飲み屋の社会調査

画像

さて、調査なくして発言権なし、である。
では筆者はどこで、どのような調査をしているのか。

写真は筆者の調査拠点、弟がやっているイタリア風立ち飲み屋BRADIPOである。
場所は東京は京浜東北線大井町駅近くの東小路、戦後の闇市の雰囲気が色濃く残る一角だ。
筆者はマスターの兄として、店の奥に座ってホスト役に徹し、入れ替わり立ち代り現れる客の話を聞くのだ。

客は様々だ。若いサラリーマン、サラリーウーマンの話からは、正社員ながら時間にゆとりのない、厳しい仕事環境が浮かび上がる。
一見同じように見える彼らだが、自社の経営に関する質問をすると、その答えから、会社を俯瞰して見ているエリート候補か、目の前のノルマに追われるだけの兵隊か、人材が判別できる。

都庁や近くの区役所の職員も来る。私の所属する行政経営フォーラムや代表の上山信一氏の名前はまったく知らないか、かすかに聞いたことがある程度。NPM(ニューパブリックマネージメント)など遠い世界の出来事のようだ。

新宿で酔っ払いのおじさん相手の開業を夢見るおもしろい女医さんや、デザイナー、いろいろな店のオーナーや経営者など自由業、自営業の客も多い。
いま、どんな商売が成り立っているのかがわかって興味深い。

ギターを抱えて現れるサブちゃんは、本人によれば、東京に8人しか生き残っていない、そしてそのうち3人が大井町にいる「流し」の一人だ。客のリクエストに応じて1曲500円300円で歌い、伴奏する。お世辞にも上手とはいえないが、毎日誇りを持って路地を徘徊し、求めに応じて店の中や路上でライブを行い、絡んでくる酔っ払いには毅然として対応する。

つかまれば3時間は相手をしなければならない客のクリちゃんは、究極のニートだ。40歳だが無職。学歴もない。パニック障害を持ち、働くことができないのだ。生活保護を受けている。つっぱった物言いの裏に、自分の現状への苛立ちと哀しみが透けて見える。クリちゃんにとっては、自分自身のかすかなプライドが生きる縁だ。でもそれが時として自分を傷つける。
一人のニートには一人の事情と生き方があるのだ。

この社会調査から、これからどんな仮説が生まれ、それを裏付けるどんなデータが収集できるだろうか。楽しみである。

なにしろ、調査なくして発言権なしである。

カテゴリー[ 自分の勉強 ], コメント[6], トラックバック[0]
登録日:2006年 09月 07日 20:03:02

コメント

なんかむずかしゅうてようわからん感じでしたが、今回のはちょっとわかりましたよ!
ってなんか、自分に近いのは、ニートくんかなー 人と会う機会が全くないから、
そうやって飲み屋にいって、人を捕まえたら3時間しゃべっちゃうんでしょうね。
うーん、他山の石。気をつけます。ニートっていうか、単に今仕事がこないんです
・・・。フリーランスは悲しい。

ねい @ 2006年 09月 08日 01:30:57

究極のニート、クリちゃん。
パニック障害で働けないけど、プライドと苛立ちがせめぎあう毎日。
わたしのとっても身近な人にダブります。
話し始めたら、とまらないところも・・・

そういう人には、変に意見を言って諭したり、アドバイスしたりしても
相手も自分も傷つくだけなのかもしれませんね。

立ち飲みバーでの、その場限りの知らぬもの同士のコミュニケーション。
ハンドルネームで語り合う、ネットコミュの世界に通じる何かが!?

みどり丸 @ 2006年 09月 08日 11:43:12

ねいさん、ニートは not in education ですから、学位のあるねいさんとは違いますよ。でも、安定した仕事くるといいですね。今度お店にもぜひいらしてください。

himori @ 2006年 09月 09日 01:23:47

みどり丸さん、コメントありがとうございます。そう、クリちゃんにも、ただ話を聞いてあげるだけです。ネットコミュに似てますが、面と向かって話していて、相手の表情やニュアンスがわかるだけに、炎上したりネットイナゴやアラシが来たりということはありません。それだけに、すぐ隣の人と仲良くなれるのがいいところです。

himori @ 2006年 09月 09日 01:29:11

さぶちゃんは一曲¥300だよ。それから彼は只今入院中です。

BDPマスター @ 2006年 09月 11日 10:38:11

そうか一曲300円だったか。そう、入院のことはあえて書かなかったけど、早く良くなって元気な姿で復活するといいですね。

himori @ 2006年 09月 11日 10:59:42

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Ryuichi Himori
(男)
ryuichi.himori@gmail.com
団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
(なお、mixiもやってます。)
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