指定管理者ってどうよ!?その2
指定管理者の問題は、このブログの読者のほんの一部の方しか興味が無いかもしれないが、しばしお付き合いを。
2.民間企業が指定管理者になると、芸術性の高い公演ができなくなる?
クラシック協会会員から、「民間企業が指定管理者になったら、芸術性は高いけれども集客が見込めない弦楽四重奏などはやらなくなって、ポップスや演歌ばかりやるようになるのではないか」という質問が出た。前のエントリーで書いたように、そうなるかどうかは行政側が指定管理者に対してどのような方針を示すかで決まる。行政側は基本的には芸術・文化を目的とする施設と考えているところが多いので、ポップスや演歌ばかり、ということにはならないだろう。
しかし、問題は、行政側の示す地方の文化施設の目的・役割りはほとんどが、地域の文化振興、地域の活性化、地元のアマチュアや地元在住実演家の活動支援、文化創造活動への市民の参加などであって、芸術の振興とは書かれていないところにある。
この目的を受けた指定管理者は、その実現のために、市民・アマチュア参加型企画や、地元演奏家活用企画を考える。プロを呼んでも、市民との共演やアウトリーチ活動が主眼になる。そうなると、芸術性の高い海外の弦楽四重奏などは出番がなくなる。
もとより、芸術は新たな美の概念を創造する活動であるから、若いアーティストにもチャンスはある。しかし、実演の芸術性という観点から見ると、世界の至宝といわれる演奏家と、地元のセミプロの間には、歴然とした、隔絶した力量の差があるのも事実だ。
今までは、そこをわかっている文化財団が、芸術性の高い公演を「恣意的」に自主事業で取り上げてきた。しかし、もし指定管理者に与えられたミッションに、市民への芸術の提供や芸術そのものの振興が入っていないとしたら、地方の公立文化施設からはそのような公演はなくなってしまう可能性が高い。もはや、公立文化施設の自主事業のお金はあてにできないと思うべきだろう。
指定管理者制度のもとでは、行政側、プレゼンター(クラシック音楽事業者)、演奏家側が、芸術性の高い公演を実施するための新たなスキームを考え出さねばならないのではないだろうか。文化政策として、市民・納税者も納得する形で、それができるだろうか?
カテゴリー[ 指定管理者制度 ], コメント[2], トラックバック[0]
登録日:2006年 09月 12日 23:04:17
コメント
先日、WGBH(ボストンのFM局)を聞いていましたら、面白い話を耳にしました。世界一オーケストラによる教育が普及しているのはベネゼラだというのです。280のユースオーケストラと80のチルドレンオーケストラがあるというのです。クラシック音楽、特にベートーヴェンの演奏をしているようですが、「麻薬から路上にいる子供たちを守る」というコンセプトで展開されており、大きな効果を上げているとの事だったと思います。(聞き流していたのでちょっと正確じゃないかもしれません。)
たしかに、ベートーヴェンの音楽を演奏してみると、言葉を介さない形での啓示のような説得力を感じることが出来ます。それは麻薬は犯罪ですなど説得するよりもよほど効果が高いかもしれません。
日本ではもはや成り立たない単純明快さですが、とにかくわかりやすい施策だと思いました。
カモ六 @ 2006年 11月 05日 23:45:17
>カモ六さん
なるほど、すばらしい試みですね。確かにベートーベンの音楽、そして仲間たちとのアンサンブルの体験は子供たちを麻薬から遠ざける効果があるでしょう。これと類似した試みは先進国のスラムでも行われています。絵画、演劇、合唱など様々な芸術が子供たちを救う試みである程度成果をあげているようです。芸術文化に税金を投入する賛否は様々ありますが、このような「効用」に着目して税金を投入することはありだと思います。
himori @ 2006年 11月 08日 19:56:57
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- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事、(社)指定管理者協会理事長などいろいろ。公共経営・行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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