ジャズは子守唄、そしてロックはレクイエム

<第40回モントルー・ジャズフェスティバル>B・B・キング出演 - スイス

【モントルー/スイス 4日 AFP】6月30日~7月15日の日程で第40回モントルー・ジャズフェスティバル(the 40th Montreux Jazz festival)が開幕した。
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(c)AFP/FABRICE COFFRINI

AFPBB News


●ジャズで育つ
たのきんトリオやチェッカーズが大好きだったのに、なぜかいつも家中に流れていたのはジャズのトランペットだったりピアノだったり……。
車に乗ってもジャズ、日曜日には朝から晩までジャズ、ジャズ、ジャズ……。

ある日、通っていたそろばん塾の先生から電話がかかってきたのだが、第一声が「ヒカルちゃんのおうちって、喫茶店だったの?」
いえいえ、とんでもございません。
ウチの父様はフツーのサラリーマンでございます。
そして、ついでに母様は専業主婦でございます。

母様が好きだったイングリッド・へブラー(当時は”モーツアルトの女王”と呼ばれていた)が演奏するモーツアルト作品集のLP盤レコードと、唯一私が4歳の誕生日に買ってもらったダウンタウン・ブギウギ・バンドの『スモーキング・ブギ』(ただしシングル)を除くすべてのレコードはジャズ。

ベイシー、Mデイビス、グレンミラー、ビリー・ホリデー、エラ・フィッジェラルドetc……。
彼らはまさにジャズの代名詞みたいな存在なので覚えているだけで、そのほかにもありとあらゆるコアなジャズのレコードがぎっしりとラックに並んでいた。

そう。
父様は接頭語として”バカ”をつけただけではまったく足りないほどのジャズキチガイで、なんでもそれらのレコードは学生のころから買い集めたものらしい。

サンスイのスピーカーやらナンチャラのオーディオやら、そして極めつけは特注のダイヤモンドの針を”搭載”した一式には『手を触れるべからず』の勅令が出されており、狭い部屋の1/3を占める辺りには暗黙の了解で近寄れなかった。
そんなかつての父様のキチガイ振りもCDの一般化とレコード文化の衰退には勝てず、しかし、200枚以上もあるそれらのレコードは今でも堂々と(?)実家の2階にたたずんでいる。

つい何年か前に、「こん中にはかなりのプレミアもんがぜったいあるよ!レコードショップに売っちゃえば?儲かるでぇ~」と提案してみたが、父様はただ苦虫を潰したような顔をしただけ……。

だって、プレイヤーがなければ、聞けないジャン。


●I like Jazz but what matter of my life is HARD ROCK
そんなわけで、私が『ジャズで育った』というのは、ほぼ不可抗力みたいなものだ。
ピアノやらクラリネットやら、楽器を演奏する父様は私が15歳でギターを弾き始めた時、密かに「将来、親子セッションができるかも」と思ったという。
しかし、そんな父様の期待を見事に裏切り、私が骨の髄までどっぷりと感化されてしまったものは、ヘッドバッキングの熱いハードロックなのだ。

これまでの私のバンド人生で、最も影響を受けたのは17歳のころだ。
当時、某大学の医学部の学食で仕事をしていた定時制の高校に通う友人の紹介で、大学生のお兄ちゃん・お姉ちゃんらとバンドを組むことになったのだが、それは私にとって、とても刺激的だった。
まず、いくらバイトで稼いでも高校生には絶対に買えないような超ランクの高いアンプやらミキサーやらがそろっており、オマケに練習スタジオも完備されていた。
これまでおんぼろのスタジオでしか練習したことがなかった私は革命的なものを感じた。
それから、そのころは高校生のバンドというと”ヤンキー”が多く、演奏というよりは派手な格好でライブをしたり、その後の打ち上げで酒を飲んだりすることがメインの傾向にあったのだが、大学生のお兄ちゃん、お姉ちゃんはフツーの感じで演奏だけはうまいので、これまた居心地がよかった。

サークルではロック、ジャズ、フージョン、歌謡曲系など、いろいろなバンドがあったが、中でも私が一番好きだったのは、やはりハードロック系の『CANCER』というバンドである。
オリジナルのほかMr.Bigのコピーなどもやっていたのだが、そこのギタリストのお兄ちゃんを好きで好きで好きで、もう……。
もちろん、当時24歳のNさんにとっては、17歳の私など単なる妹分でしかなかったわけだが……。
見かけはオトナシそうなフツーの兄ちゃんなのだが、ステージに上がると古代からのテクニック、パワー・ポジション(両足を大きく広げてギターを抱えるポジション)で、フェンダーUSA・アメリカン・スタンダードをエフェクターなしでマーシャルにぶっこみ、長い指でピロピロピロ~と速弾きする姿はもう……一目惚れである。
同年代の親友らには「ぜんぜんカッコよくないじゃん!」などと言われていたが、彼の魅力は私にしかわからない!!
金魚のフンみたいにいつも「Nさん、Nさん」とくっついていた。
それでもNさんはつきまとう私を追い払うでもなく、ギターのテクニックや彼のロック概論などをいつも語ってくれたやさしい人だった。

当時できたばかりの『オレンジ・カウンティー』というライブハウス・カフェで、Nさんとサルみたいなサークルの部長(確か、彼のバンド名も動物系だったはず……)が茶をしばいていることろをたまたま学校帰りに通りがかり、制服のままお兄ちゃんたちのミーティングに混ぜてもらったことがあったのだが、ちょっと大人びた世界が楽しくて楽しくて仕方がなかった。
待ち合わせしても会うのが大変という東京では、”好きな人にバッタリ会う”なんてのは”月9”だけ。
弘前の狭い町に感謝したものだった。

人生に”もしも”はない。
だから、過去を振り返り懐かしむということがキライな私だが、唯一戻れるものなら戻りたいというのが、Nさんや年上の仲間と過ごしたあの日々かもしれない。

ちなみに『CANCER』だが、Nさんにバンド名の由来を聞いたところ、「医学部らしい名前を付けようと思った」からだという。
「かに座じゃなくて、ガンの方ね」と半分笑いながらそう語ったNさんの姿が、今でもまぶたの裏に焼きついている。


脳内麻薬の放出
大企業、はやりモノ、超有名など、人が無条件で飛びつくものには否定的なひねくれ者の私だが、最近ついに『i-Pod』を購入した。
その理由は、以前にもブログに書いたが「ロックに生きる」と誓ったからだ。
それには、常に脳内マリファナを大量に放出しなくてはいけない。
『i-Pod』には今日時点で200曲ほど入っているのだが、全部(※)face-melting-guitar-soloのgut-busting-hard-rockばかり。
おかげで、ここ数日は何が起ころうと、常にハイ状態の私である。
なんだか、人生の前借をしているような気分になってくる。
同時に、左右の耳から入り込むギターソロが頭の中に響くたび、頭蓋骨の真ん中にNさんが登場し、パワー・ポジションで熱く弦を弾くのだ。
まるで、Nさんのギターを聞いているようだ。

私が33歳だから、Nさんは今年で40歳。
きっと今頃は、当時付き合っていた4歳年上のKさんと幸せな家庭を築きながら、大学病院のドクター兼スパー・ギタリストとしてロックな人生を歩んでいることだと思う。
20歳代後半からはボーカルへとポジション・チェンジした私だが、今でも熱いハードロックをこよなく愛している。

”一生のお願い”が本当に叶うのなら、それは再びNさんとロックを楽しむことだ。





※face-melting-guitar-solo―表情が軟化するようなキュルルル~というロックなギターソロの意。
gut-busting-hard-rock―内臓が破裂するほどガンガンに熱いハードロックの意。
なお、これらは”HIKKI成句”であり、英語辞典などには掲載がないことが懸念される。

コメント[7], トラックバック[0]
登録日:2006年 07月 07日 13:51:11

コメント

イングリッド・ヘブラー、私も好きです(^・^)
今日の藤原さん
甘くて切ない青春の1ページ、のお話ですね。
しみじみ・・・

くぼ@赤ウサギ @ 2006年 07月 07日 19:52:51

ガラじゃないっすね(汗)

藤原Hikki @ 2006年 07月 07日 20:10:45

あたしゃーにほんごロック(これも私の造語)が好きですー。
メガネかけたボーカルのいるバンドたちなど。結構いいですよー。藤原さんも是非。
こんど彼らのことを、書こうと思いつつ、なかなか筆(いや、キーボード)が進まん。

すずか @ 2006年 07月 07日 22:51:16

>すずかさん
そういえば、Nさんはメガネ掛けてました!
だから、「えっ?ロック?ギタリスト?!!」って感じの兄ちゃんだったんですよぉ~。
昔、『人間椅子』という、サウンドはめちゃくちゃハードロックなのに、歌詞は全部津軽弁という怪しいバンドがあったんですが、Nさんはそこのギタリストに似ているかも・・・。
あ”っ。
Nさんネタ、引っ張りすぎ?!

藤原Hikki @ 2006年 07月 08日 08:06:38

藤原hikkiさん、こんにちは。
 「ジャズは子守唄」の言葉に惹かれ、初書き込み。
 素晴らしい父上をお持ちでうらやましいですね。両親の影響で小さい頃から早くに音楽や絵の世界に親しんだ人は普通の人と聴こえる音色や見える色彩がきっと違うはずだって思っています。
 私は後天的(?)に大人になってからジャズetc.を聞き始めたので典型的な「頭でっかち」タイプ。でもグっとくる曲を聴いていてエンドルフィンが出る瞬間は何となく分かります。
 自分的に最近何となく物足りなかったのは、音楽から遠ざかった生活が続いたからかも...と、藤原さんのブログを読みふと気づいたような。これを機会に、夜静かにエンドルフィン放出を味わう一時をまた復活させたいなと思います。思い出させてくださりどうもです!

kindofblue @ 2006年 07月 11日 17:02:34

>kindofblueさん

初めまして。
コメントありがとうございます。
音楽がなくても別に生きていけますが、ある瞬間、無性に”コレッ!!”というものを聞きたくなる時がありますよね。
それで、そこからハマリだすとか(笑)
人生のスパイスですかね!
夜静かに違う世界にトリップしちゃいたいなら、『スタン・ゲッツ』がお薦めです!
都会的で、しかし、どこかもの悲しい彼のテナー・サックスの音色に、ビルの屋上からNYマンハッタンの夜景を見つめている自分を想像してしまいます(笑)
ちなみに、アメリカには一度もいったことはありませんが……(苦笑)
よかったら、また遊びに来てくださいね♪

藤原Hikki @ 2006年 07月 11日 20:51:48

「人間椅子」知ってるよ~~~!
コアに流行りましたよね(笑)
Nさんのイメージつかめましたっ☆

くぼ@赤ウサギ @ 2006年 07月 12日 09:08:19

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プロフィール
藤原ヒカル
藤原ヒカル
(女)
カンガルーの国、オーストラリアでジャーナリズムを学び、その後は現地で新聞記者に・・・・・・。業界へのデビューを果たすが、目指すところは”イラク”ではなく、”ミュージックシーン”だったりする。10歳の時にテレビで聖飢魔IIのライブを見て、デーモン閣下に一目惚れ。後にKISSなどの大御所を知って(普通は、逆!)、「話してみたい♪」とミーハー的な理由で英語を猛勉強。HR/HM歴20数年。現在は日本在住。企業や国家の政策などのコアな記事から外国人クリエーター、芸術家たちにインタビューして記事を書くのがお仕事。
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