「英雄」は「英雄」に掃討される

サダム・フセイン元大統領、死刑執行 - イラク

【バグダッド/イラク 30日 AFP】サダム・フセイン(Saddam Hussein)元大統領(69)の絞首刑が30日、自らの政権時代に使用していた拷問施設の一つで執行された。
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(c)AFP/DSK

AFPBB News


2006年の最後、先日まで一国の英雄だった人物に死刑が執行された。

私はこの写真を見て、強い不快感を感じた。
衝撃的な写真のせいでもな。
もちろん、罪に問われていたジェノサイドは重罪に値する。
フセイン元大統領の弁護をするわけではないが、彼は北朝鮮の金正日のように、すべての国民を食いものにしたわけではない。
言ってみれば、ジェノサイドはシーア派とスンニ派の宗派間紛争により起きた惨事であり、それを米主導の国際法廷で裁き、死刑判決を言い渡したと思えば即時に執行という、米国の政治的絵図に憤りを感じるのだ。
1人の反米主義者を別件で、見せしめに殺しているのではという感覚さえする。
この嫌らしい米国のやり方に吐き気がする。


フセイン元大統領は、イラク戦争で米主導の連合軍に負けてから身柄を拘束され、そして裁判が始まった。
問われていた罪は、ジェノサイド。
彼の暗殺未遂事件をきっかけに、イスラム教シーア派を虐殺したからだ。


●米国主導の独裁世界を目指して

私が高校生の時、湾岸戦争が勃発した。
90年8月にイラクがクウェートに侵攻したことをきっかけに、米主導の多国籍軍は翌年の1月にイラクへ攻撃を開始した。
「オイルメジャーや当時の軍産複合体社会への利益のための戦争」「仕組まれた戦争」など、いろいろな説も飛び交うが、まだ子供だった私は、資本主義のプロパガンダにまんまと洗脳(?)され、「フセインは悪いヤツだ!」と思っていた。

そして、2003年、「サダム・フセインVSブッシュ親子の因縁の対決~完結編」とも言えるであろう戦争が勃発した。
それ以後のストーリーはみなさんの記憶にも新しいと思うが、フセイン元大統領の拘束、米主導のイラク再復興、そして、フセイン元大統領の死刑判決が確定した。

この死刑判決についてだが、どうも、今回は複雑な気持ちがする。
もちろん、家族を虐殺されたシーア派住民にとっては、フセイン元大統領は憎き大悪魔だ。
しかし、対立するスンニ派からすると、「名誉の殺人」として敵をやっつけることを正当化した英雄なわけだ。
シーア派に殺されかけたフセイン元大統領は、「そんな危ない奴らは抹殺してしまえ」ということで、大量虐殺という手段を講じた。
こんな経緯を考えると、今回のフセイン元大統領の死刑判決は、一介の民族紛争を米国が利用し、米国と相反する政治的思想を掲げる”敵”の指導者を殺害しようとしているだけではないのだろうか。
米国だってやっていることは同じなのだと思う。

私は親米派、反米派のどちらでもない。
ただ、一国の独裁政権は国際社会から激しく非難されるが、それでは、世界が米国による独裁体制になりつつあることへの抗議は、いったい誰がとりまとめてくれるのだろうかと不思議に思う。

「自由の国、アメリカ!」

ふっ、冗談もほどほどに・・・・・・。
米国の元に、自由はない。
その証拠に、共産圏の独裁国家は、米国によってすべて「テロリスト支援国家」とされてしまうのだから。
しかし私は、米国が金正日やカダフィー、そしてフセイン元大統領らなど、独裁者と呼ばれる人物らとどう違うのか、よく分からない。
たとえば、現在のパレスチナ自治区を見てみよう。
今年3月から、過激派のハマスが政権を握ってから、米国をはじめ、親交のある国はパレスチナへの直接的な支援を途絶している。
しかし、その打撃を最もくらっているのは、ハマスの指導者らではなく、ファタを指示する住民も含んだ一般人だ。
米国が世界平和を訴えながら遠回しに内政干渉し、これらの独裁者を掃討する過程で、無差別に独裁者に操られる人々を苦しめることは、テロとどうちがうのだろうか。
もちろん、私は独裁国家を決して肯定しない。
ただ、独裁国家を非難する米国と、独裁国家の指導者らとでは、やっていることは結局同じではないのだろうか。

世界の独裁者が「正義」を楯に、一国の独裁者を裁くのだから、皮肉な世の中ではないか。
さて、いったい誰が、正義的に米国の独裁を裁くのだろう。

コメント[8], トラックバック[0]
登録日:2006年 12月 30日 19:55:51

コメント

※同記事は、一度掲載した後で写真を差し替えさせていいただきました。
そのため、同内容の記事に対するコメントが削除されてしまいました。
コメントを書き込んでくださったみなさまへ、深くお詫び申し上げます。

藤原Hikki @ 2006年 12月 30日 20:03:14

あらま

どしたん?

まいっか

3段論法(爆

くぼ@赤ウサギ @ 2006年 12月 30日 20:55:21

では、気持ちも新たに。

島国で(基本的に)単一民族国家の日本人には分からない複雑な図式が、世界には存在するのですよね。そのときそのときで、「正義」ではなく「力」により支配される、それが後の世代にいわゆる「歴史」として、語り継がれるものとなってきたのでしょう。
しかし、現代は違う。ひとつ間違えると、私たちの「未来」ごと吹っ飛ぶ危うさが、出てきています。

大きなことはできないけれど、けして中立ではない「報道」の裏に隠された、ものごとの本質だけは、自分なりにがんばって探ってみたいと思っています。

くぼ@赤ウサギ @ 2006年 12月 30日 21:04:37

>くぼさん

再び、ありがとうございます!
メディアのパワーはある意味、とてもデンジャラスですよね。
だからこそ、我々はものごとについて「考える」ということをしないといけないのでしょうね。
たとえば、今回のフセインの死刑執行に関して、ブッシュ米大統領は「国民が公平な民主主義を支持した進歩である」というような感じのことを言っていたようです。
だけど、本当にそうなのでしょうか。
今回は、フセイン元大統領に強く同情します。

藤原Hikki @ 2006年 12月 30日 23:00:02

まったく藤原さんと同感です。
決してフセインを擁護するつもりはありませんが、
アメリカに彼を裁く権利はない。
しかも、こんな年末のどさくさにまぎれて、やり方が汚い!後味が悪い年末、夢見の悪い新年にしてくれやがって!って感じです。
ニュースの裏側にあるものを感じ取ることは難しいけれど、いつでも情報を鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えるクセをつけないといけませんね。

hideinu@wada @ 2006年 12月 31日 00:23:18

>hideinuさん
今回の裁判が公正なものだとしたら、フセイン元大統領が裁かれるべき最大の罪は、オイル利権を独り占めしようとした90年のクウェート侵攻だと思います。
しかし、実際に裁かれたのは他の件に比べると小規模なシーア派のジェノサイドでした。
そして、刑確定からものすごい速さで死刑執行となりました。
シーア派クルド人とフセイン元大統領に追放されたマリキ現首相が、利害の一致する米国と共にフセイン元大統領に「報復した」ということ以外に理解できません。

藤原Hikki @ 2006年 12月 31日 03:59:25

イスラムの定義の沿ったという意味ではありませんが、今回の死刑執行により、サダムフセインを殉教者と理解される土壌を作ったのだと思います。早期の死刑執行自体、アメリカは阻止しようとしたようですし。

私が会っているイラク人に関する限り、サダムフセインはもう過去のひとで、とにかく目の前の生活(治安・電気・水等の基本的な生活環境)をなんとかしたいと考えているひとが多数です。

「アメリカは信用ならん」と、日本で思うのと、中東でそう感じるのはレベルが全く違い、面食らってばかり。

それにしてもアメリカが地上部隊進攻のときに、戦車からメタリカの曲を大音響でかけるという話は本当なんですかねぇ。

中東三昧 @ 2007年 01月 14日 09:31:08

>中東三昧さま

お久しぶりです(^o^)

フセイン元大統領の死刑については、たぶん……といっても、個人の憶測の範囲をこえませんが、米国は時期をみはからっていたのだと思います。
最初は、フセインの死刑でスンニ派が大暴動を起こすことを懸念していたのだと思います。
しかし、実はそんな問題にはとどまらなかった。
何としてもベトナム戦争のような失態だけは避けたい米国は、新年が明けたら新戦略を展開しようと着々と、しかも超極秘扱いで作戦を練ってきた。
そこで、2006年の最後に旧政権の象徴とも言えるフセイン元大統領の死刑を執行し、年明けに新戦略として米軍の増強などの発表をしたのかなと。

どうでしょうか?

ちなみに、先日発表したイラク新戦略にはものすごいブーイングですよね。
特に、増兵については、すでに「ベトナム戦争の悲劇を繰り返すつもりか!」という非難もすごいらしいです。

米国は確かにイケイケですが、中東問題の元凶は英国にあると私は考えています。
まぁ、責任の追及をしても仕方がないのですが、英国も米国並みに、もっと積極的に頭を抱えるべきだという気がします。

ちなみに、CNNによると、死刑執行の映像を見たブッシュ大統領は、ものすごいショックを受けたそうです。
刑が執行される瞬間、シーア派から罵声を浴びせられるなど、フセイン元大統領の人権があまりにも酷く侵害されていたからだそうです。

藤原Hikki @ 2007年 01月 14日 10:07:27

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プロフィール
藤原ヒカル
藤原ヒカル
(女)
カンガルーの国、オーストラリアでジャーナリズムを学び、その後は現地で新聞記者に・・・・・・。業界へのデビューを果たすが、目指すところは”イラク”ではなく、”ミュージックシーン”だったりする。10歳の時にテレビで聖飢魔IIのライブを見て、デーモン閣下に一目惚れ。後にKISSなどの大御所を知って(普通は、逆!)、「話してみたい♪」とミーハー的な理由で英語を猛勉強。HR/HM歴20数年。現在は日本在住。企業や国家の政策などのコアな記事から外国人クリエーター、芸術家たちにインタビューして記事を書くのがお仕事。
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