指定管理者ってどうよ!?その1

昨日は日本クラシック音楽事業協会主催の「指定管理者制度の現状と今後の動向について」と題するセミナーにパネラーとして出席した。

そこで生じた疑問が2点。

1.民間企業が指定管理者になると、民間企業の事業(公演など)に税金が投入されることになるのか?

以前CP-NETで埼玉大学の後藤和子先生とも議論になったが、民間企業が文化施設の指定管理者になると、民家企業の事業(公演など)に税金が投入され、利益をあげることになる。これはいかがなものか、という議論が私にはどうもわからない。
ゼネコンは公共建築を請け負って税金から利益を得る。清掃業者は公共の建物の清掃を受注して利益を得る。指定管理者は公の施設の管理運営を委託されて利益を得る。どこがちがうのか。

恐らく、指定管理者の権限が大きいために出た発想だろう。つまり、文化財団が管理していた時は、財団が自治体の文化政策の一翼を担っていたために、財団は自主的・自律的に事業を決定し、実施していたが、民間企業が指定管理者となって自主的・自律的に事業を決め、実施したらそれは民間企業の利益のためにやることにならないのか?ということだ。

しかし、それはちがうのではないだろうか。指定管理者制度は基本的にはエージェンシー理論にもとづいていると思われる。つまり政策の立案と執行は分離され,契約とモニタリングで執行を担保しているのだ。指定管理者は文化施設で行う事業の目的、内容・枠組み、回数などを決められ、忠実にそれを実現することが求められる。自主的・自律的に決めることはできないのだ。指定管理者は自治体の文化政策の忠実な実行者であることが求められる。自主事業は指定管理者の自主事業ではない。行政が公立文化施設に託して政策目的を実現するための事業なのだ。そこに民間企業の利益目的が入り込む余地は無い。もちろん、実施にあたっての委託料は指定管理者としてもらうが、それだけである。

いままでは、文化政策の大部分が文化施設の建設と管理運営のことだった。だからこのような議論が出てくるのだろう。しかし指定管理者制度で施設の管理運営が切り離されると、いよいよ本当の文化政策は何か、ということが問われる。政策をきちんと決めて、その実現手段のひとつとして文化施設があり、指定管理者に指示する。
このことは文化財団が指定管理者になっても同じだ。いままでは一体だった行政当局と財団は「水くさい」関係になる。ただでさえ、出向者が行政本体へ戻っていくのだから、ますますその傾向は強まる。
これが指定管理者制度の本質ではないだろうか。

疑問はあとひとつ、2.民間企業が指定管理者になると、芸術性の高い公演ができなくなる?というものだが、長いので次回に回すことにする。

カテゴリー[ 指定管理者制度 ], コメント[6], トラックバック[1]
登録日:2006年 09月 12日 18:17:50

コメント

「自主的・自律的に決めることはできないのだ。指定管理者は自治体の文化政策の忠実な実行者であることが求められる。自主事業は指定管理者の自主事業ではない。行政が公立文化施設に託して政策目的を実現するための事業なのだ。」

私は、これは違うな~と思います。自主事業は指定管理者が内容を決める自主事業だと思います。クラシックをやるのかポピュラーなのか、果ては漫才なのか落語なのかは指定管理者が自分達の運営のために決めるもので、自治体は無関係だと思うのですが。

今までの市民会館のやってきたことと同じような気がしますけど。

無名学生 @ 2007年 02月 03日 23:03:59

無名学生さん、コメントありがとうございます。
会館自主事業は公共施設の目的達成のために行なう事業で、協定書で実施が求められています。内容についても、大まかな場合でもジャンルごとの実施本数くらいは決められています。
ホールの出し物は必ず赤字が発生します。有名な人はギャラが高い。無名の人はチケットが売れない。いま、公立文化施設の事業収支比率(直接的な事業費を何%収入でまかなえたか)の平均は50%強くらいです。だから取り決めておかないと指定管理者は事業をやりません。そして赤字を補填する程度の事業費を管理費の中に含めるのが一般的です。

おっしゃるように今までの市民会館のやってきたことと同じといえば同じです。管理者の顔が代わっただけですから。
違いがあるとすれば、より専門性が発揮されて内容が充実する可能性がある、ということですが、事業の構造自体は変わりません。

himori @ 2007年 02月 05日 16:35:59

はじめまして、ミクシィの「指定管理者制度」コミュからここにたどりつきました。
私は大阪市監理団体の職員です。市職員のカラ残業、職員厚遇問題・・・・。の大阪市です。ここのブログに書かれていたコメントについて感想・意見をのべさせてもらいたいと思います。

『いままでは一体だった行政当局と財団は「水くさい」関係になる。ただでさえ、出向者が行政本体へ戻っていくのだから、ますますその傾向は強まる。
これが指定管理者制度の本質ではないだろうか。』

このコメントに当局と財団は「水くさい」関係になる。とありますが、出向者は確かに行政本体へ引き上げをすすめられています。しかし、その引き上げた後は本市OBのノウハウを活用するためという大義名分で退職者の再雇用で穴埋めされていくのが実態ではないでしょうか?年金需給までのくいぶちとして何ら危機感のない市の退職者が管理職ポストや係長級ポストにあぐらをかきにやってきます。財団の主要ポストは出向者がいすわっている為、行政との蜜月は今も平然とおこなわれています。現在、管理代行としてある施設を請け負っていますが、指定期間を満了していないのに管理代行料の契約変更なんてことをはずかしげもなく言ってくる始末です。また、とある研修で利用料金制をとるのが指定管理者制度の正しい手法だという話がありました。この利用料金制のスタンスをとっている自治体はかなり少ないと聞いています。何か事例とかご存知でしたらお教え下さい。
長々と書かせていただきましたがお許し下さい。

BAHO @ 2007年 02月 16日 07:02:36

BAHOさん、コメントありがとうございます。
上山信一さんの友人である私としては、大阪市がまだまだこんな状態というのは困ってしまいますね。指定管理者制度は外郭団体の改革とガバナンスの強化についても有効な手段なのでぜひ活用してもらいたいと思います。

ご質問の件ですが、まず利用料金が見込めるところでは、たとえそれで管理費用の全額をまかなえないとしても、ほとんどが利用料金制度を導入しています。
これは平成15年の自治行政局長通知にわざわざ「利用料金を指定管理者の収入として収受させることができる」と書いてあることにもよります。

外郭団体では三重県文化振興財団が、自ら指定管理者の早期導入を県に申し入れ、民間企業と競争の上指定管理者に選ばれた、という事例があります。財団が指定管理者導入を望んだ理由は、利用料金制を導入して経営の自由度を確保し、自らの改革と業容の拡大を目指すためです。もちろん財団の理事には県職OBもいますが、北川前知事の教えのせいか、改革には積極的です。

なお、財団は出向者は県に帰し、館長クラスは全員民間企業からスカウトされた人材で固めています。文化会館の館長は実はわたしの会社の元役員で上司だった人です。もう5年くらいになりますが、民間の感覚で辣腕を振るっています。

himori @ 2007年 02月 16日 23:23:07

さっそくの返答、ありがとうございました。
私が受けた研修は三重県文化振興財団のプロパー職員の方が講演したものです。
すごく刺激を受けた反面、大阪で同じことが可能だろうか?という疑問が生じました。

また、いろいろ勉強させて下さい。よろしくお願いいたします。

BAHO @ 2007年 02月 17日 05:19:00

BAHOさん、ここでたびたび予告している指定管理者の本にはその三重県文化振興財団のプロパーの方も執筆しています。3月に刊行予定なのでぜひお読みください。

himori @ 2007年 02月 17日 22:13:22

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プロフィール
Ryuichi Himori
(男)
ryuichi.himori@gmail.com
団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
(なお、mixiもやってます。)
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