迫り来る、変化の足音   企業の変化その4

銀行等保有株式取得機構にある弊社の株の売出しが決まった。売り出し価格は2,347円。およそ時価60億円分が市場に放出されることになる。
日本企業はつい最近まで株式を持ち合って安定していた。特に、メインバンクは安定株主だった。それがいますっかり様変わりしたことはご存知の通りだ。そしてついに最後に残った機構の株も市場に出る。
いま、金融機関は弊社の49.7%の株主だ。しかし、多くは機関投資家であり、株主としてのスタンスはかつてのメインバンクとは異なる。株主価値を毀損すれば、いつ売られてもおかしくはないのだ。
ましてや、弊社の株主の34.5%は既に外国人だ。

今年の株主総会では、弊社の買収防止策の提案にかつてない反対票が投じられた。通過することはしたが、会社提案にこれだけの反対票がでるのは、かつてなかったことだ。これには、策を立案した証券会社もあわてた。

今回の売り出し価格で計算すると、弊社の時価総額は5,000億円だ。
利回りは低いかもしれないが、弊社のブランド価値や、弊社が22.59%保有する関連会社(オートバイメーカー)の価値を考えると、割安と思う投資家がいるかもしれない。

芋づる買収を恐れ、数年前に弊社はオートバイメーカーの株10%相当を、日本最大の自動車メーカーに売却した。背後で睨みをきかせてもらおう、というわけだ。
しかし、TOB除けとしては、日本企業には有効かもしれないが、数兆円を動かす海外の投資家には、睨みなどという情緒的抑止力は効きそうもない。

もし、海外の投資家、あるいはプライベート・エクイティー・ファームが、これは割安だ、今の経営者は経営資源を充分に活かしていない、と判断したら、TOBをかけ、あるいはかけなくても外国人株主や機関投資家から株を買い、支配権を握り、プロの経営陣を送り込んで経営を刷新し、企業価値を高めて売り抜けるだろう。

数兆円単位の金を動かす投資家にとっては、5,000億はそれほど大きな額ではない。利回りが見込めれば、すぐにも手を出すだろう。
そうならないために、今の経営陣も株主価値を高める経営をせざるを得ない。そうなると、経営のスタイルが変わってくる。
当たり前だが、市場や競争のグローバル化だけでなく、所有のグローバル化も企業経営に大きな影響を及ぼすのだ。

・・・・

本田由紀先生のブログが閉鎖される前に、私の発言を引用したエントリーに対するコメントに、たしか弊社の人事方針を云々するものがあったように記憶している。
だが、はっきりいって人事方針などは経営の末端のことであって、経営スタイルの変化があれば、あっという間に変わってしまうものだ。
例えば、新たな経営スタイルになったとき、今の日本企業横並びの新卒採用は、はたして合理性を説明できるだろうか。今でさえ、たかが80人の新卒採用に対して20人も中途採用し、その中にはあきらかに外国人狙いの募集もあるというのに。

企業は非連続的にな変化を迎えていて、過去の分析は役に立たない。大変な時代になったものだ。

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登録日:2006年 09月 13日 23:46:25

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Ryuichi Himori
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ryuichi.himori@gmail.com
団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
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