山本理顕氏と加藤小田原市長の公開対話
昨日小田原市役所で「市長と山本理顕氏との公開対話」というのが開催されたので傍聴した。
多くの読者の方はこのブログで3年越しで取り上げている城下町ホール問題についてご存じだろう。この問題についてお蔵入りになった設計者の山本理顕氏から公開質問状が出され、諸々の経緯を経て今回の公開対話が開催された。
詳しくは議事録が発表されると思うので、ツイッターでもつぶやいた筆者の感想を記す。
1. 山本氏は「自分の設計思想が市民に十分伝わっていない。伝われば理解してくれるはずだ」と主張するが、それは間違っている。市民は山本氏の設計思想を理解したからこそそれを否定したのだ。主張に専門家の傲慢さが見て取れる。市民は山本案の本質をよく理解している。
2.山本氏は「多目的は無目的」という井上ひさし氏の言葉を取り上げ、「自分は小田原市では多目的の機能が必要だと思ったからこういう設計にした」と主張する。たしかに市民は多目的(音楽と演劇の両方ができる)を望んでいる。しかし市民の多目的の中に山本氏のいう「都市の広場」は入っていないのだ。市民の望む多目的にアリーナは入っていない。それが市民がこの案を否定した最大の理由だ。
3. 山本氏は市長が市民から付託されたことと、設計者(自分を含めコンペに参加した)と市役所との信頼関係は同じく重要だ、というがそれは違う。市民からの付託の方がはるかに重い。山本氏は民主主義下のガバナンスを理解していない。ハコモノ行政の時代はそれで済んでいたのだろう。
4.山本氏はコンペの審査員の一人だった伊東豊雄氏を連れてきて発言させろと要求し、市長は拒否した。建築家どうし仲間内でつるんでいる、ということを露呈してしまった。伊東氏は審査で通した案がなぜ市民に拒否されたかを反省すべきだ。
5.結局山本氏の主張は手続き論に終始した。山本案否定の民意を受けた市長が当選した後、なぜもっと早く詳しい説明をさせてくれなかったのか。説明すれば理解され、そのまま案が通っただろう、と考えているようだが、たとえ市長が説得されたとしても、市長がそんなことできるはずがないではないか。
6.山本氏は設計思想は提案だ。場所が代わっても思想は生きている。やらせろと言っているのではない、1億7千万もかけたのだから素材として活かすべきだ、と主張する。それに対して市長は思想を否定するものではない、と返事をしたが、筆者はここで市長は山本氏の思想を完全否定すべきだったと思う。
7.城下町ホールの問題は、これからの公共建築の在り方やそれが誕生するプロセスにとって示唆に富んだ教訓がたくさんある。ひとことで言えば、市民は成熟していて自ら判断する力を持っている、ということだ。
今回、山本氏が動員したと思われる建築ジャーナリズムの記者がたくさん来ていた。終了後山本氏と伊東氏にむらがって取材していた。恐らく小田原市はひどい、という記事がたくさんでるだろう。
しかしそれに惑わされることはない。小田原市のことは小田原市民が決める、という姿勢が大切だ。市の職員にそのように伝えて会場を後にした。
カテゴリー[ 文化ホールについて ], コメント[14], トラックバック[0]
登録日:2010年 02月 19日 01:05:02
コメント
こんにちは。
昨晩、(仮称)城下町ホールに関する公開対話を見聞した者です。
何年か前に「市民会館の建て替え設計コンペに世界的に著名な建築家が数多く参加している」「小田原に世界的建築家の建物ができる」と聞いて、完成するのを楽しみにしていたのですが、工事が始まる様子もなく、久しぶりにその話題を確認してみると雲行きが怪しいようだということを知り、昨晩参加しました。
どうしてこうなったのか?詳しくは分かりませんが、昨晩の「対話」を見聞した印象としては、「おいおい、こんなことになっていたの?なんでこんなことになったの?一人の頑固な建築家が血税を使って自己の設計思想を貫き通そうとしたから?いやいや、話を聞いていると、一番の原因は、行政の愚行のじゃない?だって、もし、基本計画や基本設計を提示された市民が、設計思想をしっかりと理解た上で建築家、もしくは、担当行政に対してしっかりと「NO」を示していれば、基本計画や基本設計が終わった段階で十分な協議がなされるはずだし、具現化されない実施設計に巨額の費用を払う必要はないのだから。いや、待てよ、行政=市民ってこと?(^^;。」
というもので、とても気持ちが悪かったです。
不具合の多い行政システムのせいで、一人の世界的に著名な建築家が悪者になって、公開処刑をされているようで、何かとてもフェアではないと感じました。
あと、市長が何度も口にした「戦略な」という言葉と「市民が望むオーソドクスな」いう言葉が私の頭の中では結びつきませんでした。
巨額の血税を使って市民が望まない箱物が完成してしまうという最悪の事態は新しいまともな市長によって阻止されたと思いますが、この問題は、昨晩の「公開対話」で終わりなのでしょうか?
だとすると、小田原市民、その施設を利用する人々は自分たちの欲しい箱物が手に入るかもしれませんが、対外的に大きな負の遺産を残すことになる気がします。
いち小田原市民 @ 2010年 02月 19日 13:53:59
いち小田原市民さん、コメントありがとうございます。問題は市が運営したコンペのありかただと思います。基本構想から逸脱した山本案は本来であれば選ばれなかったはずです。選ばれるはずのないものが選ばれてしまったことで山本氏の不幸が始っています。建築家は奇をてらい目立つために、あえて基本構想に挑戦する案を出してきます。山本案もそのひとつです。過去のコンペでも建築家が審査員の場合、おもしろがってそんな案を通すことが行われてきました。そうならないように市側がしっかりとコントロールする必要があったのです。また、建築家にも審査員にも無視された基本構想そのものもたいしたことがなかった、と言えるかもしれません。
himori @ 2010年 02月 22日 01:23:24
こんにちは。コメントに感謝いたします。
やはり、「問題は市が運営したコンペのありかた」がこの事件の大きな要因ですか...。(先日の「公開対話」を見聞しただけで容易に察し取れた事柄です。)
だとすると、桧森さんが先日おっしゃられたように「なぜそうなったのか関係者皆が考えるべきだ。その上に立って市民のための新たなホールの計画を進めよう。」というのが非常に大切だと思いまし、「なぜそうなったのか?」の検証は内部処理ではなく、公にすべきであると考えます。
何となくコンペを開催し、
著名な建築家をはじめ数百という設計者が参加し、
世界から注目され、
「基本構想から逸脱した提案」が選定されて進められ、
実際に建たない建物の実施設計が完了し、
1億7千万円(実際にはもっとですか?)が費やされ、
結果、
市民や建築家が困惑、憤慨したが、
まともな市長に変わり、もう一度ゼロからやり直す。
「税金を1億7千万円だけ使って公共建築物の建て方を勉強したよ。多方面にいろいろと迷惑をかけたけど、もう一度ちゃんとゼロから再出発したから、そういうことでよろしくね。」
というのでは、納得できない人がたくさんいると思いますし、21世紀の「市」の姿として、自慢できるものではありません。また、「いろいろ尽力しても、小田原は平気でドブに捨てるからなー、何とも思わないからなー。」と思われてしまう「前科一犯」のままでは、戦略的ではないと危惧します。
今後、この件に関して、小田原は多方面からたたかれることは必至でしょう。
将来的な小田原の戦略的施策という意味でも「(仮称)城下町ホール建設事業に際して、小田原市はここが間違っていた、これからはそういう間違いを絶対に犯さない」ということを市民に対して、設計者に対して、また、世界に対しても、しっかりと、表明しなければならないと考えますし、急務であり、礼儀であり、作法であると考えます。
いち小田原市民 @ 2010年 02月 22日 14:12:57
いち小田原市民さん 山本氏が「世界的に著名な建築家」であると評価されるとしても、公共建築のあり方についてのお考えはまったく間違っております。小田原市長は「設計思想を否定するものではない」と曖昧な「敬意」を示しましたが、このホール事業に対する山本氏の設計思想は完全に否定されるべきでであることが、多くの市民から発言が重ねられ、市民によって否定されたのです。対話を求めるならば、否定した市民に求めるべきでしょう。この「公開対話」は、「建築家」の未成熟な傲慢さをあからさまに示したものです。「審査員」伊東豊雄氏に発言させようとしたことは、許し難いことです。語りたいことがあれば、お二人で「設計思想」説明会でもなさるべきです。1億5750万円の設計料を「どぶに捨てるのか」とご当人に言われれば、小田原市政府の赤恥はいかんともし難いですね。「一番の原因は、行政の愚行」であることは、まさにその通りです。
ただ一つ、山本氏が話された「近江氏も一寸木部長、関野課長も一緒に長い時間仕事をしてきた。今もそのままではないか(おかしいではないか)」という指摘については、同意できます。小田原市政府の真剣で賢明な対応を望みたい。
松本茂 @ 2010年 02月 22日 20:58:53
松本さん、はじめまして。コメントに感謝いたします。
(桧森さんのブログのコメント欄を掲示板のように使ってよいものか?桧森さん、申し訳ありません。)
松本さんもこの事件に関しては、「一番の原因は行政の愚行」とお考えなんですか...。
松本さんはこの問題に関して長く携わっているご様子ですし、その方がそのように感じるようであるならなおさら、また、桧森さんも同様のお考えをお持ちのようですし、拙者が「公開対話」を見聞しただけで察した事柄であるならば、間違いないようですね...。
「小田原市長は『設計思想を否定するものではない』と『曖昧な敬意』を示しました」確かに(^^;。
桧森さんの「なぜ山本理顕案は否定されたのか」論は、「なるほど。」と拝読しました。
個人的に違和感を覚えるものの一つとして、「公開対話」においても加藤市長が繰り返し口にした、「加藤憲一は(仮称)城下町ホール建設見直しをうたって当選したのだから、それは民意だ」という事柄があります。
加藤市長の掲げるマニフェストを知らずに加藤市長に投票した人、
街頭演説で「(仮称)城下町ホール見直し」のくだりを聞き逃して加藤市長に投票した人、
「山本理顕案賛成」だが加藤市長に投票した人、
若くて、頭良さそうで、好みだから加藤市長に投票した人、
投票率:53.93%
等々、想像するときりがないのですが、
「オレに投票した人は(仮称)城下町ホール建設の見直しを望んでいる」というのは少し乱暴なのではないか?
市長選挙で選ばれた人の意向=山本理顕案に対する民意とするのは少し乱暴ではないか?
「民主党の八ッ場ダム」もそうですが、やり方によっては「ガバナンス」=「民意を笠に着たファシズム」ではないか?
と感じるからです。
新しい時代の市長に対しては、
1億7千万円をドブに捨てる前に、また、世界に小田原市の愚行を露呈する前に、
山本理顕案是非を問う市民投票(それも市民全てが必ず参加しなくはならないもの。投票していない人には督促状が届いたり、保険料を徴収に係員が訪問するなど(^^;)をしたらよかったのでは?と思います。
そうすれば、市民も、また、その市民を見ている世界の人も納得できるのではないか?
また、小田原市の愚行に対するせめてもの罪滅ぼしに成ったのではないか?
と思うからです。
まあ、そういうことも全てひっくるめても「これが民主主義下のガバナンスなのだ」となるのでしょうねぇ...。
いち小田原市民 @ 2010年 02月 24日 09:50:42
いち小田原市民さん、松本さん、コメントありがとうございます。ただ掲示板ではないのでこの辺にしておきたいと思います。
最後にひとつ申し上げますと、これは私が大学の「公共経営」という授業で教えていることなのですが、政治家にとっては「投票してくれた人の意思が民意」なのです。だから日本では若い人に不利な政策が次々と実行されるのです。だから私は学生に必ず投票に行け、と言っています。
政治家はマーケティングをやります。自分に投票してくれた人はどんな人か、その人たちは何を望んでいるのか。今回、市長の得票数は44,108票、城下町ホール反対の署名運動の署名は36,346人です。もちろん署名の全てが有権者ではありません。しかし市長にとっては無視できない数字です。
ついでに言うと、それでは弱者はどうなるのか?弱者に共感する人が多く、それが運動になり、さらに有権者の支持を集めれば当然政治家は無視できません。肝炎薬害問題も派遣切り問題もそうして政治的なアジェンダになりました。
それでは、投票しない人はどうなるか。それは無視されます。投票できない未成年者の代弁は大人がしなければなりません。しかし有権者なのに投票に行かない、誰も代弁してくれない、共感を得るために声を上げない、ただ黙っている、そういう人は無視されます。それが民主主義です。
だから世界一民主的な憲法を持っていたドイツのワイマール体制下で、ドイツ国家社会主義党(ナチス)は投票で合法的に政権の座につきました。声を上げ、共感者を集め、投票しなければファシズムは防げません。それも民主主義です。
himori @ 2010年 02月 24日 11:08:33
パリに、ポンピドゥーセンターという美術館があります。設計コンペで選ばれ、完成した建物です。完成した当時、一般市民からは酷評を受けていたようですが、建築界には衝撃がはしり、その後、「ハイテクデザイン」という一大ブームの礎となりました。
エッフェル塔は、完成する前からパリっ子の非難が殺到したそうですが、皮肉にも現在では観光名所になっています。
シドニーのオペラハウスは、最初は落選案でした。審査の席に遅れてやってきた「エーロ=サーリネン」という建築家が、床に落ちていたウツソンのスケッチを、「これなんかいいじゃないか」といって、あの世界遺産は決まったそうです。
金沢に21世紀美術館という建物があります。敷地の四方八方から市民が出入り出来るのが特徴で、普通なら必ず設けるエントランスホールとか搬入口(裏口)のない、とてもオーソドックスとは呼べない美術館です。
コンペで選ばれる案は、自然界のタコとかイカの卵が成長できる確率と同様、たくましくて将来性のあるものが、眼力のある審査員によって、ひとつしか選ばれません。
1/238の貴重な財産を、理解できないからといって、捨ててしまうとは‥‥。
もったいない @ 2010年 03月 08日 14:59:47
もったいないさん、コメントありがとうございます。ご承知かと思いますが、アメリカの建築家ルイス・サリヴァンは「形態は機能に従う」という有名な言葉を残しました。今度の場合、機能が形態に従ってしまっているわけですが、その機能が目的に対して十分ではない。パトロンが芸術家に好きに作品を作らせているわけではないので、目的を果たさなければ困るのです。つまり失敗作です。
himori @ 2010年 03月 09日 23:38:24
私も、建築を学び始めて1年目ぐらいの頃、
デザインの先生から、「面白くないね」という一笑で、「可」をもらい、
「機能が全て満足しているのだから正解ではないか、どうして「優」じゃないのか」
と、(理科系的な?ルイス・サリヴァン的な?発想で)、
先生に食ってかかったことがありました。
先生からは、「まあ、旅でもして、いろいろな建築を見ておいで」と、
やんわりと諭された、苦い思い出があります。
建築は、その良し悪しを味わえるようになるまで、なかなか時間がかかる分野です。
今回は、建築の目利きみたいな藤森さんも審査員だったわけですし、
やはり、何か「光るもの」が、提案の中にあったと思いますよ。
もったいない @ 2010年 03月 10日 10:19:04
もったいないさん、おもしろい論点なのでレスします。邑楽町庁舎は山本案と比べて実際に建ったものはお話にならないくらいつまらない建築です。それは10億円安くなる方を選んだ町民の選択でしょう。小田原市民の場合は建築的にもおもしろいものを望んでいると思いますよ。問題はそこではなく、山本氏や審査員が市民のニーズやホールの本質について驚くほど無知なことです。
市民のニーズについては既に書いています。
これは私も磯崎氏をはじめ多くの建築家で経験しているのですが、ホールというものの本質をわかっていません。そのために、実演芸術には「不向き」なホールが建ってしまっているのです。ホールの本質は(少なくともその一つは)内部空間デザインが主張して実演の邪魔をしてはならない、ということです。山本案の湾曲した壁と色は邪魔です。
井上ひさし氏は山本案について「へんてこりんでいいのは演目だけです」と言っています。基本的にはそうなのですが、私は建築デザインにも役割はあると思います。それは来場者を演目への期待感でわくわくさせる雰囲気をつくること。浜松町の劇団四季の劇場はとてつもない安普請ですが、夜、明かりがともると、劇場へ入っていく道のところからわくわくします。デザインが雰囲気を盛り上げています。
次回の設計では、ホールの本質を踏まえながら、わくわくする雰囲気を盛り上げるデザインのホールを期待します。
himori @ 2010年 03月 10日 10:49:32
師匠筋にあたる原さんの建物、例えば「札幌ドーム」や「京都駅」には、
野球観戦や電車利用といった目的のない人であっても、
楽しめるような工夫がされています。
金沢の21世紀美術館や、山本さんの横須賀美術館では、
お金を払わなくても、通り抜けのように、館内に入れて、
一般市民が美術を身近に感じられるようにしています。
東京都庁は、人々に威圧感を与えないようにと、上層部を二つに割り、
有楽町の国際フォーラムには、街の人々が自由に通り抜けられる中庭があります。
横浜の国際客船ターミナルなどは、屋根が芝生で公園になってしまいました。
テロなどを敷地境界で警戒する必要のない、安全な国だからできることかもしれません。 また、世の中も昔より平たく開放的になってきたせいか、建物も閉鎖的な形は良くないようで、さらに、利用する人々が職業や年代や目的などで限定されないほど、不特定で多目的であればあるほど、「箱物!」という批判も受けずに済みそうです。
山本さんは、共同住宅でも、「集まって住むことのメリットや楽しさ」を、常に工夫する方ですし、今回もおそらく、不特定多数の利用する、城下中心部の公共ホールには、街ゆく市民目線で都市的に取り組んだのかも知れませんね。
劇団四季のように演劇専門の建物であれば、演劇関係の方はうれしいでしょうし、
音楽専門ホールであれば、クラシック愛好家が喜ぶでしょう。
また、ワクワクするようなアプローチも、その目的を持った人には役立つけれども、
用のない通行人には、施設への親密度が遠のく結果を招きそうです。
遠隔地で私的なプロジェクトだったら問題ないのですが、立地条件や公共性という広い範囲で考えた場合、「特定」とか「専門性」をどこまで絞りきれるか‥、もめそうですね。
私も以前は、「らしくない」建物に違和感や憤りを感じましたが、
よく考えたら、その判断基準は自分の経験という、ちっぽけなもの。
最近は、技術の進歩や社会が変わると建物も変わるもんだな~、
と、素直に感心してしまうことが増えてきました。
都市空間の一部のようなホール。
もともとローマ時代などは、都市に溶け込んでいたのかも知れませんね。
昆虫の「擬態」のように‥‥。
もしかしたら、それが「本物の市民ホール」の姿だったかも。
‥
もったいない @ 2010年 03月 11日 12:14:40
可児市文化センターの場合、年間来場者26万8千人。うち21万人が利用者(出演者、観客)で残りは芝生広場で遊んだり、ロビーでくつろいだり、誰でも利用できる図書コーナーで本を読む人です。ロビーには市民の人たちが自由に利用できる椅子やテーブルがあり、市民活動の打ち合わせなどに使われています。ホール側もここは「社会機関である」というコンセプトのもとに、このような使われ方をとても大事にしています。
ただし、建物の中の劇場部分は解放していません。仕込みが行われていたり、機器の調整やメインテナンスが行われていたりするからですが、それだけでなく、「危険がいっぱい」だからです。
山本氏の設計案でも結局アリーナ部分は広場として開放することはできません。建築家はモノづくりの人の割にはロマンチストだということはよくわかりますが、実際の使われ方を考えた設計が必要だと思います。
とはいえ、建築家が施主や利用者よりも空間的時間的視野を持っている、ということはよくわかりました。利用者には、利用しない市民にここがどう見えるか、後世にどのように評価されるかという視点はありません。その点、建築家から学ぶべきことも多いようです。もったいないさん、ありがとうございました。今、ある建築誌に執筆しているので参考にさせていただきます。
himori @ 2010年 03月 14日 02:38:13
確かにローマ時代のホールは屋根があって壁のない回廊のようなもので、市民が自由に出入りし、商取引も政治集会も行われていました。可児市のロビーもそれに近い考え方だと思います。ただし、18世紀古典派の時代を経て閉ざされた空間でうっとりさせる芸術が進化したので、現代ではそのための場所が必要なのです。
himori @ 2010年 03月 14日 02:49:38
昔購入した美術館建築の写真集に、磯崎さんがロスに設計した美術館が出ていました。展示室の天井にピラミッド型のトップライトがあって、そこから入る光の具合で彫像などがゆがんで見えてしまう、(自分には、上に凸にみえました。)というクレームが載っていました。少し似ているかも知れない例ですね。
今回のように、室内にはらんだ壁は、演劇には不向きでしょうね。私も同感です。音響的にはどうなのだろう?拡散が過ぎてエコー不足になるのかしら?でも、そのあたりはコンペの応募時に専門家に相談しているでしょうし、審査員にもホールの専門家がいたわけだし‥。致命的な欠陥だったら、当然一次審査の時点で落ちますが、それでも何か光るものがあって、勝ち残っていったのかも知れません。
特に専門性の高い、高機能の特殊な建物については、建築家は総じて慎重です。機能不全で訴えられたら、廃業に追い込まれますし‥。今回はコンペだったわけですから、応募された方は共通して、「こんな初歩的なことも知らないのか!」とホール専門の審査員に不勉強な部分を露呈されるのだけは避けたいので、皆さん、基本的なところは抑えた上で応募したと思います。
普通なら「くつ箱」ですよね。そこをあえて花びらのように並べた「内に凸」。何かしらの「裏づけ(一種の企業秘密)」に基づいて提案して、それがあの審査員(議論になったら絶対に勝てそうにない恐ろしい方々(笑))を説得してしまった。としか、私には思えないのです。
これから、どうなっていくのでしょうね?
当選された市長の票には、ホールの建設そのものに反対というのも混じっているのではないでしょうか?もし選挙時に、「見直し」という言葉を使っていたら、それは強力な武器ですね。凍結派も修正派もまとめて票にしてしまう点で、一石二鳥のような便利さも感じられます。
小田原市民が himoriさんのように、「周辺の喧騒から隔離されたニュートラルなくつ箱」を求め、それを欧米の小都市のように、演劇や音楽で中心に見事に使い切ったら、私はすごいことだと思います。
誰も「箱物!」などと批判しないでしょうし、小田原の文化レベルの高さが証明されたことにもつながります。
‥
もったいない @ 2010年 03月 14日 14:57:30
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- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事、(社)指定管理者協会理事長などいろいろ。公共経営・行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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