎになりました(笑
くぼ@赤ウサギ @ 2006年 10月 18日 08:18:21
>通りががりさん
「でぶ」とか「豚」とかの汚い言葉だけが目立って内容に目新しさが無いくせに、最後「我々は~考えなくてはならない」とほっぽり投げているところにずさんさを感じるんですよね。
ネコ @ 2006年 10月 19日 23:16:58
↑
こーゆーコメントって、ズルい気がします。
匿名で、書いてる人を中傷してるようなかんじ。
表現は確かに荒っぽいですが、言っていることはそうまちがってはいないと思います。
あげ足とりみたいなコメントをする人がいるから、誰も思いきったことを言わなくなるんじゃないですか?
堤絵里子 @ 2006年 10月 20日 08:26:31
日本の本音は、パックスアメリカーナの中での外交で、
アメリカの本音は、イラクみたいに石油もないから、戦争なんてコストのかかることはしたくなくて、北朝鮮の本音は、金融制裁だけをどうにかしたいから、最終的には、核の放棄を含めた行動をとるような気がするのですが・・・・・。
山下 @ 2006年 10月 20日 12:54:05
>山下様
コメントありがとうございます。
まさに、おっしゃる通りの関係が成り立っていると思います。
北朝鮮は核を放棄するのでしょうか?
まったく予測がつきません。
実際に核を用いた軍事攻撃を仕掛ける可能性は低いとしても、もう一度核実験を行うか、またはテロ行為に出るか、財布の紐を締められたからといって、今さらおとなしく核を放棄するとは思えないような気もしますが……。
今回のブロック制裁が北朝鮮をやり込めるか、それとも爆発させるのか、いずれにしても「北朝鮮問題」はまだまだ続きそうです。
なによりも、この問題が長引くことで自衛官に犠牲が出る危険性が大きくなるのがたまらないです。
藤原Hikki @ 2006年 10月 20日 15:19:16
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- プロフィール
- 藤原ヒカル
- (女)
- カンガルーの国、オーストラリアでジャーナリズムを学び、その後は現地で新聞記者に・・・・・・。業界へのデビューを果たすが、目指すところは”イラク”ではなく、”ミュージックシーン”だったりする。10歳の時にテレビで聖飢魔IIのライブを見て、デーモン閣下に一目惚れ。後にKISSなどの大御所を知って(普通は、逆!)、「話してみたい♪」とミーハー的な理由で英語を猛勉強。HR/HM歴20数年。現在は日本在住。企業や国家の政策などのコアな記事から外国人クリエーター、芸術家たちにインタビューして記事を書くのがお仕事。
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